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米国市場:11/28週の振返りと12/5週の予定

市場概況

 11 月の株式市場は、すべての主要平均株価が上昇し、好調なうちに終了しました。(S&P500指数:5.4%、Nasdaq:4.4%、DOW:5.7%上昇)
 月の終わりの伸びを後押ししたのは、11月30日に行われたパウエルFRB議長のコメントでした。FRBは、利上げペースを減速させる可能性が高いことを明らかにしました。ただ、FRBが利上げを緩めることを検討しているという「ニュース」はポジティブですが、「インフレに真の進展の兆しが現れる」までは利上げに踏み切ることを改めて強調してもいます。
 パウエル議長はFRBがどこで利上げを終了するかについての見解は示しませんでしたが、インフレが根絶されるまでFF金利は高止まりすると見るべきであると繰り返しています。労働市場の逼迫と賃金上昇の圧力を考慮すると、そのためには単に金利を上げるだけでは不十分なもみえます。12月2日に発表された11月の雇用統計は、雇用者数、賃金上昇率ともに予想を上回りました。さらに、10月のPCE価格指数(6.0%)に対するニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁のコメントがあり、インフレ率をFRBの目標値である2%まで下げるには「数年」かかりそうだと述べ、「私の希望は、2025年までに2%のインフレ目標に到達することだ」と付け加えています。

 ほかに発表された経済指標のうち、ISM製造業景気指数のデータは50を下回り、景気の減速を示唆し始めました。S&P500グループの収益とISMが収集・発表するPMIデータとの間には密接な関係があるため、今後、売上高と収益の予想がさらに下方修正される可能性があります。今週の初めに発表される11月のISM非製造業景気指数が50を下回り、景気後退を示すとすれば、その確率はさらに高まるでしょう。11月のデータで新規受注が落ち込んだことを考えると、12月のデータで劇的な回復が見られるとは考えにくい。さらに、ハイテク産業の厳しい状況は続いており、さらなる下方修正もあり得ます。
 これまでのことをまとめてくると、景気は減退局面にあることが示唆されているため、FRBはオプショナリティは確保しているものの、次年度はほとんど金利が上がらないことがコンセンサスとなってきています。10年債利回りは3.5%~4%の間で落ち着いてきており株式市場にとってはフォローの風が吹きつつあると思います。

米国経済

11/28(月):
11/29(火):S&Pケースシラー住宅価格
S&Pケースシラー住宅価格は、10.43%と予想10.75%を下回りました。前回修正値は13.06%(修正前13.08%)でした。

11/30(水):ADP雇用者数
ADP雇用者数は12.7万人と予想19.7万人を下回りました。前回値は23.9万人でした。

12/1(木):ISM製造業景気指数、個人所得・個人消費、PCEコアデフレーター、新規失業保険申請件数
ISM製造業景気指数は49と予想49.7を下回りました。前回値は50.2でした。
今回は、景気縮小が始まるといわれている50を下回りました。企業から寄せられるコメントも、弱気のコメントが増えてきており、景気減速への懸念が強まっていることが見られました。これまで懸念であった、インフレや、人手不足についてのコメントが減ってます。サプライチェーンもほぼ解決したと考えてよいと思います。

PCEデフレータは6.0%と予想と一致しました。前回修正値は6.3%でした。(修正前:6.2%)

新規失業保険申請件数は22.5万件と23.2万件を下回りました。前回修正値は24.1万件でした。(修正前24万件)
こちらは、コロナ前の水準に達してます。金利が上がってきていること、レイオフが続いていることからもう少し上がってくるかもしれません。


12/2(金):失業率
 失業率は3.7%と予想と一致しました。前回値は3.7%でした。雇用者数は26.3万人と予想20万人を上回りました。前回修正値は28.4万人でした。(修正前26.1万人)
 平均時給は32.84ドルと前年同期比+5.1%でした。平均時給の伸びは5%からなかなか収まらない状態です。賃金上昇がインフレ圧力になるため、こちらの鎮静化が注目されています。
 クリスマス商戦期間中にもかかわらず、小売り、物流系の雇用が減っており、ヘルスケア、政府系の雇用が増えていました。

