米国市場:5/16週の振返りと5/23週の予定
市場概況
今週もまた、株式にとっては厳しい1週間でした。主要株価指数は1ケタ台前半から半ばの下落を記録しました。結果として、Dowは8週連続、S&P500も7週連続、Nasdaqも7週連続の下落となりました。Nasdaqは年初来約27%の下落となり、S&P500も約18%の下落となりました。特にS&P500はザラ場で20%の下落を記録しており、リセッション入りの可能性も大きくなってきております。
なお、前週比で上昇した唯一の指標はVIX指数ですが、こちらも30台近辺となっており、投資家に一定の不安感はあるのもの動くに動けないままずるずる下げている感じがあります。
これらの解消に向けては、少なくとも、中国のロックダウンが解除され、景気後退の可能性がなくなり、FRBがインフレ対策にどれだけ積極的になっているか(ハードランディングを辞さないのか)かがはっきりするまでは、市場はボラティリティの高い状況が続くかもしれません。
仮に中国のロックダウンが6月1日に解除され、この解除に伴いサプライチェーンの問題は生産が開始されても港湾の混雑の可能性を考えると、すぐには解消されず少なくとも9月期の後半にならないと明確には判断できないかもしれません。また、米国の一部地域ではコロナの患者数が再び増加しており、まだ問題視はされていませんが今後、不安定化の要素としてもトピックになるかもしれません。
また、スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟し、ロシアとウクライナの戦争と関連する制裁措置がさらにエスカレートする可能性があり、この戦争も長期化しそうになってきてます。
CNN Money の Fear & Greed 指数が「極度の恐怖」を示しているように、不透明な感は今後も続くものとおもわれます。時折、市場は小幅な上昇を見せるかもしれませんが、上記の問題が解決されない限り、持続的な上昇は望みにくい状況です。次週も、すっきりとして買いに向かいにくい状況と思っています。
米国経済
4月鉱工業生産は、1.1%と予想0.5%を上回る結果となりました。前月は0.9%でした。自動車および同部品の生産が3.9%増と好調で、同部品を除いた工場生産は0.5%増となり、全体的な自動車生産の反発は、自動車チップ不足がゆっくりとしかし確実に改善し続けていると考えられます。2番目に高い成長率を示したのは公益事業で、前年比7.5%増となり、おそらく電気と天然ガスに関連する価格上昇を反映していると思われます。
4月小売売上高(前月比)は、0.9%と予想1.0%を下回りました。前年同月比では8.2%増でした。外食、自動車、自動車部品、ガソリンスタンドを除いた2022年2〜4月の小売売上高は、前年同期比6.7%増、前期比9.1%増となりました。主要カテゴリーは、フードサービス&ドリンキングプレイス(前年比19.8%増、2022年2~4月期は25.5%増)、無店舗販売店(同12.7%増、10.6%増)、食料品(同8.1%増、8.6%増)でした。電子・家電は住宅市場の影響か、前年同期比5.2%減、2-4月期は1.2%減、スポーツ用品・趣味・楽器・書店小売は4月に前年同期比で5.4%減となった。ガソリンスタンドの売上高が4月は前年比36.9%増、2-4月期は37.4%増とでした。4月の雇用統計では、平均時給の前年比5.5%増となっていますので、消費者が8.2%増レベルの小売売上高を記録するためには、貯蓄を切り崩すか、信用取引を利用していることは想像に難くなと思います。3月と4月の小売売上高の前年比を比較すると、いくつかのカテゴリーで前月比の減少が見られており、ウォルマートのカンファレンスコールの中であった、いくつかのカテゴリーでプライベートブランドやより安価なブランドへの買い替えが進んでいるというコメントと合わせると、インフレ圧力が消費者に打撃を与えているよう思えます。
4月住宅着工件数は172.4万戸となり予想176万戸を下回りました。前月比では0.2%減となっていますが全体を通して伸びてはいました。しかし、詳細を確認すると、住宅着工の先行指標である建築許可件数が、すべての地域で一戸建て住宅の前月比が減少しています。これは、人件費や資材の高騰、住宅ローン金利の上昇により、住宅購入者の値ごろ感や需要が圧迫され、新規建設が低調になってきているのではないかと思います。
4月中古住宅販売件数は、560万件と予想570万件を下回っています。全体の伸びとしても鈍化を見せており、次月に反転が見られないと景況感の悪化が購入者のマインドにもみられるようになり、全体の雰囲気がさらに悪化する可能性があります。
