見出し画像

米国市場:8/28週の振返りと9/4週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4515.77と前週比+2.5%で終了しました。NASDAQは14031.82と前週比+3.25%で終了しました。
 S&P500とNASDAQは8月月初とほぼ同一の水準で終了し、6月、7月の上昇分をほぼ取り戻しました形となりましたが、Russell2000に目を向けると小型株は大きく下落しています。9月1日時点では、S&P500指数はピーク時より1.8%下落、ナスダック総合株価指数は2.2%下落していますが、Russell2000は5.2%下落した状況となっています。
 先週の注目は、米国経済指標で注目すべき内容は、PCEと雇用統計でした。
 米商務省が8月31日に発表した7月の個人消費支出(PCE)は前月比0.8%増と好調でした。1月以来の大きな伸びとなり、上方修正された6月の0.6%増を上回っています。食料雑貨やレクリエーション用品、自動車といったモノに加え、住宅、外食、保険などのサービスに対する支出が増えていました。インフレ調整後の7月のPCEは0.6%増でした。FRBがインフレ指標として重視するPCE価格指数は7月に前月比で0.2%上昇し、6月と同じ伸びでした。5~7月のインフレ率は年率2.1%で、FRBが目標とする2%に近く、同じ期間のコアインフレ率は年率2.9%で、2021年1月以来の低水準となりました。消費に力強さが見られたことを受け、エコノミストらは7-9月期の米国内総生産(GDP)見通しを引き上げています。31日に発表されたアトランタ連銀の予測では、7-9月期のGDP成長率は年率5.6%となっています。経済がしっかりしていることが再認識され、金利はしばらく高水準で維持するものと考えられます。
 9月1日金曜日に雇用統計が発表されました。一番注目された、平均時給は+8¢とこれまで続いてきた二桁の伸びが抑えられました。これにより、賃金プレッシャーによるインフレ圧力は緩和されるものとして、この結果は市場に好感されたものと考えています。この結果、9月の利上げの可能性はほぼないとの見方が強まり、1日時点で現状維持が93%となっています。また、年内の利上げを実施する確立も前週までは50%を上回っていましたが、33%程度まで低下しています。失業率は3.8%となり、7月の3.5%から上昇しました。これは、雇用の減少によるものではなく、生産年齢人口に締める就業者または、求職者の割合が高まったことを反映しています。就業者数は前月比+18.7万人と予想17万人を上回りました。驚くべきは6月、7月の雇用者数が合計11万人下方修正されており、雇用の強さに若干の陰りが見えてきているのではないかと伺えます。
 米国の経済がしっかりしていることが再認識される中、中国経済成長についての懸念が再燃しています。8月に入ってから段階的な景気刺激策を打たれていますが、小出し感が否めません。。中国国家統計局が31日に発表した指標によると、8月の製造業活動は49.7と先月の49.3を上回りましたが5カ月連続の縮小となり、サービス部門は50.5と3月依頼減速が続いています。消費者が引き続き支出を控えていることが響きました。新たなデータによると、不動産開発大手各社の売上高は前年比34%減の471億ドル(約6兆8500億円)となっています。この結果、31日夜には、中国人民銀行(中央銀行)が住宅購入資金を借り入れる人の一部を対象に、住宅購入を促進する狙いから頭金の最低比率を引き下げています。中銀は金融機関が既存の住宅ローンの金利を引き下げることも容認しました。
 しかし21.2%という極めて高い若者の失業率や輸出の急減、不動産セクターの悪化に中国経済が悩まされているため、市場は、家計や企業の経済への信頼感を回復させるには不十分だとの見方を強めているようです。今後も指標を注意深く観察する必要はありますが、今の中国は高齢化が進み、米国との対立が深まっており、国内のセーフティネットワークの不足などから今までのような経済成長は期待できず、むしろデフレプレッシャーが強まっているように思えます。不動産市場への刺激策が出てきていますが、すでに飽和状態にある不動産市場への需要がすぐに復活するとはなかなか考えられず、しばらくは低迷が続くものと見ています。
 ただ、中国のデフレは、米国、欧州などインフレに苦しむ国に取っては朗報で輸入品のインフレプレッシャーが和らぐことにもなるため、今後も中国の動向には注目していきたいです。
 9月1日にFactSetが8月4日以来久しぶりに、S&P500の業績予想を更新しています。それによると、23年のEPS予想コンセンサスは、5.9%上昇することが示されており、$220.17から$222.45に引き上げられています。24年の前年比成長率も2ケタ台を維持していますが、11.9%から11.7%に若干引き下げられています。9月4日のレイバーデイ明けからの企業から出されるコメントによってこの数字も動くものと想定されてます。もう一つ興味深い数字として、企業のカンファレンスコールにおいて、リセッションという言葉が減少していることも示されております。22年Q2の238をピークに23年Q2には62回と3分の1以下に減っています。経営者からみた市況が変わりつつあるかもしれません。

