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米国市場:7/3週の振返りと7/10週

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,398.95と前週比-1.16%で終了しました。NASDAQは13,660.72と前週比-0.92%で終了しました。
 7月4日は祝日のため、3日の市場は出来高も少なくのんびりとした週のスタートとなりましたが、その後、6 月PMIの発表、雇用統計、賃金統計の結果が発表されると動きが激しくなりました。
 これらの経済統計のレポートとデータからは、経済は比較的健全そうにみえるが、インフレ、特に賃金インフレは依然として長引いているということです。このため、FRBがあと2回程度利上げを行う可能性はさらに高くなって来ています。CMEフェドウォッチツールによる予想としては、7月に利上げが行われる可能性が92.4%の1回だけと見込まれており、2回の見込みはまだ予想されていません。ただ、7月の会合の後に発表される経済指標の状況によって変化はしますが、これまでの指標の推移を考えると9月のFOMCでシグナルが出され、11月にもう1回利上げが行われる可能性が高いと見ています。
 賃金インフレが粘り強いということがはっきりしてきましたので、今週発表される消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)も引き続き高止まりするように思えますが、こちらは発表される結果を厳密に受け止めたいと思います。
 10年債の金利も4%に乗るような動きを見せています。これまでは、4%超えを試しては落とされていましたが、このまま突き抜けていくようですと新たな展開となり市場の雰囲気も変わる可能性があります。先週はそれを予兆するような動きをしていました。
 これらを念頭に、S&P500指数の動きをみてみると、2000年から2022年の平均PER 19.4 倍と比較して、2023 年の予想 EPSの20倍強で先週の取引を終えました。これは、2Qには底をうち3Q、4Qにわたって、EPSも上昇に戻るという予測に基づいての動きと見ています。この予測は、最近の経済指標や金利上昇の見通しから、今後数カ月間に個人消費を圧迫する可能性がありその要因はあまり考慮されていないようにも思えます。S&P 500 が 2023 年上期と比較して 2023 年下期に予想される EPS 成長率 7% 以上を上回る可能性があるかについて疑問を抱かざるを得ないと思っています。これらの成長懸念に対して、まだはっきりした答えが得られていないため、7月は右往左往する展開が続くのではないかなと思います。このまま、経済指標がしっかりした足取りを残していくのであれば、7月、8月はウダウダした期間が続くが秋口の(Labor Day)を過ごしたあとぐらいから上昇基調に戻るのではないかなと期待しています。

米国経済

7/3(月):ISM製造業景気指数
 6月のISM製造業景気指数は、46と予想47.1を下回りました。前回値は46.9でした。
7/4(火):祝日(独立記念日)
7/5(水):製造業新規受注、耐久財受注
 製造業新規受注は前月比+0.3%と予想+0.6%を下回りました。前回修正値は+0.3%(修正前:0.4%)を下方修正されました。
 耐久財受注は、前月比+1.8%と予想1.7%を上回りました。前回値は+1.7%でした。
7/6(木):ADP雇用者数、新規失業保険申請件数、ISM非製造業景気指数
 ADP雇用者数は、49.7万人と予想24.1万人を上回りました。前回修正値は26.7万人(修正前:27.8万人)と下方修正されました。
 新規失業保険申請件数は、24.8万件と予想24.6万件を上回りました。前回値は23.6万件(修正前:23.9万件)と下方修正されました。
 ISM非製造業景気指数は、53.9と予想51.2を上回りました。前回値は50.3でした。
7/7(金):失業率
 6月の失業率は、3.6%と予想に一致しました。前回値は3.7%でした。非農業部門雇用者数は20.9万人と予想22.9万人を下回りました。前回修正値は30.6万人(修正前:33.9万人)を下方修正されました。
 平均時給は33.58ドルと前月比+12セントでした。5月の平均時給も33.46ドルに上方修正されました。

