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米国市場:3/20週の振返りと3/27週の予定

市場概況

 今週のS&P500指数は、3970.99と前週比+1.39%で終了しました。NASDAQは11,823.96と前週比+1.66%で終了しています。結果、S&P500は年初来3.4%の上昇となり先月末まで値を戻してきました。Nasdaqは1月の好調時と同様に値を大きく戻してきており、年初来12.97%となりました。ただ、このNasdaqの動きですが、主にPERの拡大によって牽引されており、一株当たりの利益はほとんど伸びていません。このPERの拡大は、2023年後半に市場が予想していた利下げを織り込んだ結果とみております。利下げの時期が市場期待とよりも遅くなると変調があるかもしれません。
 今週は、市場全体は上昇に転じましたが、そこに至るまでには、かなりのジェットコースターでした。市場が今週ジェットコースターのように動いた背景として、銀行セクターに対する懸念が再燃したことに加え、イエレン財務長官が預金カバー率についてさまざまなメッセージを発信したこと、FRBの緊急融資枠に対する借入が過去数カ月間のFRBのバランスシート縮小を相殺したことを示すデータがあったことが考えられます。これらの銀行をめぐる数日間のドラマの展開がはっきりとしてくれば、市場ははるかに良い気分で動くようになるのではないかと思います。また、市場が休場となる週末は、通常取引や緊急措置など、さまざまなことが話し合われる期間となります。この週末に、銀行セクターに関する新たな見出しが出てくるかどうかに注目しておきたいです。悪魔は細部に宿るとも言いますので、その結果、細部の不透明感を薄れさせるか、あるいは再燃させることになるかになると思います。
 上述しました通り、今週、市場がプラスに転じた原動力は、パウエルFRB議長が「2023年に利下げが行われるとは考えていない」「特にサービス経済におけるインフレ抑制への道は依然として長い」と述べたことを市場が軽く受け流したことにあると思います。CMEフェドウォッチ・ツールでは、今年も複数の利下げが予定されており、その原動力は最近の銀行破綻に伴う信用収縮と考えられています。市場では、信用収縮が事実上の利上げにつながるとの見方が主流となっていますが、今回の信用収縮がどの程度の利上げに相当するかはまだはっきりとはしていません。信用収縮は25ベーシスポイントの利上げに相当するとの見方もあれば、100-150ベーシスポイントの利上げに相当するとの指摘もあります。CMEのFedWatchツールによる、2023年に複数回の利下げが行われるとされているのは、このような思考プロセスによるものと考えています。
 今週初めに発表されたFRBによる最新の経済予測は5.1%を指しています。しかし、パウエル議長が示したように、信用引き締めの影響が懸念されるよりも少なく、インフレが頑強に続くようであれば、FRBはもっと手を打つ可能性があります。セントルイス連銀総裁のブラード氏は、2023年末までにフェドファンド金利がどの程度上昇する必要があるのかについて、4分の1ポイント引き上げ、5.50-5.75%の範囲とする見通しを明らかにしました。また、ブラード氏は、金融ストレスが去る確率は80%と見ており、春の終わりから夏にかけて、FRBの焦点はインフレ率を2%の目標に戻すことに戻ると話しています。そのためには、金利を「引き上げる」必要がありそうだと付け加えた。
 FRBは3月定例理事会を終え、今後数日間、他のFRB理事がブラード氏のコメントを繰り返すのか、あるいはどの程度異なる見解を示すのかに注目しておく必要があります。FRBが最近の銀行ストレスの影響を軽視し、信用収縮の影響によって経済が受ける影響は小幅であると呼びかけるようになるとさらなる金利の上昇も考えておく必要があり、市場は大きく動くことになるかと思います。
 とはいえ、信用収縮の影響と、それが金融政策のベクトルや速度にどのような意味を持つかを把握できるようになるまでには、少なくとも数週間はかかると思われますので、3月、4月は安心していいかと思います。今後に出てくる経済統計に注目しFRBの動きに引き続き注目しておきたいです。
 今回の信用伸縮はリッチ層での取り付け騒ぎということでリッチセッションであるといわれています。アメリカの経済としてはダメージをそれほど受けておらず、一般庶民は普通に生活しているが、シリコンバレー等、IT系の企業に影響が大きいということです。従って、基本路線としては、5月に0.25bpの利上げ、その後しばらく平行飛行になると考えてはおります。

