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米国市場:1/30週の振返りと2/6週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は前週比+1.6%上昇し、4136.38で終了しました。NASDAQはさらに強く、前週比+3.3%上昇し12006.96で終了しました。1月末時点ではS&P500指数は+6.18%、NASDAQは+10.7%でした。結果、アノマリーに従えば、大統領選挙の年ということもあり今年は14%程度の上昇が見込まれるという形になります。
 先週を振り返ってみると、ハイテク企業の大型決算、1月の経済データ、FRBの最新の金融政策声明と利上げなどイベントが盛りだくさんでした。1月は上述の通り、株式、特にテクノロジー関連株にとって好調な月でしたが、ここ数週間の市場は、中国の景気回復期待や、FRBがインフレとの戦いでこれ以上金利の上昇をすることはなく、年内には利下げがあるとの思惑に傾いており、暴走し始めているような気がします。また、決算においても、アップル(AAPL)、アルファベット(GOOG)、アマゾン(AMZN)などの大手ハイテク株の決算発表がありましたが、魅力に乏しく今後は成長が期待できないような内容となっていました。スターバックス(SBUX)やエスティローダー(EL)などの決算があり、中国の景気回復にはもう少し時間がかかりそうだが、2023年後半は前半より強くなりそうだとありました。
 1月の製造業PMIは、中国経済の減速を示唆するものでしたが、1月の非製造業PMIは、中国経済のサービス部門が好調なスタートを切ったことを示すものでした。ヘッドラインの数値が再び拡大域に入ったことに加え、企業活動、新規受注、雇用の全てが前月比で強化され、3つ全てが拡大域に戻りました。新規輸出受注も同様でした。
 1月雇用統計は予想をはるかに上回る雇用創出と失業率の低下は、FRBも注目していることと思います。パウエル議長が先週述べたように、FRBは労働市場の逼迫と住宅以外のサービス業のインフレデータを引き続き注視しています。一方では、雇用創出数は景気後退の可能性が薄いことも示唆しているようにみえ、ソフトリセッションの見方もあるように思えます。この結果、市場はこの数字と失業率の低下は、パウエルFRB議長が言及した「数回」の利上げをFRBが撤回する可能性が低いことを示すものだとも見ているようです。次回のFOMCまでにCPI2回、雇用統計は1回発表されますので、次回のFOMCでどのようにFRBが判断するかは注目に値します。

 中国の回復に伴い、景気後退が従来予想よりもマイルドになり、2023年後半はより堅調に推移するとの見通しを中心に、市場のセンチメントが変化しているように見受けられます。その兆候として、先週も予想を下回る決算報告やガイダンスがありましたが、これに対する市場の反応が挙げられます。一部の例外はあるものの、失望の決算にも関わらず大半の銘柄は過去のように大きく売られていないことが挙げられます。これは、12月期の決算で「既知の事実」が多かったことや、今期の決算の序盤で若干ポジティブな企業のコメントが多かったことに起因していると考えています。その結果、四半期業績は「悪い」から「恐れていたほど悪くない」へと変化しており、投資家のガードが下がってきているように思います。

米国経済

1/31(火):S&Pケースシラー住宅価格
S&Pケースシラー住宅価格指数は、6.77%と予想6.9%を下回りました。前回値は8.64%でした。前年から続いてきた二桁上昇は収まってきて、ようやく落ち着いてきた感じです。
2/1(水):FOMC、ISM製造業景気指数
FOMCでは、金利引上げは0.25%と予想と一致しています。記者会見では、インフレが和らいでいるとの表現が加わりましたが、確信するまではさらに証拠が必要だと述べ、入ってくるデータを総合的に判断し、会合ごとに決定するという従来のスタンスに変更はありませんでした。また、利上げに対する効果についても評価はしませんでした。
 市場が期待している、年末での金利引き下げの可能性については、3月のFOMCで更新するとしています。少なくともあと2回の利上げは協議するとされており、3月は0.25%の利上げ、5月も利上げする可能性も否定しませんでした。
 ISM製造業景気指数は、47.4と予想48.1を下回りました。前回値は48.4でした。新規受注は42.5と前月の48.6より下げています。企業コメントも一部の産業を除いて、弱気のコメントが多いです。

2/2(木):新規失業保険申請件数、耐久財受注
 新規失業保険申請件数は、18.3万件と予想19.4万件を下回りました。前回値は18.6万件でした。
 耐久財受注は‐0.2%と予想-0.1%を下回りました。前回値は‐0.1%でした。
2/3(金):失業率・非農業部門雇用者数(NFP)、ISM非製造業景気指数
 失業率は3.4%と予想3.6%を下回りました。前回値は3.5%でした。非農業部門雇用者数は51.7万人と予想19万人を大幅に上回りました。前回修正値は26万人(修正前:22.3万人)でした。労働市場は引き続き強い結果となっております。平均時給は33.03ドルと前年比プラス4.4%でした。
 ISM非製造業景気指数は、55.2と予想50.4を上回りました。前回修正値は49.2(修正前:49.6)でした。サービス業の新規受注は前回の45.2から急回復し、60.4でした。製造業に比べてサービス業が好調のように伺えます。

