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狂月(kyogetsu)【詩】


狂った人たちが
狂った月を抱えてさまよい歩く
暗い夜道を歩くには
月の明かりは格好のらんぷ
ほの明るい灯火が
進むべき道を照らし出す
ただ曖昧にただ静かに
そのあおじろい光に狂人たちは感謝する

だが
狂人たちは空を仰ぎ見て
はっと我に返る
夜空がこんなに暗いのは
よくよく考えてみれば
俺たちが持ってるこのらんぷのせいじゃないか
そうか
足下を覆う深い闇も
もとはと言えば俺たちのせいか

狂人たちは
あわてて月を夜空へ放り投げた
だが
月は相変わらず狂ったままだったので
空にぶち当たると
粉々の光の欠片に砕けて地上に落ちてきた
きらきら淡い夜光虫のあおいろ
降り注いで
地上では狼人間たちが
歓喜の遠吠えを上げた


殺戮の夜がはじまるからだ

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