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光の正体【藤井風 日産スタジアムライブ】

発光する風さん

2024年8月25日、広大な日産スタジアムの北サイドスタンド、見通しのいい端っこの席に座っていた。朝からあんなに暑かったのに、時折、涼しい風が吹いて、「ああ、風さんのライブが始まるんだな」と、妙に納得していた。

スタジアムのどこかで悲鳴が上がり、風さんが登場。前日のYouTube配信で予習済みだったので「おっ、今日は道を間違えないでね」なんて余裕をかましていたら、遠くのスタンド席に何やら明るく光る場所が見え、その光が芝生に向かって移動していた。

ご本人、本当に客席に座っていた。前日は前撮りだったのに、変えてきた。いつも、こちらの予想をはるかに超えてくるのが、チーム風だ。

ライブ後に、たくさんの人がSNSで発信していた。風さんが発光していたと。透き通るように輝いていたと。

実際、それは事実で、遠かったのにもかかわらず、スタンド席から芝生に降りていく間中、光の塊はずっと認識できた。照明のせいかとも考えたけれど、まだ陽は完全に落ちておらず自然光の中だったし、スポットライトのように目にささるようなまぶしさは感じなかった。まさしく、発光しているように見えたのだ。

ふぁっさー風

ふと、ある考えが浮かんだ。
「私たちが向けた光が、反射している…のかな…?」

みんな風さんが大好きで、その愛やら気持ちやら、ステキな何かが、目の前にいる風さんに届いて(きっと距離は関係ない)、それがそのまま反射していると感じたのだ。

風さんが放っている光は、風さんが私たちに向けた愛と、私たちファンが風さんに向けた愛やら気もちやら、何かステキなものがやさしく交じり合って、あんなにキレイに、透明に輝いた光なんだと。

風さんがいつか言っていた言葉を、まさに体験させられた瞬間だった。

If I look so cute,
(わしがカッコよく見えるなら)
it's because you're so cute.
(それはあなたがステキだから)
I'm just a mirror.
(わしはただの鏡じゃけん)

ライブ後にあげてくれたインスタにあった「みんなの一部になれた」というのも、そういうことなのだろう。

みんなの一部、大地の一部、全ての一部になれました。それはとっても夏で、とっても青春で、とってもfeelin’ go(o)d でした。心底から愛してます。

7万人でも、10人でも

日本最大規模のスタジアムライブ。たった一人でピアノと向き合った2021年、スタジアムを埋め尽くす7万人のファンを集めた2024年。この成長っぷりは、ずっずさんも当時からのファンも、手が痛くなるほど拍手して、ほめたたえたい結果だ。

でも風さんはいつも通り、ぶれない軸にふわぁっ~とやわらかい空気をまとって、舞台に立っていた。
7万人も10人も、日産スタジアムも里庄町の盆踊りも、まったく区別することなく。

たいていの人は、人数が多いからスゴイ、広いからスゴイ、と鼻息を荒くしてことに挑むものだけど、その気合いは空回りしてしまうことも少なくない。

でも風さんに、力みはない。

来てくれた人、見てくれている人、目の前にいなくても見たいと思ってくれている人に、ただ、今できる最高の音楽を届けるだけ、とシンプルに研ぎ澄ませていた姿だった。

言葉にしなくてもその雰囲気はちゃんと伝わって、「風さんのライブは心地いい」「ふわっと笑顔になってしまう」なんて感想につながる。

僕は君だよ、みんな一つでしょ

ステージで光り輝く風さんは、本当に美しかった。
かっこいいとか、イケメンとか、そういうのを取り越して、神聖で、性別を通り越して、え、人?と思ってしまうくらい、なにか尊い光の塊だった。 

凄まじい才能、まごうことなき天才、天は二物どころかいくつ彼に与えたんだ!
風さんの歌や人間性に触れると、だれもが感じずにはいられない、そんな賞賛や感嘆の思い。
風さんの歌を聴いて、姿を見て、幸せを感じて、多くのものを与えてもらっているな、とありがたく思う。

そして、風さんを神様か仏様か、天使かサラスヴァティーか、と見あげてしまうかもしれない。

けれど、風さんは『ロンリーラプソディ』のなかでこう歌う。「僕は君だよ。みんな一つでしょ」と。

そこで、がんばって視線を変えてみる。風さんと同じ視点に立ってみる。すると見えてくる、わかってくる。
風さんの音楽に出会えて心からよかったと私たちが思っているとき、同時に風さんも、7万人というとんでもない数のファンの愛を一身に受けるという体験をしている。

風さんの音楽で、ファンそれぞれの欠けが満たされているとき、私たちのとてつもなく大きな愛で、風さんの“誰かがちょっといい気分で人生を送れたりするために音楽やっとるようなもん”という願いが満たされている。

私たちファンは、風さんに与えてもらっているばかりじゃなくて、風さんを満たす光のひとつになっているんだ。
そう気づいたら、泣きそうになっていた。

僕は君だよ
何も違わないよ
みんな一人でしょ
みんな一つでしょ

みんな一人だけど、だから手をつなげるんでしょ。


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