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米国市場:5/8週の振返りと5/15週の予定

市場概況

 今週のS&P500指数は、4,136.25と前週比-0.29%で終了しました。NASDAQは12284.74と前週比+0.4%で終了しています。
 先週も引き続き、5月のウダウダ相場となり狭いレンジでの取引となりました。指数全体としては、まちまちの結果となり、ダウ平均株価は下落しましたが、NASDAQ総合指数は1%弱の上昇を見せています。ラッセル2000は大きく下落し、年初来マイナス圏となりました。騰落率を確認するとマイナスとなっている銘柄の方が多く、小型株にはあまり元気がなく大型株によって支えられている構造となってきています。
 先週も経済指標が発表されましたが、ほぼ予想の範囲内に収まる形となっており市場として、不安・懸念材料は残るもののその状態に慣れつつあり下降への恐怖心も薄れていると考えます。VIX指数も17%と低い状態が続いており、CNN Fear and Greed Indexも若干のGreedには触れていますがほぼニュートラルな状態となっていることからも裏付けられます。
 銀行業務に関する上級融資担当者意見調査(SLOOS)によると、予想通り、家庭向けおよび企業向けの融資基準が厳格化されました。先週の長期金利は下落傾向をみせており、10年債利回りは3.4%と4月第1週以来の低い週間終値となり引けています。2年債、5年債、10年債、20年債、30年債などの長期債の利回りも同様に、ここ数週間の間に徐々に下がってきています。長期金利は下落傾向を見せていますが、先日のFOMCではフェデラルファンドレートを5%から5.25%の水準に引き上げています。
 この結果、逆イールドが続いていますが、その幅が大きくなってきています。短期借入のコストは長期借入よりもはるかに高くなるため、専門家はこの状態が長く続くと不況になることを予言していると考えています。しかし、前回のFOMCのパウエルFRB議長の発言からあるように、景気後退はまだ予測には含まれていないようです。アトランタ連銀の2023年第2四半期のGDPNow予測は2.7%成長となっており、今期はちょうど中間点にさしかかったところです。
 先週、イングランド銀行が予想通り金利を1/4ポイント引き上げました。これは明らかに高インフレに対抗するために行われたものです。米国でも、インフレとの戦いはまだ続いています。先週の週半ばに、4月の消費者物価指数と生産者物価指数が発表されましたが、コアCPIは5.5%と予想通りでしたが、FRBが目標としている2%よりも高い数値となっています。PPIは、前年比3.2%と予想通りの結果となったコアを除き、ほとんどが予想を下回る結果となりました。この結果、Fed Watch Toolでは、6月の次回会合で利上げが実施される確率はおよそ10%であるとみられていますが、利上げの可能性は低いと思います。

米国経済

5/8(月):
5/9(火):
5/10(水):消費者物価指数(CPI)
 4月CPI(前年比)は4.9%と予想5.0%を下回りました。前回値は5.0%でした。4月CPI(前月比)は、0.4%と予想0.3%を上回りました。前回値は0.1%でした。
5/11(木):生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数
 4月PPI(前年比)は3.2%と予想3.3%を下回りました。前回値は3.4%でした。4月PPI(前月比)は、0.2%と予想0.4%を下回りました。前回値は-0.4%でした。
 新規失業保険申請件数は、26.4万件と予想24.5万件を上回りました。前回値は24.2万件でした。
5/12(金):ミシガン大学消費者信頼感指数
 ミシガン大学消費者信頼感指数(速報)は、57.7と予想63.1を上回りました。前回値は63.5でした。

株式

 先週までに、S&P500を構成する企業のうち92%が23年第1四半期の決算の発表を終えています。このうち78%の企業が予想を上回るEPSの実績を発表しており、これは5年平均の77%を上回り、10年平均の73%も上回っています。全体として、企業は予想を6.5%上回る利益となっており、これは5年平均の8.4%を下回るものの、10年平均の6.4%を上回っています。ドル高の修正、今期の期待値の低下によるものと考えています。
 この結果、第1四半期の混合決算(決算発表済みの企業の決算と決算発表前の企業の見込みを合算したもの)の減益率は、第1四半期末(3月31日)の減益率-6.7%に対し、現時点では-2.5%となりました。仮に-2.5%が当四半期の実際の減益幅となった場合、同指数が2四半期連続で減益となります。
 売上に関しては、S&P500の75%の企業が実際の売上を予想を上回って発表しており、これは5年平均の69%および10年平均の63%を上回っています。全体として、企業は予想を2.5%上回る売上を報告しており、これは5年平均の2.0%を上回り、10年平均の1.3%を上回っています。
 この結果、第1四半期の混合売上成長率は、第1四半期末(3月31日)の売上成長率1.9%に対し、本日は4.0%です。4.0%が当四半期の実際の成長率であれば、同指標が報告した収益成長率としては2020年第4四半期(3.2%)以来の低さとなります。
 今後の見通しに変化はなく、アナリストは2023年後半も収益の伸びを予想しています。2023年第2四半期については、アナリストは-6.3%の収益減少を予想しています。2023年第3四半期と第4四半期については、アナリストはそれぞれ0.7%と8.1%の増益を予想しています。2023年CY全体では、アナリストは1.0%の利益成長を予測しています。(Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

5/15(月):
<寄付き前>monday.com (MNDY), Tower Semiconductor (TSEM)
<引け後>
5/16(火):
<寄付き前>Home Depot (HD), Paysafe (PSFE), Stratasys (SSYS)
<引け後>Doximity (DOCS), Keysight (KEYS), Kyndryl (KD), 
Star Bulk Carriers (SBLK)
5/17(水):
<寄付き前>Jack in the Box (JACK), Target (TGT), TJX (TJX)
<引け後>Cisco (CSCO), DLocal (DLO), StoneCo (STNF)
5/18(木):
<寄付き前>Advance Drainage Systems (WMS), Canada Goose (GOOS),  Walmart (WMT)
<引け後>Applied Materials (AMAT), Ross Stores (ROST)
5/19(金):
<寄付き前>Deere (DE). Foot Locker (FL)

米国の主な経済指標

5/15(月):ニューヨーク連銀製造業景気指数
5/16(火):小売売上高、設備稼働率、鉱工業生産指数
5/17(水):住宅建築許可件数・着工件数
5/18(木):住宅建築許可件数、新規失業保険申請件数
5/19(金):

今週の着目点

 6月1日に米国債がデフォルトする見方をイエレン米財務長官がしていることから、政治的には今週もこの動きに注目が集まると思います。議会内の対立をどのように解消し、債務上限を引き上げるためのパフォーマンスについての、報道の機会が増えると思います。今のところ、株価は大きくは反応していませんが、あと2週間ほどしかないため刻々と時間が過ぎていく中で、どこかで株式市場と債券市場が反応を示すかもしれません。
 火曜日には小売売上高が発表されます。3月の売上高が減少したとの発表でしたが、市場は4月は大きなプラスを予想しています。現在のところ、前月の0.6%のマイナスに対して、0.7%のプラスを予想しています。小売の調子が悪くならない限り経済は安定していると考えています。
 水曜日、木曜日には、住宅の状況が発表されます。金利が高い状況にもかかわらずボトムをつけつつある状況でありその方向性に変化がないか確認することになります。

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