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米国市場:9/4週の振返りと9/11週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,457.49と前週比-1.29%で終了しました。NASDAQは10,386.99と前週比-1.93%で終了しました。
 先週は、8日(金)にはいくらか持ち直しましたが、今週の下げで8月からの下落幅が大きくなりました。S&P500種株価指数は1.3%下落し、ここ数週間の下落率は2.9%に達しています。ナスダック総合株価指数はこの4日間で1.9%下落し、8月に入ってからは4.1%近く下落しました。小型株は8月上旬から7.6%下落しており、持ち直す気配がまだ見えてきていません。先週の株価の重荷となったのは、金融政策の先行きに対する不透明感からの懸念の再発と、6日に報じられた中国から発せられたiPhoneやその他海外ブランドのデバイスを中央政府機関職員が職場での利用の禁止令でした。これによりアップル(AAPL)はこの間に7%近く下落し、S&P500とナスダック総合株価指数を押し下げました。
 金融政策の先行きに対する懸念が再燃したのは、8月ISM非製造業景況指数が54.5と予想52.4を大きく上回る強い結果となり、物価上昇の懸念が加速したことが原因の一つです。さらに、第2四半期の単位労働コストが当初の1.6%増から2.2%増に上方修正された。ダラス連銀のロリー・ローガン総裁は、「より強い経済活動が続けば、インフレが再燃する可能性がある」と懸念を示していました。アトランタ連銀のGDPNowモデルは5.6%で据え置かれており、ローガン総裁が指摘した懸念を物語っています。ゴールドマン・サックスは、12ヵ月後の景気後退確率を20%から15%に引き下げています。この懸念が正しいものなのかは、今週に発表される8月の消費者物価指数(CPI)によって確認できると思います。市場は、コア消費者物価指数が7月の4.7%から4.3%に低下すると予想しており、8月のコアCPIが予想を上回った場合、CNNのFear&Greed指数が「中立」となっていることから市場は不意を突かれることになり、最近の続いている株式市場に対する懸念の圧力がさらに強まると思います。しかし、コアCPIが予想を上回れば(4.3%を下回れば)、少なくとも週明けの8月小売売上高までは市場は浮上し始めるシナリオもあると思います。ただ、このところ原油価格が90ドルに迫る勢いで高くなってきており、昨年比で見た場合、エネルギー価格はむしろ上昇している部分もあり、CPIが低下するシナリオは考えにくいのかなと思います。
 また、原油価格ですがサウジアラビアがアラムコの株式の追加売り出しを計画しているとの報道もあり、このディールを成功させるためにもしばらくの間は原油高が続くものと予想します。そうした場合、今後の大幅な物価指数の下落は期待しにくくむしろ若干の高めに入ってくるのではないかなと考えています。
 中国の海外製デバイスの職場での利用禁止令の報道によって、AAPLが下落しています。AAPLもの売上がすべてなくなるというわけではないのですが、アップルにとって中国市場は3番目に大きな市場であり、売上高の約20%を占めています。販売が禁止されたわけではないので、特別大きなニュースではないと思いますが、米国企業が中国において嫌がらせを受けている、そしてそのニュースに株価が大きく反応していること自体が、市場の不透明感を表しているように思います。
 先週はレイバーデー明けということもあり、セクター別に状況を確認していました。結果、エネルギーセクターは好調でしたが、素材、機械セクターが大きく下げており経済指標は景気が減速していないというシグナルを出しているが、市場はそれを信じられておらず、疑心暗鬼になっているという感触を受けました。また、エネルギーセクターの好調も先ほど述べたようにサウジアラムコのディールによって原油価格が吊り上げられている可能性もあり、単純に信じることはできないと考えています。