株式

 9月1日時点では、S&P500構成企業のうち99%以上が2023年第2四半期の決算を発表しています。このうち79%の企業が予想EPSを上回り、5年平均の77%、10年平均の73%を上回っています。企業が発表したEPSは、予想EPSを7.5%上回っており、これは5年平均の8.4% を下回るが、10年平均の6.4%を上回っています。
 この結果、第2四半期のブレンド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定を合算)前年同期比減益率は、第2四半期末(6月30日)時点の-7.0%に対し、本日は-4.1%となっており、改善しています。同指数が前年同期比で減益となるのは、第2四半期で3四半期連続となります。
 11セクター中8セクターが前年同期比増益を報告(または報告済み)しており、その筆頭は消費者セクターと通信サービスセクターでした。。一方、前年同期比で減益となったセクターは3つありエネルギー、素材、ヘルスケアでした。
 売上高に関しては、S&P500構成企業の64%が予想売上高を上回り、5年平均の69%を下回ったものの、10年平均の63%を上回っています。また、売上高の結果はアナリスト予想の1.6%を上回っており、これは5年平均の2.0%を下回るものの、10年平均の1.3%を上回っている状況です。
 S&P500種構成企業(ヘルスケア、金融、消費者セクターが牽引)が報告したプラスの売上高サプライズは、エネルギーセクターの企業の売上高の下方修正によって一部相殺されたものの、当四半期末(6月30日)以降のS&P500種構成企業の売上高増加の要因となっています。
 その結果、第2四半期の混合(前年同期比)増収率は、第2四半期末(6月30日)の-0.4%減収に対し、本日は0.9%増収となりました。第2四半期は、2020年第3四半期(-1.1%)以来の低い前年同期比増収率となります。
 8セクターが前年同期比増収を報告(または報告済み)しており、金融セクターと消費者裁量セクターが牽引しています。一方、前年同期比で減収となったのは3セクターで、エネルギーと素材セクターでした。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年下半期も収益の伸びを予想しています。2023年第3四半期は0.5%、第4四半期は8.2%の増益を予想しています。2023全体では、アナリストは1.2%の利益成長を予測となっています。
 12ヵ月予想PERは18.8で、5年平均(18.7)、10年平均(17.5)を上回っている状況です。(Source:FactSet)
 

来週の主な決算発表(予定)

9/4(月):Labor Day(祝日)
9/5(火):
<寄付き前>-
<引け後>AeroVironment (AVAV), Zscaler (ZS).
9/6(水):
<引け後>American Eagle (AEO), ChargePoint (CHPT), Dave & Buster's (PLAY),GameStop (GME), Sportsman's Warehouse (SPWH).
9/7(木):
<寄付き前>Science Applications (SAIC)
<引け後>DocuSign (DOCU)
9/8(金):
<寄付き前>Kroger (KR)

米国の主な経済指標

9/4(月):Labor Day(祝日)
9/5(火):製造業新規受注、耐久財受注
9/6(水):ISM非製造業景気指数
9/7(木):新規失業保険申請件数
9/8(金):

今週の着目点

 レイバー・デー(労働者の日)の祝日で米国株式市場が休場となります。
 今週は、8月のサービス業PMI、FRBのベージュブック最新版等を確認していくことになるかと思います。これらのレポートから、サービス経済が国内経済の成長を維持し続けているかどうか、サービス部門のインフレが落ち着いているかどうか、そして消費者が生活費を稼ぐためにクレジットカードの負債にさらに傾いたかどうかを確認していきます。
 今週の企業の決算発表は多くかつ、小型株が多く市場に大きなインパクトを与えるようなものはないです。
 投資銀行による投資家会議がいろいろ開かれる予定です。2023年の最後の4ヶ月間と2024年の始まりに向けてフォーカスする箇所を確認するため、それらの会議から漏れ聞こえてくる内容を精査し、世界経済、インフレ、その他のポイントに関するものだけでなく、コメントも確認していきたいです。
 アノマリー的には9月は苦しい相場になります。2023年も同様の展開になるかわかりませんが、レイバーデイ明けから相場の雰囲気がガラッと変わることがありますので、今週は相場をよく観察していきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?