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米国市場:11/14週の振返りと11/21週の予定

市場概況

 先週は、ボラティリティの高い週でした。結果として、S&P500は‐0.7%安、Nasdaqは‐1.6%安となり、先々週の上げの一部を戻した格好となっていますが、10月からのラリーは継続していると考えてよいと思います。10月の消費者物価指数が予想を下回ったことから、FRBによる今後の利上げへの期待に変化が生じたことも大きいです。10月の生産者物価指数(PPI)も10月の消費者物価指数と同様に予想を下回りましたが、これもFRBのインフレ目標である2%からはまだ大きく上の数字となっており今回のラリーのペースを上げるには至りませんでした。
 10月の米小売売上高は予想を上回る結果となりました。このデータとPPIが予想を下回ったこと、そして10月鉱工業生産が製造業景気を前年同期比では引き続き拡大していることから、GDP予想は引き上げられています。通常ですと、景気が拡大しているととらえ歓迎すべき内容なのです。FRBが利上げをしインフレの鎮静化を図る中、GDP予想が引上げられるということは、FRBの取り組みが影響を及ぼしていないことを示唆することにもなります。Fつまり金利上昇が止まらないことも意味することになるため、十分な注意が必要になってきます。ただ、商品先物が下落傾向にあること、住宅も不調とほかの指数は悪化し始めているためどちらかというと景気が減速していると考えるべきかとは思います。
 先週はFRB高官のコメントが多く出されています。多くは、FRBにはまだやるべきことがたくさんあり、その仕事が終わるまでは辞めないということを繰り返す内容となっています。サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁は利上げの一時停止は「テーブルから外れた」と述べ、セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は、FRBの政策はまだ十分に制限的ではなく、金利は5~7%まで引き上げる必要があるかもしれないと非常にタカ派のコメントを出し、カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁は、インフレ率を下げるためには労働市場の本格的な鈍化と経済の縮小が必要になるかもしれないと述べています。ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は、需要のバランスを取り戻すために中央銀行がどこまで金利を上げなければならないかは「未解決の問題」だとコメントしています。
 市場はFRBが12月の会合で50ベーシスポイントの利上げを実施すると予想していますが、CME FedWatch Toolからですと、来年の5月3日の会合後ではのFRB金利は5%-5.25%になると予想されており、従来の上限のコンセンサスが5%から5.25%に引き上げられてきています。いずれにせよ、10年債の金利は下げに転じているため、短期的にはいろいろ動きはあるかと思いますが、長期的には利下げに転じる方向で見ていきたいと思います。

米国経済

先週は、いくつもの経済指標が発表されています。景気の

11/15(火):生産者物価指数(PPI)
 10月生産者物価指数(PPI)(前年比)は8.0%と予想8.3%を下回りました。前回修正値は8.4%(修正前8.5%)でした。
先週のCPIに引き続き、インフレのピークアウトを思わせるような結果となっています。

11/16(水):小売売上高、設備稼働率、鉱工業生産指数
 小売売上高(前月比)は、1.3%と予想1.0%を上回りました。前回値は0.0%でした。
 ガソリンスタンドが17.8%、飲食店が14.1%と人々が移動しておりかつサービスにお金を使っていることがわかる結果となっています。

11/17(木):住宅建築許可件数、住宅着工件数、新規失業保険申請件数
 住宅建築許可件数は1,526千件と予想1512千件を上回りました。前回値は1,564千件でした。
 住宅着工件数は、1,425千件と予想1,410千件を上回りました。前回修正値は1,488千件(修正前1,439千件)でした。
 着工件数、許可件数ともにまだまだ下げてます。

 新規失業保険申請件数は22.2万件と予想22万件を上回りました。前回修正値は22.6万件(修正前22.5万件)でした。
 徐々に申請件数が増えてきてます。

11/18(金):中古住宅販売件数
 中古住宅販売件数は443万件と予想440万件を上回りました。前回値は470万件でした。
 住宅販売件数は前年比-5.9%となっています。住宅ローン金利が上昇したことにより、住宅購入者は減ってきているようですが、在庫状況は引き続き厳しいようです。一部の売り出し物件に対して複数の問い合わせが引き続きあるとのことです。住宅価格の中央値は$379,100と128ヶ月連続の上昇となっています。

