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大宇宙大食い選手権【SFコント】

実況
「さあ,「第7003回銀河TVチャンピオン杯無差別大食い選手権」,決勝戦も残り時間59分となり,1時間を切りました。実況は私城田。解説は「ダジャレが地球を救う。ダジャレを言いながらの大食いなら俺にまかせろ」でお馴染み,大食いファイターのマキシマム赤坂さんでお送りしています。制限時間の3時間以内に,どれだけの自動車を食せるか…おっとここでチャンピオン,外しておいたタイヤをテーブルに並べ出しました。解説の赤坂さん,これはどういうことでしょうか?」
解説
「これね,今回の食材,自動車やないですか。これ大食いで自動車やったことある選手なら誰でも経験あるんですけどね,タイヤのゴムってかなりえぐみが強いんですよ。素材が比較的柔らかいわけですよ。行けそうって思うじゃないですか」
実況
「はい。タイヤですからね。食べやすいかと…」
解説
「そこが素人さんの陥りがちな勘違いというかね,まあ食べるのに苦労しますよ。意外に噛み応えあるしね。味はまずいし,まあタイヤだけにここでリタイヤ…」
実況
「おっと,挑戦者は抜いておいたガソリンを一気飲みしている!赤坂さん?」
解説
「出ましたね…挑戦者得意の内蔵オイルコーティングですわ。これね,機械部品て凸凹激しいでしょ。飲み込みにくいの。ひっかかるしね。それを油で滑りやすくしてからの一気にインです。さあこの後部品バクバクいきますよ。チャンピオンには悪夢じゃないですか,バクだ…」
実況
「ここで現場を呼んでみましょう
リポーター
「城田さん,こちら現場リポーターの鈴木でえす」
実況
「はいはい。現場リポートは,昨年惜しまれつつも引退された初代大食いチャンピオンのブラックホール鈴木さんです。鈴木さん現場の様子いかがですか?」
リポーター
「はい,現場はたいへんな盛り上がりでえす。3時間の試合時間ですが,あっという間に2時間が経ったという感じですね。ここまでチャンピオン,挑戦者ともに3台の自動車を食しており,現在4台目と互角の戦いを繰り広げておりまあす」
実況
「ありがとうございました。現場リポートの鈴木さんでした。さて,実況赤坂さん,戦況互角とのことでしたが,赤坂さんこの試合どうなると予想されますでしょうか」
解説
「そうですね。チャンピオンはここ3年の,国内で開催された大会のほとんどを優勝しているんですね。」
実況
「ええと,チャンピオン,12試合中11試合優勝と抜群の戦績を誇ってますね。いずれも,エアコン,テレビ,冷蔵庫などの電化製品で勝利を決めています。ただ唯一の敗戦が…」
解説
「そうなんです。バイクで黒星。チャンピオンね,どうもタイヤのゴムの食感がだめなんですわ。さっきも言うたけど,皆ゴムはね,やりにくいもんなんだけど,特にチャンピオンはね相性悪いの。さっき3台いけてる言うてたでしょ。でもよく見てください。」
実況
「ああ…確かに。チャンピオン,それまでの自動車3台のタイヤのゴム部分だけは,いまだ手付かずですね。他の部品は全てお腹の中ですが…対して挑戦者は,タイヤは全て完食ですね。
解説
「そうなんです。この敗因になってるタイヤをね,何とか克服せんとね,まあタイヤだけにリタ…」
実況
「おおっと,挑戦者,口から火を吐いている!挑戦者口から火を吐きながらのたうち回っております。赤坂さん?」
解説
「やってもうたね。さっきのオイルコーティングで,一気にガソリン流し込んだでしょ。あれ何で皆やらんか言うとね,部品がどんどん入るのはいいんやけどね,中で部品同士が接触して,稀に発火する場合があるわけですよ。そしたらどうなると思う?」
実況
「ああ,なるほど。お腹の中は灼熱地獄ですね」
解説
「だから,皆,食べやすい,分かっててもなかなかできん技なわけですよ。まあ挑戦者かなりのギャンブラーということやね。まあ今回賭けに失敗して,お腹の中が火のくる…」
実況
「ああっと,挑戦者立ち上がった!口から吐いていた火は,黒い煙に変わっております」
解説
「どうやら,お腹ん中で消火できたみたいやね。部品消化して消火…」
実況
「ここでチャンピオン,対戦者のピンチには目もくれず,タイヤを細切れにしています。ちぎっては丸めちぎっては丸め,赤坂さんこれはどういうことでしょうか?」
解説
「これは…分からんねえ。もう時間的にも後がないでしょ。ここで小細工してる場合ちゃうと思うんやけどねぇ」
実況
「百戦錬磨の赤坂さんでも予想のつかない展開となっております。さあ,お腹の中の炎もなんとか消火でき,ついでに部品も消化できた様子の挑戦者,一気に残りの部品を片付けようと口に運んでいきます!今,ブレーキペダルですか,入っていきました」
解説
「いや,これはブレーキだけにもう止まらんのと…」
実況
