米国市場:10/31週の振返りと11/7週の予定
市場概況
10月は、S&P 500が8%上昇し、ナスダック総合株価指数が3.9%上昇する結果となりました。10月は今後の利上げ予想についての様々な記事が掲載され、また経済統計が発表される都度、市場参加者がそれによって大きく揺れ動くことになりボラティリティが大きかったのですが総じて指数は上昇しました。ただ、ITセクターは従前の予想通りすっきりした決算を出せない企業が続出しており、ITセクターが全体の流れに乗り遅れつつあるような印象を受けました。
1週間の動きに目を移すと経済指標、企業収益、そしてFOMCと大きな出来事が続きました。FOMCでは予想通り0.75%の利上げが発表されましたが、12月以降の利上げ幅については含みを持たす発言でした。結果、FRBがオプショナリティを持つことになり今後の利上げの終了時期を含めて経済指標を観察することの日々が続くことになりそうです。
米国経済
11月1日 ISM製造業景気指数
ISM製造業景気指数は50.2と予想50.0を上回りました。前回値は50.9でした。
新規受注は49.2と先月の47.1に引き続き50を下回っています。景気悪化に備えて発注を落とす動きが広がっているのではないかと考えられます。
サプライヤーデリバリーは46.8と50を下回りました。部材の仕入れがスムーズに実施されるようになってきており、インフレプレッシャーも少なくなってきているのではないかと思います。
また、物価も46.6と50を下回りました。
11月2日 FOMC
今回の0.75%利上げは市場の予想通りとなりました。12月以降の利上げについては、利上げの継続を表明しつつ、今後の利上げは「これまでの累積的な利上げ、金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢の変化を考慮する」と表記されました。12月に利上げ幅を縮小する可能性もにじませ、12月の利上げ幅よりも、最終的な利上げの到達点やそれをいつまで続けるかという考えを示しています。
利上げ打ち止め時の最終的な金利水準は9月の想定より高くなっているとも発言していますが、すぐには利下げしない点も改めて強調し全体としてタカ派と市場は受け取めていたようです。
今後の利上げについては、インフレを中心とした今後の経済経済指標やFRB高官発言をにらみながら、方向性を探る必要があるようですが、最終調整局面かなと思います。
11月3日 ISM非製造業景気指数、耐久財受注、新規失業保険申請件数
ISM非製造業景気指数は54.4と予想55.2を下回りました。前回値は56.7でした。9月の56.7%から2.3ポイント低下し、2020年5月以来の低い数値となりました。中身を確認すると、新規受注も56.5%と前月比で低下し、依然として拡大域にあるが、コメント等を確認すると今後さらに減速する可能性を示唆しているように思えます。1点懸念としては、物価指数が10月に2ポイント上昇して70.7となり、"年央に横ばいだった納期遅れが増加した "と回答者がいたためとは思いますが、こちら継続的に高い水準となるのか観察を続けたいです。
耐久財受注は前月比0.4%と予想と一致しました。前回値は0.4%でした。
新規失業保険申請件数は21.7万件と予想21.9万件を下回りました。前回修正値は21.8万件でした。
株式
全体として、S&P500に属する企業の85%が2022年第3四半期の決算発表を終えています。このうち70%の企業が予想を上回るEPSを発表しており、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っている状態です。企業全体では、予想を1.9%上回るEPSを発表しており、5年平均の8.7%を大きく下回り、10年平均の6.5%を大きく下回っています。1.9%が今期の最終的な予想値であれば、過去9年間で2番目に低いサプライズ率となります。
第3四半期のブレンド(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定実績を組み合わせたもの)EPS成長率は、先週のEPS成長率2.1%、第3四半期末(9月30日)の予想EPS成長率2.7%に対し、本日は2.2%となりました。
先週は、ヘルスケアやエネルギーセクターを筆頭に複数のセクターの企業から報告されたポジティブな業績サプライズが、金融、通信サービス、消費者裁量セクターの企業から報告されたネガティブな業績サプライズにほぼ相殺され、この期間の指数のEPS成長率はわずかな上昇となりました。
仮に2.2%が今期の実際のEPS成長率となった場合、2020年第3四半期(-5.7%)以来の低水準となります。
売上面では、S&P 500種構成企業の71%が売上予想を上回って報告しており、これは5年平均の69%、10年平均の62%を上回っています。これは5年平均で69%、10年平均で62%を上回っています。結果、第3四半期の混合売上成長率は、先週の9.3%に対し今週は10.5%となりました。当四半期末(9月30日)は予想8.7%の増収でした。
