米国市場:6/19週の振返りと6/26週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、4348.33と前週比-1.39で終了しました。NASDAQは1349.52と前週比-1.44%で終了しました。
6月に少し早いサマーラリーがあり、それが終了したことを示すような展開となりました。EPS予想からしてもS&P500とナスダック総合株価指数が買われすぎ、あるいは買われすぎの水準にあったことも影響しているかと思います。今後は、夏休みシーズンに入りますので例年通りですと、今年の牽引役であるITセクターが上がりにくいシーズンとなります。したがって、7月~8月はあまりすっきりしない展開が続くのではないかと考えています。
先週の出来事を振り返ると、パウエルFRB議長がワシントンで連日、議会証言を行いました。その内容は、直近のFOMCで発表されていることに沿った内容であり、若干の失望売りにつながったかと思います。先週のFOMCから、今回の議会証言までの間に、インフレの状況を指し示すホットな経済データがなかったことを考えれば、パウエル議長の発言はサプライズではないと思います。
政策金利について見回してみると、パウエル議長の発言に加え、イングランド銀行(+50bpsの5.00%)、ノルウェー国立銀行(+50bpsの3.75%)、スイス国立銀行(+25bpsの1.75%)、トルコ中央銀行(+650bpsの15.0%)など、各国の中央銀行も政策金利を引上げ、インフレ対策に動いています。また、ミシェル・ボウマンFRB総裁が「インフレを低下させるには追加利上げが必要」と発言するなど、様々なFRB高官からタカ派的なコメントが出されています。他にも、サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁が金曜日に2回の利上げを繰り返し述べていますし、ダリー総裁は、年内あと2回の利上げは「非常に合理的」な予測だが、すでに金利がどれほど急速に上昇しているか、そしておそらく利上げが必要な水準にどれほど近づいているかを考えると、以前よりもゆっくりと慎重に動いた方が良いと述べています。
このFRB高官の発言にもかかわらずFED Watch Toolを確認すると、年内は1回の利上げがあるということのみを織り込んでいるだけで、2回目の利上げがあるということはまだ織り込んでいない状況です。これは、これ以上、利上げが続くと経済が下振れするリスクが大きくなるため、2回目の利上げはないのではないかと市場が予測しているのではないかと考えているのではないかと思います。FRBのスタンスが変わらず、市場が2回の利上げを織り込みに行く過程で多少のギクシャクはあるかもしれません。
しかし今のところ、経済は予想以上に持ちこたえており、インフレの進展もここ最近は緩やかになっています。FRBも2023年のGDP目標を3月の0.4%から1.0%に引き上げており、その経済の力強さを確認していると考えられます。ISM、PMIの状況から考えると製造業はすでに新規受注が縮小していることが確認されており減速していることは明らかなのですが、アメリカ経済を考えた時には、サービスセクターの方が大きくこちらはまだ減速を確認出来なく、インフレプレッシャーをかけ続けていると考えています。新規失業率も増加傾向にはなっていますが、コロナ前と同程度の水準で落ち着いており、引き続きタイトな状況は続いているものと伺えます。このため、雇用と賃金上昇圧力が今後も続いていくことが予想され、この圧力がインフレ圧力となりしばらくは継続することになるかと思います。このあたりは、7月の第1週に発表される、経済指標(雇用統計、ISM非製造業景況指数など)から確認できると思います。
仮にこの予想が正しいとすると、今後しばらくは4%台の数字が続くものと思われ、FRB高官が述べている年2回の利上げが現実味を帯びてくるものと想定されます。
7月の中旬以降は、2Qの企業の決算が発表されます。各企業がどのような発言をするのか、どのようなことに言及するのが高いかを考えていく必要があると思います。このため、FOMC以外にもドル相場も注視しておいた方がよいかもしれません。また、S&P500を構成する企業が、2023年後半に市場が期待する収益成長を達成できるかどうかが注目すべきかと思います。その他にも、バイデンインフラ法、インフレ抑制法、CHIPS法、アメリカン・レスキュー・プラン法、そして世界防衛費関連の支出が加速するため、下半期に好調になると思われる分野に引き続き注目していきたいです。
週末は、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がロシアのロストフドナーに展開し、モスクワを目指して進軍、そして停止するというニュースがありました。この結果で、何かすぐに直接市場に大きな影響はあるとは思いません。この事案によってプーチン政権の威信が傷ついたため、このままなにもなかったように元に戻るとも考えにくく、同様の事件が多発、ロシアの不安定化につながる可能性があります。ロシアの不安定化はエネルギー需給関係を乱すことなり、エネルギー価格の高騰にもつながってくるため、今後のニュースを確認しておく必要があると思います。
米国経済
6/19(月):ジューンティーンス(祝日)
6/20(火):住宅建築許可件数・着工件数
住宅建築許可件数は、149.1万件と予想142万件を上回りました。前回修正値は141.7万件(修正前:141.6万件)と上方修正されました。
住宅着工件数は、163.1万件と予想139.8万件を大きく上回りました。前回修正値は134万件(修正前:140.1万件)と下方修正されました。
6/21(水):
6/22(木):新規失業保険申請件数、中古住宅販売件数