新規失業保険申請件数は21万8千件と予想20万2千件を下回りました。雇用の需要が一段落したかもしれず、一段落したのであれば賃金上昇のプレッシャーからも解放されますので、インフレも収まってくるかもしれません。
株式
全体として、S&P 500構成企業の95%が2022年第1四半期の実績値を現在までに発表しています。このうち77%の企業が予想を上回るEPSを発表しており、これは5年平均の77%と同じです。予想を4.7%上回る利益を発表しておりますが、5年平均の8.9%を下回っています。 今期の利益成長率は9.1%となる見込みです。
9.1%が今期の実際の成長率の場合、収益成長率としては2020年第4四半期(3.8%)以来の低さとなります。11セクター中9セクターが前年同期比で増益となっていますが特に、エネルギー、素材、産業セクターが強いです。
収益に関しては、S&P 500種構成企業の73%が実際の収益を予想を上回っており、これは5年平均の69%を上回っています。全体として、各社の収益は予想を2.7%上回っており、これも5年平均の1.7%を上回っています。第1四半期の混合売上成長率は、13.6%となっています。
13.6%が今期の実際の成長率の場合、5四半期連続で前年同期の売上高成長率が10%を超えることになります。エネルギー、素材、不動産の各セクターが牽引し、11セクターすべてが前年同期比で増収となっています。
今後の見通しとして、アナリストは2022年第2四半期に4.1%、第3四半期に10.1%、第4四半期に9.8%の収益成長を見込んでいます。2022年CYについては、アナリストは10.0%の利益成長を予測しています。
フォワード12ヶ月PERは16.4で、5年平均(18.6)を下回り、10年平均(16.9)も下回っています。
来週の主な決算発表(予定)
5/23(月):
<寄付き前>
<引け後>Zoom Video (ZM).
5/24(火):
<寄付き前>Abercrombie & Fitch (ANF), AutoZone (AZO), Best Buy (BBY), Dycom (DY), Petco Health & Wellness (WOOF), Ralph Lauren (RL)
<引け後>Nordstrom (JWN), Toll Brothers (TOL), Urban Outfitters (URBN).
5/25(水):
<寄付き前>Dick's Sporting Goods (DKS)
<引け後>Box (BOX), elf Beauty (ELF), Nvidia (NVDA), Splunk (SPLK), Williams-Sonoma (WSM)
5/26(木):
<寄付き前>Burlington Stores (BURL), Dollar General (DG), Dollar Tree (DLTR), Jack in the Box (JACK), Macy's (M).
<引け後>American Eagle (AEO), Costco (COST), Dell (DELL), Farfetch (FTCH), Gap (GPS), Marvell (MRVL), Ulta Beauty (ULTA), Zscaler (ZS).
5/27(金):
<寄付き前>Big Lots (BIG), Canopy Growth (CGC), Hibbett (HIBB).
<引け後>
米国の主な経済指標
5/23(月):
5/24(火):新築住宅販売件数
5/25(水):耐久財受注(前月比)(速報)、FOMC議事録
5/26(木):実質GDP(前期比年率)(改定)、新規失業保険申請件数
5/27(金):個人所得、個人支出、ミシガン大学消費者信頼感指数(確報)
今週の着目点
来週は、FOMC議事録のほか、重要な経済指標が多数発表されます。日本、ユーロ圏、英国、米国の5月の製造業およびサービス業経済の活況を示すだけでなく、インフレ圧力が前月と比較してどのような方向に推移しているのかを観察したいです。生産価格の上昇にも注目することで、消費者向けインフレの状況を確認できます。
また、週後半には、4月の個人所得と個人支出が出てきます。ここでは、特に3月に急増したクレジットカードなどのリボ払い消費者信用を受け、消費者の消費力を評価することなりますが、注目すべきはFRBが好むインフレ指標、個人消費支出価格指数です。3月の個人消費支出価格指数は6.6%で、2月の6.3%から上昇し、コアベースでは5.2%で、4月の5.3%から1%低下しました。
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