米国経済

3/20(月):
3/21(火):中古住宅販売件数
 中古住宅販売件数は、458万件と予想410万件を上回りました。前回値は400万件でした。住宅価格中央値は36万3000ドル(前年同月比:‐0.2)でした。
 住宅販売は底をつけたみたいですね。住宅も冬の時代が終了しそろそろ春が来ているような気がします。D.R. Horton,(DHI)、Lennar(LEN)などは昨年の10月ぐらいから上がってきてましたので、上がり方も鈍りそうですね。
3/22(水):FOMC
 FOMCでは0.25%の利上げとし、FFレートを「4.75-5.00%」にしました。これは、市場予想と大きな乖離はありませんでした。量的引き締め(QT)は従来の方針を保ちました。
 その前の週で、さらに大きな利上げを示唆していたことから考えると、この2週間で発生した金融セクターの不安によって、引き上げ幅に影響があった旨の発言をパウエル議長もしていました。金融セクターの不安から信用の流れが悪化しており、政策金利の引き上げ以外のチャネルでも引き締め効果が強まる可能性も示しました。
 全体としては、金融システムの安定、それに対する政策余地のアピールをする場であったように受けて止めております。

3/23(木):新規住宅販売件数、新規失業保険申請件数
新規住宅販売件数は、64万件と予想65.5万件を下回りました。前回修正値は63.3万件(修正前:67万件)でした。住宅販売価格の中央値は43万8200ドルと前年同期比+2.5%でした。
新規失業保険者件数は、19.1万件と予想19.7万件を下回りました。前回値は19.2万件でした。

3/24(金):耐久財受注
耐久財受注は-1.0%と予想1.6%を下回りました。前回修正値は-5.0%(修正前:-4.5%)でした。

来週の主な決算発表(予定)

3/27(月):
<寄付き前>Carnival (CCL)
<引け後>PVH (PVH)
3/28(火):
<寄付き前>Conn's (CONN), McCormick & Co. (MKC), Walgreens Boots Alliance (WBA)
<引け後>Cal-Maine Foods (CALM), Dave & Buster's (PLAY), Jefferies (JEF), lululemon athletica (LULU), Micron (MU), RH (RH)
3/29(水):
<寄付き前>Cintas (CTAS), Kingsoft Cloud (KC), Paychex (PAYX)
<引け後>EVO Payments (EVOP), Semtech (SMTC)
3/30(木):
<寄付き前>-
<引け後>-
3/31(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

3/27(月):
3/28(火):S&Pケースシラー住宅価格、コンファレンスボード消費者信頼感指数
3/29(水):
3/30(木):GDP、新規失業保険申請件数
3/31(金):個人所得・個人支出、PCEコアデフレータ、

今週の着目点

 月末には、2月の個人所得・支出統計が発表され、PCEコアデフレータが発表される予定です。このレポートでは、コアPCEが、ここ数ヶ月の間に連続して上昇した後、前月比で低下しているかどうかを確認していきます。労働市場は引き続きタイトであることをみていると、その可能性はかなり低いと思います。
 先に述べたように、データからは、サービス部門のインフレ抑制への道は非常に長いものであると主張されそうです。しかし、ただ今後想定されている信用収縮が経済に与える影響から、市場はこのインフレデータの影響を無視する可能性が高いと思われます。
 前述したとおり、信用収縮が経済に与える影響を確認するには時間がかかるため現時点で判断するには時期尚早というのが現実です。今後数週間、3月期決算のシーズンに向けて、各社が何を見、何をしているかについてのコメントを発表されると思います。これらのコメントから、信用収縮がどの程度経済に影響を及ぼすかについては、それなりの感覚が得られると思います。その結果、市場の予想であるCMEのFedWatchツールで描かれている現在のFFレートのシナリオがどの程度正しいのか、あるいは間違っているのかが、より明確になってくると思います。

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