新規失業保険申請件数は、26.4万件と予想25.4万件を上回りました。前回値は26.4万件(修正前:26.2万件)と上方修正されました。
中古住宅販売件数は、430万件と予想420万件を上回りました。前回値は430万件でした。住宅販売価格の中央値は39万6100ドル(前年同期比:-3.1%)でした。
6/23(金):
株式
アナリストによるS&P500種構成企業の第2四半期業績予想が出てきています。下方修正されていますが、平均してそれほど悲観的でなく、各社が発表した第2四半期の業績ガイダンスは最近の平均と一致しています。ただ、全体として、S&P500種構成企業の第2四半期業績予想は、3月末の予想に比べ、下方修正されていることには変わりはありません。S&P500種指数は2020年第2四半期以降で最大の前年同期比減益となる見通しです。アナリスト予想は、1株当たりでは、第2四半期の予想利益は3月31日以来2.3%減少している。この減少は5年平均の-3.4%より小さく、10年平均の-3.4%より小さい値となっています。
一方、S&P500構成企業が発表しているガイダンスは、2023年第2四半期のEPSガイダンスがマイナスである企業の割合は5年平均と同じである。この113社のうち、67社がマイナスのEPSガイダンスを、46社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。S&P500構成企業のうち、2023年第2四半期のEPSガイダンスがマイナスの企業の割合は59%(113社中67社)であり、これは5年平均の59%に等しく、10年平均の64%を下回っています。結果、2023年第2四半期の推定(前年同期比)減益率は、第2四半期の開始時点に比べて大きくなっています。3月31日時点の予想(前年同期比)減益率-4.7%に対し、6月16日時点のS&P500の予想(前年同期比)減益率は-6.5%となっています。仮に-6.5%が実際の減益幅となった場合、S&P500種指数は2020年第2四半期(-31.6%)以来の大幅な減益幅となります。また、同指数が(前年同期比で)減益となるのは3四半期連続となります。
売上の面でも、アナリストは当四半期中に予想を引き下げています。S&P500種指数は、3月31日時点では横ばい(0.0%)の予想だったのに対し、今日時点では(前年同期比)-0.4%の減収が予想されています。仮に-0.4%が実際の減少率であれば、同指数が前年同期比で減収となるのは2020年第3四半期(-1.1%)以来となります。
売上高が前年同期比で増加すると予測されるセクターは7つあり、金融セクターと消費者一任部門がその筆頭となる。一方、前年同期比で収益が減少すると予測されるセクターは4つあり、エネルギーと素材セクターとなっています。
3Q以降の展開を確認すると、アナリストは引続き2023年下半期は売上の伸びを予想しています。2023年第3四半期は0.7%、第4四半期は8.0%の増益を予想となっています。CY2023全体では、アナリストは1.1%の利益成長を予測となっています。
また、12ヵ月予想PER は18.8 で、5 年平均(18.6)、10 年平均(17.4)を上回っている状態です。第1四半期末(3月31日)の予想PER18.1も上回っています。
来週の主な決算発表(予定)
6/26(月):
<寄付き前> Carnival (CCL)
<引け後>
6/27(火):
<寄付き前>Schnitzer Steel (SCHN), Walgreens Boots Alliance (WBA)
<引け後>Jefferies (JEF)
6/28(水):
<寄付き前>General Mills (GIS)
<引け後>Micron (MU)
6/29(木):
<寄付き前>Acuity Brands (AYI), McCormick & Co. (MKC), MSC Industrial (MSM), Nano Dimension (NNDM), Paychex (PAYC)
<引け後>Accolade (ACCD), Nike (NKE)
6/30(金):
<寄付き前>Constellation Brands (STZ)
米国の主な経済指標
6/26(月):
6/27(火):耐久財受注、S&Pケースシラー住宅価格、新築住宅販売件数
6/28(水):
6/29(木):GDP、 個人消費、新規失業保険申請件数
6/30(金):個人所得・支出、PCEコアデフレータ
今週の着目点
今週は、住宅関連の経済指標がいくつか発表されます。先週発表された5月住宅着工件数が予想を大きく上回ったことが一過性のものではないことを確認するためにも、この辺のデータがどのように動いているか確認し検証が必要だと思います。また、2023年第1四半期GDPの最終予想が発表されますが、こちらはかなりの遅効性のデータであるため、最新断面の状況を観るうえでも、5月個人所得・支出、およびそれに付随する5月PCE価格指数に関心を持っていたほうがよいと思います。5月の消費者物価指数(CPI)は1-4月期と比べ若干の上昇を見せましたが、5月のコアPCE前年同月比が1-4月期の4.6%-4.7%に対しどのように推移するかが注目されます。もし動きが少なければ、CMEのFedWatchツールの7月の利上げ確率に反映され、確立がさらに高くなると思います。
ここ数ヶ月の労働市場の予想以上の好調と賃金の上昇が消費者の助けになると考えていますが、連邦学生ローンの支払い猶予が数ヶ月で切れるため、消費者の懐事情は新たな問題に直面することも認識しておく必要があります。この利子は9月から発生し、借り手は10月から再び支払いを開始することになるため、消費者と消費継続能力に関しても注目する必要があると思います。
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