仮に10.5%が当四半期の実際の売上成長率であれば、7四半期連続で10%を超える収益成長率となります。全11部門が前年同期比で増収となり、エネルギー部門がその筆頭です。
今後の見通しとして、アナリストは、2022年第4四半期は-1.0%の減益、CY2022は5.6%の増益を予想しています。2023 年第 1 四半期と第 2 四半期については、アナリストは 2.3%と 1.5%の利益成長を予測しています。CY2023については、アナリストは5.9%の利益成長を予測しています。
フォワード12ヶ月PERは16.1であり、5年平均(18.5)および10年平均(17.1)を下回っています。
今後1週間、S&P500種構成企業30社(うちダウ30種構成企業1社)が第3四半期の決算を発表する予定です。(Source:FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
11/7(月):
<寄付き前>BioNTech (BNTX), Ritchie Bros (RBA)
<引け後>Activision Blizzard (ATVI), Diamondback Energy (FANG), International Flavors & Fragrances (IFF), Lyft (LYFT), Mosaic (MOS)
11/8(火):
<寄付き前>CNH Industrial (CNHI), Coty (COTY), DuPont (DD), Global Foundries (GFS), Royalty Pharma (RPRX),
<引け後>Akamai (AKAM), Axon (AXON), NortonLifeLock (NLOK), Sprouts Farmers Market (SFM), Walt Disney (DIS)
11/9(水):
<寄付き前>Capri Holdings (CPRI), DR Horton (DHI), Hanesbrands (HBI), Olaplex (OLPX), Roblox (RBLX), The Trade Desk (TTD), Vertex (VERX), Wendy's (WEN)
<引け後>Bumble (BMBL), Dutch Bros (BROS), Fair Isaac (FICO), Inter Parfums (IPAR), Jazz Pharmaceuticals (JAZZ), Marqeta (MQ), Navitas Semiconductor (NVTS), Rivian Automotive (RIVN), Unity (U), ZipRecruiter (ZIP)
11/10(木):
<寄付き前>Astrazeneca (AZN), Dillard's (DDS), Edgewell Personal Care (EPC), Ralph Lauren (RL), Tapestry (TPR), Utz Brands (UTZ), Xometry (XMTR),
<引け後>Beazer Homes (BZH), Doximity (DOCS), Duolingo (DUOL), indie Semiconductor (INDI), Sierra Wireless (SWIR)
11/11(金):
<寄付き前> Spectrum Brands (SPB)
<引け後>
米国の主な経済指標
11/7(月):-
11/8(火):-
11/9(水):-
11/10(木):消費者物価指数(CPI)、新規失業保険申請件数(前週比)
11/11(金):ミシガン大学消費者信頼感指数
今週の着目点
今週は、先週と比較して落ち着いた週になりそうです。FOMCは12月の中旬ですし、経済統計の発表もしくないです。ただ、3Qの決算発表をする企業数は先週とほぼ変わらずですがS&P500 構成銘柄のうち、今週決算を発表する企業数は先週の171社から31社に減少するため、若干余裕を持った週になりそうです。
S&P500構成銘柄の約85%が最新の四半期決算を発表しており、9月期の決算シーズンの終わりがが近づくと、2022年度と2023年度の予想EPSが低下してくると考えています。小売企業はまだ発表されていませんが、消費者のインフレ圧力への対応や年末商戦に向けた在庫の膨張などによって、まだまだ厳しい局面にあると思われるため、今後数週間でS&P 500指数は上昇基調一辺倒にはならないと思います。
来週発表される経済データでは特に10月消費者物価指数(CPI)には、注目しておきたいです。先週末のコンセンサス予想では、10月の米消費者物価指数のヘッドラインは前月の8.2%から8.0%に低下すると予想されています。この数字とほぼ同じであれば、パウエル議長の「インフレはうまく固定されているようだ」という発言を裏付けることになり、Worst is Overとしなって市場は大きく上昇を始めるのではないかと思いますので、CPIの結果を静かに待ちたいとと思います。
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