株式状況(FactSet)

 S&P500に属する企業のうち50%が、2月3日までに2022年第4四半期の決算を発表しています。このうち70%の企業がが予想を上回るEPSを発表しています。これは先週末の70%と変化はありませんが、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っています。収益は予想を0.6%上回る結果となっており、先週末の1.5%、5年平均の8.6%、10年平均の6.4%を下回っています。仮に0.6%が今四半期の実際のサプライズ率となった場合、同指標が発表したサプライズ率の中で2008年以来最も低い数値となります。
 第4四半期の混合型(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定結果を組み合わせたもの)の減益率は、‐5.3%と先週末の-5.1%、第4四半期末(12月31日)の-3.3%を下回っています。
 先週は、通信サービス、情報技術、消費者関連産業の企業が発表したネガティブな業績見通しが、ヘルスケア産業の企業が発表したポジティブな業績見通しに一部相殺され、指数の減益幅を拡大させる要因となりました。12月31日以降、金融および通信サービスセクターの企業によるネガティブな決算発表と業績予想の下方修正が、指数全体の減益幅を拡大させる最大の要因となっています。
 仮に-5.3%が今期の実際の減益率であれば、2020年第3四半期(-5.7%)以来となります。11セクターのうち4セクターが前年同期比で増益となり、エネルギーと産業セクターがリードしています。一方、通信サービス、素材、消費者裁量セクターを筆頭に、7つのセクターが前年同期比で減益を報告しています。
 売上面では、S&P 500種構成企業の61%が売上予想を上回りましたが、これは5年平均の69%、10年平均の63%を下回っています。企業全体では、売上は予想を1.1%上回る結果となっており、5年平均の1.9%、10年平均の1.3%を下回っています。
 第4四半期の混合収益成長率は、先週末の収益成長率3.9%および第4四半期末(12月31日)の収益成長率3.9%に対し、本日は4.3%となります。仮に4.3%が今期の実際の成長率であれば、同指標が報告した売上成長率としては2020年第4四半期(3.2%)以来の低さを記録することになります。8つのセクターが収益の前年比増加を報告しており、エネルギー、消費者裁量、産業部門がリードしています。3セクターは、公益セクターを筆頭に、前年同期比で減収となったと報告しています。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年上半期の収益は減少するが、2023年下半期は収益が増加すると予想しています。2023年第1四半期と第2四半期については、アナリストはそれぞれ-4.2%と-2.9%の収益減少を予想しています。2023 年第 3 四半期と第 4 四半期は、それぞれ 3.4%と 10.5%の増益を見込んでいます。2023年通期では、アナリストは3.0%の増益を予測している。
 フォワード12ヶ月PERは18.4で、5年平均(18.5)を下回るが、10年平均(17.2)は上回る。また、第4四半期末(12月31日)に記録したフォワードPER16.7を上回っています。
 今後1週間、S&P500種構成企業95社(うちダウ30種構成企業1社)が第4四半期の決算を発表する予定です。

来週の主な決算発表(予定)

2/6(月):
<寄付き前>Cummins (CMI), Loews (L), ON Semiconductor (ON), Tyson Foods (TSN)
<引け後>Activision Blizzard (ATVI), Pinterest (PINS), Skyworks (SWKS), TAKE-TWO (TTWO), UDR (UDR), ZoomInfo (ZI)
2/7(火):
<寄付き前>Aramark (ARMK), BP (BP), DuPont (DD), Fiserv (FISV), Gartner (IT), Jacobs (J), KKR & Co Inc (KKR), Royal Caribbean Cruises (RCL), Xylem Inc (XYL)
<引け後>Chipotle Mexican Grill (CMG), Enphase Energy (ENPH), Fortinet (FTNT), Illumina (ILMN), Paycom (PAYC), Vertex (VRTX), VF Corp (VFC)
2/8(水):
<寄付き前>CVS Health (CVS), Dominion Energy (D), Eaton (ETN), Fox Corp (FOXA), Robinhood (HOOD), Uber (UBER), Under Armour (UA), Yum! Brands (YUM)
<引け後>Affirm (AFRM), Azek (AZEK), Digital Turbine (APPS), JFrog (FROG), MGM Resorts (MGM), Sonoco (SON), Walt Disney (DIS)
2/9(木):
<寄付き前>AbbVie (ABBV), AstraZeneca (AZN), Hilton (HLT), Huntington (HII), Kellogg (K), Masco (MAS), PepsiCo (PEP), Philip Morris (PM), Ralph Lauren (RL), Sealed Air (SEE), Tapestry (TPR), Warner Music (WMG)
<引け後>Cloudflare (NET), DexCom (DXCM), Doximity (DOCS), LYFT (LYFT), Motorola Solutions Inc (MSI), PayPal (PYPL)
2/10(金):
<寄付き前>Magna (MGA), Newell Brands (NWL), Sensient (SXT).

米国の主な経済指標

2/6(月):
2/7(火):
2/8(水):
2/9(木):新規失業保険申請件数
2/10(金):ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 今週は、経済データの面では注目すべき発表がないのですが、多くの企業が決算発表を控えており、その結果いかんによって市場が動くかもしれません。

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