株式

  S&P500種構成企業のうち約1%が第3四半期の決算発表を残すのみとなっています。このうち70%の企業が予想を上回る実績EPSを発表しており、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っている状況です。企業全体では、予想を2.0%上回る業績を発表しており、5年平均の8.7%を大きく下回り、10年平均の6.5%を大きく下回っています。2.0%が今期の最終的な実績値であった場合、過去9年間で2番目に低いサプライズ率となります。このサプライズ率の低下は、多くの企業の実際の業績が予想を異常に大きく下回ったことに起因しています。
 その結果、第3四半期のブレンデッド(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定実績を組み合わせたもの)増益率は、第3四半期末(9月30日)の増益率2.6%に対し、本日は2.5%となりました。2.5%が今期の実際の利益成長率であれば、2020年第3四半期(-5.7%)以来の低さとなります。
 売上面では、S&P 500種構成企業の71%が売上予想を上回って報告しており、これは5年平均の69%、10年平均の62%を上回っています。企業全体では、売上実績は予想を2.5%上回り、5年平均の1.9%を上回り、10年平均の1.2%を上回りまし た。その結果、第3四半期の混合収益成長率は、第3四半期末(9月30日)の売上成長率8.7%に対し、本日10.9%となりました。
 今後の見通しとして、アナリストは、2022年第4四半期は-2.4%の減益、CY2022は5.2%の増益を予想しています。2023年第1四半期と第2四半期については、アナリストは1.5%と0.8%の利益成長を予測しています。CY2023については、アナリストは5.6%の利益成長を予測しています。
 フォワード12ヶ月PERは17.6で、5年平均(18.5)を下回るが、10年平均(17.1)は上回っています。また、第3四半期末(9月30日)に記録したフォワードPER15.2を上回っています。(Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

12/5(月):
<寄付き前>Science Applications (SAIC)
<引け後>GitLab (GTLB), Sumo Logic (SUMO)
12/6(火):
<寄付き前>AutoZone (AZO), Signet Jewelers (SIG)
<引け後>AeroVironment (AVAV), Dave & Busters (PLAY), The Duckhorn Portfolio (NAPA), MongoDB (MDB), Toll Brothers (TOL)
12/7(水):
<寄付き前>Brown-Forman (BV.B), Campbell Soup (CPB), Thor Industries (THO)
<引け後>C3.ai (AI), GameStop (GME), Oxford Industrie (OXM)
12/8(木):
<寄付き前>Ciena (CIEN).
<引け後>Broadcom (AVGO), Chewy (CHWY), Costco (COST), DocuSign (DOCU), lululemon athletica (LULU)
12/9(金):
<寄付き前>

米国の主な経済指標

12/5(月):
12/6(火):ISM非製造業景気指数、製造業新規受注、耐久財受注
12/7(水):
12/8(木):新規失業保険申請件数
12/9(金):生産者物価指数(PPI)、ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 今週は、来週に予定されているFOMCに向けて、さらにいくつかの重要な経済データが発表されます。ISM非製造業景気指数が先週のISM製造業指数と同じような傾向、50を下回って縮小領域に入っているかが注目されます。景気の減退が確認され、今後の金利の方向性もはっきりしてくるからです。ほかに注目すべきデータは、ミシガン大学消費者信頼感指数とと11月生産者物価指数(PPI)です。消費者金融のデータは、貯蓄率の低下に伴い、消費者がクレジットカードを利用する機会が増えているため、上昇傾向にあります。借入コストの上昇と消費者債務の増加は、個人消費が大きなウェイトを占める米国の経済にとってどのような意味を持つのか、考えていく必要があると思います。とはいえ、まだまだ健全の領域にあると思います。
 また、11月のPPIでは、11月のPMIでみられたように、ここ数ヶ月のデータと比較しても、より縮小の傾向がみられると思います。

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