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狼人間の挽歌 覚醒【詩】

気がつけば
そこに
狼人間はいなかった

舞い落ちる花弁に
囲まれて
私は独り

桜の花弁も
いつしか雪の欠片へと姿を変え
私はようやく
それが
狂った月のしわざであったことを知る

月に狂った私の眼は
そこに桜の花弁を見ていた

思わず見上げた冬空には
すでに月の姿はなく
ただ分厚い雲に覆われた
天蓋だけが広がっていた

きっと
雲の向こう側では
血のように赤い月が
歪んだ笑いを見せているだろう

今はただ雪だけが

私は
街灯をたよりに
鞄の中をあらためる

生首はなかった
代わりに鞄いっぱいに詰め込まれた
薔薇の花弁
血のように赤い薔薇薔薇の花弁

恐る恐る両の手を差し入れ
掌一杯に
血の塊を掬い上げ
撒き散らす

骨のように白く染まった地面の上で
撒かれた薔薇は
夜目にも
はっきりと紅く映る
血のように紅く

おそらくこの地下に
犠牲者の骨など一欠片もないだろう
私は何故か
それを強く確信すると
公園を後にした

どこかで狼の遠吠えがした

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