「おっと,さらにアクセルペダルもいったあ!」
解説
「こりゃ,アクセルでいきお…」
実況
「さあ,怒濤の勢いで挑戦者が部品を口に運んでいきます。さあ大ピンチのチャンピオン,いまだにタイヤを細切れ処理中だ!さあチャンピオンに起死回生のチャンスは訪れるのでしょうか」
リポーター
「城田さん。現場の鈴木でえす」
実況
「はい鈴木さん?現場の様子どうなってますか」
リポーター
「実は試合前なんですがあ,チャンピオンに今回の対戦について意気込みを聞いてましてえ,ここ最近唯一の黒星が乗り物だと,ここでまた乗り物で土を付けるわけにはいかんと,並々ならぬ決意語ってくれましたあ。そして,今回はタイヤ克服の秘策用意しているとのことでえす」
実況
「ありがとうございました。鈴木さんによりますと,どうやらこのタイヤこねこねは秘策,タイヤ克服の秘策ということのようです。」
解説
「あっ、わかったわ!」
実況
「はい?赤坂さん,どうされました?」
解説
「さっきから気になってたんやけど,このドラム缶に大量の牛乳に砂糖,茶葉,熱湯の持ち込み,謎が解けたわ」
実況
「ええっと,今大会のルールでは,味変,味を変えるための調味料およびそれに類する食材と,機材の持ち込みが許可されています。ただし,試合前に審判団の審査を受け,合格する必要がありますが,今回は申請通りの持ち込みが許可となっていますが…赤坂さん?どういうことでしょうか」
解説
「分からんのかいな。これ,ほら,若い女の子に大人気のあの飲み物やがな,ほれ,なんやったかいな…」
実況
「ああ,分かりました。これ,タピオカミルクティーですね。タピオカのかわりにタイヤを投入してのタイヤデミルクティーであります。なるほど,チャンピオン考えましたね!」
解説
「そうそう,タピオカやがな。もうこうなったらタイヤじゃないよね。はいこれ,黒いつぶつぶのタピオカですよお。甘い,いやうまいこと考えてますよお」
実況
「さあ,一気に形勢逆転です。チャンピオン,ドラム缶のミルクティーにタイヤのタピオカ投入しました。うまそうです。ごくごくいってまあす」
解説
「なんやチャンピオンが女子高生に見えてくるね」
実況
「女子高生はドラム缶でタピオカミルクティー飲みませんけどね。さあもう時間がありません。これを時間内に飲み干せるかどうかが勝敗の分水嶺となりそうです」
リポーター
「城田さん」
実況
「はいはい鈴木さん?現場の状況どうなってますか」
リポーター
「すごい戦いでえす。残り時間1分切っておりますが,ここまで挑戦者は自動車3台と車体1台を98%食しております。残りは,フロントガラスを残すのみとなっています。対するチャンピオンですが,自動車を車体4台食しております。ただし,全ての自動車のタイヤがまだ残っておりまして,タピオカミルクティーにして,現在これを飲み干そうとしているところです。こちらからは以上です」
実況
「ありがとうございました。さあ,いよいよこの長かった戦いもクライマックス!決着の時が迫っております」
解説
「これは…終わるまでどっちが勝つかちょっと分からんね」
実況
「ええっと,当たり前すぎてつっこむ気も失せますが,さあ後,10秒,9,8,7,6,5,4,3,2,1。終了!さあ,両者の長い戦いが今終わりを告げました。両者手を止めます。ただいまより審判団の審査が入ります。こちらからは互角に見えますが,赤坂さん?」
解説「いやあ,いい戦いやったわ。どっちが勝ってもおかしくない,いい展開でした。感動しました。ということで勝敗は分かりませんねえ,まあ,どちらもリタイヤしなくてよかった,タイ…」
実況
「おっと,どうやら審査が終了したようです。さあ,審判長が裁定を下します。果たして勝者は挑戦者か,それともチャンピオンの防衛なるか,注目です!」
審判
「勝者,チャンピオン!」
実況
「勝者はチャンピオン。防衛に成功です。3時間で4台の自動車を胃袋に納めての完勝です。弱点であるタイヤをタピオカという味変で克服し,見事自動車を完食,完勝しました。また敗れたとは言え挑戦者も」見事。途中胃の中でガソリンが発火するというアクシデントにもめげず,戦い抜きました。勝敗は結果ですが,その過程は永遠であります。あっ、今両者が8本の腕でがっちりと握手して,互いの健闘をたたえ合っております。実に美しい,大食いの友情がここに花開いております!」
解説
「いやあよかったよかった。こりゃ来年の大会も楽しみやね。大食いだけに来年も見んと悔いが…」
実況
「ご覧頂きました,「第7003回銀河TVチャンピオン杯無差別大食い選手権」決勝戦,ここ火星地下ドームより,実況城田,解説マキシマム赤坂さんでお送りしました。それではまた,来年の大会で会いましょう。さようなら!」

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