株式

 アナリストによるS&P500企業の第2四半期利益予想は、小幅に下方修正されました。全体としては、第2四半期利益予想は、2020年第2四半期以来最も大きい前年比較で利益減の決算発表がされると予想されています。1株当たりベースでは、第2四半期の予想利益は3月31日から6月30日までに3.0%減少しました。この減少率は、5年間の平均の-3.4%よりも小さく、10年間の平均の-3.4%よりも小さいです 。
 ガイダンスの観点で見ると、2023 年第 2 四半期の EPS ガイダンスがマイナスになる S&P 500 企業の割合は、5 年間の平均と同じです。 指数に含まれる 113 社が 2023 年第 2 四半期の EPS ガイダンスを発行しており、これら 113 社のうち、67 社がマイナスの EPS ガイダンスを発行し、46 社がプラスの EPS ガイダンスを発行しています。 つまり、2023 年第 2 四半期の EPS ガイダンスがマイナスになると発表↓ S&P 500 企業の割合は 59% (113 社中 67 社) で、これは 5 年間の平均と同じとなっています。10 年間の平均である 64%を下回っています。
 その結果、2023 年第 2 四半期の予想 (前年比) 収益減少幅は、第 2 四半期の開始時点と比べて大きくなっています。 現時点では、S&P 500 指数の利益は、3 月 31 日の時点の予想利益減(前年比)が -4.7%だったのに対し、-7.2% の減益となると予想されています。
 仮に、-7.2%が第2四半期の実際の減益だとすれば、2020年第2四半期(-31.6%)以来の最大の減益となります。 また、この結果、前年比で利益がマイナスとなるとのは3四半期連続となります。
 セクター別に確認すると、11 セクターのうち 7 セクターは、消費者裁量セクターと通信サービスセクターを中心に、前年比で増益となると予想されています。 一方、エネルギー、素材、ヘルスケアセクターなどの4セクターは減益となることが予想されています。
 売上についても同様で、アナリストは第2四半期の予想を下方修正しています。現時点では、3 月 31 日時点の売上が横ばい (0.0%)の予想だったに対して、売上が -0.3% 減少すると予想されています。仮に、売上厳の-0.3%が第2四半期の結果であるとすると、2020年第3四半期(-1.1%)以来初めて前年比収益の減少となります。セクター別に確認すると、金融セクターと消費者セクターを中心に、7 つのセクターが前年比で売上増となると予測されています。 一方で、エネルギーおよび素材セクターを中心に、4 つのセクターが前年比で売上減になると予測されています。
 今後については、アナリストは依然として 2023 年下半期の増益成長を予想しています。2023 年第 3 四半期と 2023 年第 4 四半期の増益率としてそれぞれ 0.3% と 7.8% と予想しています。 2023 年の全期間では0.8%の増益と予測しています。
 この将来 12 か月の PER は 18.9 倍となっており、5 年平均 (18.6) を上回り、10 年平均 (17.4) も上回っていますが、第 2 四半期末(6 月 30 日)に記録した将来 PER 19.1 倍をわずかに下回っている状況です。

来週の主な決算発表(予定)

7/10(月):
7/11(火):
<引け後>PriceSmart (PSMT), WD-40 (WDFC)
7/12(水):
<引け後>
7/13(木):
<寄付き前>Cintas (CTAS), Conagra (CAG), Delta Air Lines (DAL), Fastenal (FAST), PepsiCo (PEP).
7/14(金):
<寄付き前>BlackRock (BLK), Citigroup (C), Ericsson (ERIC), JPMorgan (JPM), State Street (STT),  UnitedHealth (UNH), Wells Fargo (WFC).


米国の主な経済指標

7/10(月):
7/11(火):
7/12(水):消費者物価指数(CPI)
7/13(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
7/14(金):ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 先週のPMI、雇用統計はノーサプライズで終わりました。この結果、市場は経済の軟着陸の可能性が高くなっており、このシナリオがコンセンサスになりつつあります。今週も消費者物価指数と生産者物価指数が発表されます。この結果、インフレ、コアインフレがどの程度の速度で減速しているのかがはっきりしてくると思います。また、同時にFRBからベージュブックが発表されます。各加盟銀行が実施した実態調査から経済の軟着陸の可能性にたいしても別の視点を与えてくれると思います。
 消費者に対する懸念を考慮すると、今後数カ月以内に学生ローンの支払い一時停止が終了するため、5月の消費者信用データは消費者借入について新たな因子を考慮しなくてはならないと思います。リボ払いクレジットがさらに増加すると、消費者の支出能力に対する懸念が上がり、それに対する肯定的もしくは否定的な評価の変化にも考慮していく必要があると思います。


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