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米国市場:4/10週の振返りと4/17週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4137.64と前週比+0.79%で終了しました。NASDAQは12123.47と前週比+0.29%で終了しています。
 先週の株価指数は、小幅な上昇で終了しています。S&P500指数は、先月末時点をわずかではありますが超えてきており、ダウも先週比+1.2%になるなど今月は上を目指していることをうかがわせる結果となりました。
 また、連日発表された経済データを受けてマーケットが右往左往する場面も見られましたので、引き続き経済データサマリには注目が集まると考えています。
 3月のCPI(消費者物価指数)は前月比プラス0.1%と若干の上昇を見せたものの、前年比は5.0%と予想を下回る数字でとなっています。これを受けて、市場は、5月は0.25%の利上げをFRBが行うという見方が趨勢となっており、FRBがこれまでに発してきた内容に沿う形になっています。また、2023年後半に数回の利下げが予想されていましたが、最初の利下げが9月に0.25%されるとの予想が若干多くなってきてはいるものの、まだコンセンサスとしては確立されたものとなっておりません。また、利下げの回数も2回程度になるのではないかという気配が見えてきています。この事前予想の変化は、3月のCPI、FOMCの議事録、FRB高官の発言を反映しつつあると思います。
 ウォーラー総裁は、金曜日に開催されたGraybar National Training Conferenceで、今週の経済データを検討した結果、「インフレ率をCPIで測ろうが、FRBが好む個人消費支出で測ろうが、まだ高すぎるので、私の仕事は終わっていない。今回のデータは、インフレ目標があまり進展していないことを示していると解釈しており、経済見通しについては前回のFOMC時とほぼ同じ位置にあり、金融政策についても同じ道を歩んでいることになる。」と述べています。
 つまりは、5月は利上げを予定通り行い、経済指標にその結果が反映されてくるまでしばらくは様子見をすることになるだろうと考えています。その意味では、市場が9月に利下げがあると考えていることは少し早すぎるのではないかと思います。
 その証拠に、雇用市場は堅調で平均時給も上昇しています。また、原油価格も前週比で上昇し、まだ前年同期の水準を下回っているものの、ガソリン価格は先月から上昇傾向が続いています。このような傾向が続けば、特にデータの前月比を検証した場合、インフレ面での進展が鈍化し、個人消費の重荷となる可能性があります。今週発表された3月の小売売上高や3月の鉱工業生産に含まれる製造業のデータなどその他の経済データは、景気のペースが減速し続けていることを示しています。しかし、今のところ、景気が大きく落ち込んでいるというようなことを示しているわけではないです。3月の経済データのうち、住宅の状況などまだいくつかの重要なデータがま発表されていないため、これらの数値を確認する都度状況を把握していきたいと思います。
 先週は、大手銀行が四半期の決算発表を行っています。シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻を発端とする銀行危機にもかかわらず、 JPモルガン ・チェースなどの米銀大手4行が14日発表した1-3月期(第1四半期)決算は軒並み大幅増益となりました。前年同期より大きな利益をもたらした要因は銀行危機と同じく、金利上昇でした。SVBのような銀行は金利上昇で預金コストが膨らんだ一方、保有債券の価値が下がって資金繰りが悪化し、預金の取り付け騒ぎに発展しましたが、大手銀行は金利上昇と融資の伸びによってクレジットカードローンの金利を含めた金利収入を大きく押し上げた格好となりました。大手銀行の預金残高の上昇は、小・中規模銀行からの預金の逃避先になったことが示されております。銀行破綻を乗り越えつつあることが示されたと考えており、今後、銀行破綻の穴埋めが行われるにつれ、銀行システムも正常化し問題も風化すると考えています。
 業績予想については、S&P500のコンセンサスはじりじり下がり続けています。ファクトセットによると220.21ドルとなっており、前年比1%弱の上昇となっています。来週、再来週の結果によっては、さらなる修正が行われる可能性があります。今後数週間は、景気の減速や金利の長期化見通しを反映した企業のガイダンスが更新されるため、市場にとって波乱含みの展開となる可能性があると思われます。

米国経済

4/10(月):
4/11(火):
4/12(水):消費者物価指数(CPI)
 消費者物価指数(CPI)前年比は、5.0%と予想5.2%を下回りました。前回値は6.0%でした。前月比は、0.1%と予想0.3%を下回りました。前回値は0.4%でした。
 食品、エネルギーを除くコアCPI(前年比)は、5.6%と予想と一致しています。前回値は5.5%でした。前月比は、0.4%と予想と一致しています。前回値は0.5%でした。
 エネルギーを除外したサービス価格は前年同月比で7.1%、輸送サービスは13.9%上昇しています。家賃など住居費が、食料とエネルギーを除外した物価上昇率の60%を占めるため、住居費の伸びは既に落ち着いてきているので、今後はコアは落ち着いてくるかもしれませんが、エネルギー価格が再び上がってきており、それを相殺する可能性がありFRBがインフレを封じ込めたと時間するにはまだ時間が必要だと思います。
4/13(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
 生産者物価指数(PPI)は、前年同月比2.7%と予想3.1%を下回りました。前回修正値は4.9%(修正前:4.6%)でした。前月比は‐0.5%と予想0.0%を下回りました。
 生産者物価指数は落ち着いてきていますので、消費者への影響も徐々に浸透してくると思います。
 新規失業保険申請件数は、23.9万件と予想23.3万件を上回りました。前回値は22.8万件でした。
 数値は若干悪化してきていますが、コロナ前の水準ですので今のところは特に問題ないと思います。
4/14(金):小売売上高
 小売売上高は、‐1.0%と予想-0.5%を下回りました。前回修正値は-0.2%(修正前:-0.4%)でした。
 売上高の減少は13業種中8業種と広範囲にわたっており、業種別にみると、ガソリンスタンドが前月比5.5%減の552億ドル、寄与度マイナス0.46ポイントと全体を最も押し下げていました。燃料価格の下げが影響しているとみられます。