株式

 先週までにS&P500種構成企業の約94%が第3四半期の決算報告を終えています。これらの企業のうち、69%が予想を上回る実績EPSを発表しており、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っている状況です。EPSの結果としては、予想を1.8%上回る結果となっており、これは5年平均の8.7%、10年平均の6.5%を大きく下回っている状況です。仮に1.8%が今期の最終的な予想値であれば、過去9年間で2番目に低い値となります。第3四半期のブレンデッド(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定を合わせたもの)EPS成長率は2.2%と、9月30日時点の予想2.6%を下回っています。このままの実績ですと2020年第3四半期(-5.7%)以来の低水準となります。
 売上に関しては、S&P 500種構成企業の71%が実際の売上を予想を上回って報告しており、これは5年平均の69%および10年平均の62%を上回っています。第3四半期のブレンド売上成長率は、9月30日の売上成長率予想8.7%に対し、10.8%となっています。このまま大きな崩れがなく終えた場合、7四半期連続で10%を超える売上成長率となります。
 今後の見通しとして、アナリストは、2022年第4四半期は-2.1%の減益、CY2022年は5.2%の増益を予想しています。2023 年第 1 四半期は 1.6%、第 2 四半期は 0.9%の増益を見込んでいます。CY2023については、アナリストは5.7%の利益成長を予測しています。
 フォワード12ヶ月PERは17.2であり、5年平均(18.5)を下回っていますが、10年平均(17.1)を上回っている状況です。
 来週は、S&P500種構成企業のうち10社が第3四半期決算を発表する予定です。

来週の主な決算発表(予定)

11/21(月):
<寄付き前>JM Smucker (SJM)
<引け後>Dell (DELL), Urban Outfitters (URBN), Zoom Video (ZM)
11/22(火):
<寄付き前>Abercrombie & Fitch (ANF), American Eagle (AEO), Analog Devices (ADI), Best Buy (BBY), Dick's Sporting Goods (DKS), Dollar Tree (DLTR), Dycom (DY), Jack in the Box (JACK), Warner Music Group (WMG).
<引け後>Autodesk (ADSK), Guess? (GES), HP (HP), Nordstrom (JWN)
11/23(水):
<寄付き前>Deere (DE)
<引け後>
11/24(木):感謝祭
11/25(金):短縮取引日
<寄付き前>
<引け後>

米国の主な経済指標

11/21(月):
11/22(火):
11/23(水):耐久財受注(前月比)(速報)、新規失業保険申請件数、新築住宅販売件数
11/24(木):感謝祭のため祝日
11/25(金):

今週の着目点

 今週は感謝祭の祝日があり、ブラックフライデーとサイバーマンデーが行われ、年末商戦に突入します。株式市場は11月24日(木)は休場となり、翌日の25日(金)は午後1時(米国東部時間)に終了しますのでご留意ください。
 今週は、11月22日(火)にも小売企業の決算が控えている。先週はTargetが予想より弱いガイダンスを発表したりしており、今週の決算発表では、今後のブラックフライデーとサイバーマンデーのショッピングの動向を占うコメントが出ることになると思われます。10月の小売売上高からすると、BBY(ベスト・バイ)の結果に注目しておいたほうが良いかもしれません。ゲーム市場の見通しや、スマートフォンの取り扱いに苦戦しているのかどうかに関心が集まると思います。また、デルが発表するPCの在庫水準に関するコメントも注目されます。小売企業の決算が一段落したところで、改めて在庫水準について見てみたいと思います。2023年に向けての過剰在庫に関する懸念は依然として残っており、先週の小売のカンファレンスコールでも質問が出ていました。
 今回の感謝際は、コロナ後ということでここ数年で最も多くの人が動く祝日となるため、前日の23日は例年通りですと取引量が減少することが予想されます。ただ、経済統計データもいくつか発表されますので、12月のFOMCを予想していくうえでしっかりと確認していきたいです。

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