株式

 S&P500種構成企業の第3四半期の業績見通しは、直近の四半期と比較して、よりポジティブなものとなっています。ネガティブな業績ガイダンスを発表した企業の割合は過去の平均と同水準でしたが、アナリストの023年第3四半期の業績予想は2021年第4四半期以来、約2年ぶりに上昇修正されました。この結果、同指数は2022年第3四半期以来の前年同期比増益となる見込みとなっています。
EPSベースで、第3四半期の推定EPSが6月30日時点と比較して0.4%増加しており、この増加率は5年平均の-3.6%、10年平均の-3.4%を上回っている状況です。
 EPSのガイダンスに関しては、S&P500構成企業のうち、2023年第3四半期のEPSガイダンスがマイナスである企業の割合は5年平均と10年平均の間にあります。ガイダンスを発表している115社のうち、73社がマイナスのEPSガイダンスを、42社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。従って、S&P500構成企業のうち、2023年第3四半期のEPSガイダンスがマイナスの企業の割合は63%(115社中73社)で、5年平均の59%を上回っているが、10年平均の64%を下回っています。
 EPSの正味上方修正により、2023年第3四半期の予想(前年同期比)増益率は、第3四半期の開始時点と比較して高くなっています。S&P500種指数は、6月30日時点では横ばい予想(前年同期比0.0%)であったのに対し、本日時点では0.5%の増益予想となっている。
仮に0.5%の増益となれば、S&P500種指数が前年同期比で増益となるのは2022年第3四半期(2.3%)以来となる。
 11セクター中8セクターが前年同期比で増益となる見通しで、通信サービスセクターと一般消費財セクターが牽引するが、一方、エネルギーと素材セクターを筆頭に3セクターが元気となると予測されています。
 売上の面でも、アナリストは当四半期中に予想を引き上げています。S&P500種指数は、6月30日時点では1.2%の増収予想だったのに対し、本日時点では1.6%の増収予想となっています。
前年同期比で増収が見込まれるセクターは9つで、その筆頭に一般消費財セクター部門が挙げられています。一方、前年比減収が予想されるのは2セクターでエネルギーと素材です。
 今後の見通しとして、アナリストは2023年第4四半期の利益成長率(前年同期比)を8.2%と予想しています。CY2023については、アナリストは(前年比)1.2%の増益を予想しています。CY2024については、12.2%の増益を予想しています。
 12ヵ月先PERは18.6で、5年平均(18.7)を下回るが、10年平均(17.5)を上回る。また、第2四半期末(6月30日)の予想PER19.1を下回っています。(Source FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

9/11(月):
<引け後>Oracle (ORCL)
9/12(火):
9/13(水):
<寄付き前>Cracker Barrel (CBRL)
9/14(木):
<引け後> Adobe (ADBE)
9/15(金):

米国の主な経済指標

9/11(月):
9/12(火):
9/13(水):消費者物価指数(CPI)
9/14(木):小売売上高、生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
9/15(金):ニューヨーク連銀製造業景気指数、設備稼働率、鉱工業生産指数、ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 今週は、重要な経済指標としては8月CPIとPPIになります。この結果で高い数字が出てくることになると利上げの終わりが遠のくとされ、市場に若干の動揺が走るかもしれません。CME FedWatchツールでも11月に0.25%の利上げ予想がまた高まってきています。この結果、利下げの時期が遠のくことになるため株式市場は9月も軟調になる可能性はあります。
 全米自動車労組(UAW)と自動車会社3社のストライキの可能性も注目しています。現在のUAWとの契約は9月14日に満了しますが、先日のUPS(アップス)との交渉でチームスターズが勝利したことを受け、UAWは組合員のために最大限の成果を出すことを目指し、厳しい姿勢で臨むと見られています。現時点では、ストライキの可能性は半々以上と見られています。直接の影響はないと思いますが、今後のストライキは経済に影響を与えるだろう。
 また、9月30日に政府機関閉鎖の可能性があることから、議会にも注目している。政治的な駆け引きによりちょっとしたショーが展開されるかもしれませんが、少なくとも短期的な資金調達法案は可決されと思います。
 14日にはARMのIPOが予定されています。色々な報道がされていますが、ネガティブな報道も散見され、案件自体がうまくいっていないような印象を受けます。今のところ、47~51ドルで値決めされるとされていますが、この価格帯が上がるのか、もしくは何ドルで取引開始されるのかによって、IPO市場が活性化するかしないかの判断材料になると思います。

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