株式

 先週末時点で、S&P 500の第1四半期決算は好調なスタートとなりました。S&P500に属する企業のうち、6%が2023年第1四半期の決算発表を終えています。これらの企業のうち、90%が予想を上回るEPSの実績を報告しており、これは5年平均の77%、10年平均の73%を上回っています。企業全体では、予想を7.9%上回る業績を報告しており、これは5年平均の8.4%を下回るものの、10年平均の6.4%を上回っています。この結果、四半期末と比較し、第1四半期の業績が上振れしています。現時点の第1四半期のブレンド(報告済みの企業の実績と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)の減益率は、先週末が-6.9%、第1四半期末(3月31日)が-6.7%であったのに対し、本日は-6.5%となりましたが、引き続き減益幅は大きいままです。仮に-6.5%が今四半期の実際の下落率となった場合、2020年第2四半期(-31.6%)以来、同指数が報告した最大の減益率となります。
 売上高については、S&P500企業の63%が実際の売上高が予想を上回ったと発表しています。これは5年平均の69%を下回りますが、10年平均の63%には等しくなります。これは5年平均の2.0%を下回り、10年平均の1.3%を上回ります。第1四半期の混合売上成長率は、先週の成長率1.8%、第1四半期末(3月31日)の成長率1.9%に対し、現時点では2.0%となっています。2.0%が今四半期の実際の成長率であれば、2020年第3四半期(-1.1%)以来、同指数が報告した収益成長率の最低値を記録することになります。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年後半も売上の伸びを予想しています。2023年第2四半期については、アナリストは-4.6%の減益を予測しています。2023年第3四半期と第4四半期については、アナリストはそれぞれ1.9%と8.8%の増益を予想しています。2023年全体では、0.9%の成長を予測しています。
 今週1週間で、S&P500の60社(ダウ30の構成銘柄6社を含む)が第1四半期の決算を発表する予定です。(FactSetより)

来週の主な決算発表(予定)

4/17(月):
<寄付き前>Charles Schwab (SCHW), M&t Bank (MTB), State Street Corp (STT)
<引け後>Equity LifeStyle (ELS), J B Hunt (JBHT)
4/18(火):
<寄付き前>Bank of America (BAC), Bank of New York Mellon (BK), Goldman Sachs (GS), Johnson & Johnson (JNJ), Lockheed Martin (LMT),
<引け後>First Horizon (FHN), Interactive Brokers (IBKR), Intuitive Surgical (ISRG), Netflix (NFLX), United Airlines (UAL)
4/19(水):
<寄付き前>Abbott (ABT), ASML (ASML), Baker Hughes (BKR), 
Morgan Stanley (MS), Nasdaq (NDAQ), Travelers Companies (TRV).
<引け後>Alcoa (AA), Crown Castle (CCI), IBM (IBM), Lam Research (LRCX),
Las Vegas Sands (LVS), Steel Dynamics (STLD), Tesla (TSLA),
4/20(木):
<寄付き前>Alaska Air (ALK), American Express (AXP), AT&T (T), Blackstone (BX), DR Horton (DHI), Huntington (HBAN), Iridium (IRDM), Key (KEY), Nokia (NOK), Nucor (NUE), Philip Morris (PM), Pool (POOL), Taiwan Semiconductor (TSM), Truist Financial (TFC), Union Pacific (UNP), Watsco (WSO).
<引け後>CSX (CSX), 
4/21(金):
<寄付き前>Freeport-McMoRan (FCX), Procter & Gamble (PG),  SAP (SAP), Schlumberger (SLB)
<引け後>

米国の主な経済指標

4/17(月):ニューヨーク連銀製造業景気指数
4/18(火):住宅建築許可件数、住宅着工件数
4/19(水):
4/20(木):新規失業保険申請件数、中古住宅販売件数、フィラデルフィア連銀景況指数
4/21(金):

今週の着目点

 今週は、中小の銀行の決算が発表され、大手と比較して今回の銀行システムの不安でどのくらいダメージを受けているかがはっきりしてきます。この結果を吟味すると経済全体の健全性がどの程度保たれそうなのかということもはっきりしてくることを期待したいです。
 また、今後の経済指標は住宅関連の指標が相次いで発表されます。ボトムを抜け出しつつある住宅市場ですがその傾向がはっきりしてくるのではないかと思います。それと同時に、いくつかの地域別FRB指標も発表されます。今週半ばには、FRBの最新のベージュブックが発表されますのでこの確認を進めることで経済の状況の理解を助けることになると思います。
 FRBが2023年の経済予測に景気後退を織り込み、2023年以降のFF金利を固定しつつある状況を受け、市場は経済に後退する兆しがないか、発表される経済データの一つ一つを吟味することになります。
 先週発表された3月生産者物価指数(PPI)は、前回値と比較して大きく下げインフレに対して良好な進展を示したものの、4月末に発表される消費者物価指数と個人消費支出(PCE)価格指数を確認する必要があります。4月のPMI速報値では、投入価格圧力と、企業や事業者がどの程度値上げを転嫁し続けているのかについて、改めて確認することができ、4月のISM製造業景況指数と非製造業景況指数からどのようなことが裏付けられるかは5月のFOMCに向けて大事な指標となると思います。

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