人生初の歌舞伎が刀剣乱舞歌舞伎で良かった
まあそこそこの年齢になりますが、歌舞伎というものを「テレビと映画館でやってるもの」以上に知らないまま飛び込んできた「刀剣乱舞が歌舞伎で上演」のニュース。
テレビでナウシカ歌舞伎は見たし歌舞伎役者のすごさはテレビや映画で知ってるし、なんかすげぇんだろうなと思いつつ前のめりになってる妹に「行く?チケット取る?」とLINEし、「人生初の歌舞伎」を見に行く流れとなりました。
歌舞伎ってあれでしょ?坂東玉三郎とか市川海老蔵とか中村勘九郎とかが見栄を切って白塗りでなんかすごいやつ、という雑な認識では申し訳ないなとたまたまEテレで放送された「平成中村座の天守物語」を見たりしつつチケット発券して(ゲーム先行でした)まぁいくらなんでも心得くらいは把握しとくかーと中村右介氏著「歌舞伎一年生」を読んでおいて歌舞伎ってそういう世界なんだーと予習しつつの上京。
七月七日昼、歌舞伎「刀剣乱舞」を見物いたしました。
歌舞伎は見たことないけど刀剣乱舞は初日からのユーザーで日本史大好き、新橋演舞場にでかでかとある「刀剣乱舞」の文字にわくわくしながら演舞場に入りました。チケット片手に入った瞬間から「と、刀剣乱舞!!!」で、専用劇場の素晴らしさを堪能。
妹はグッズ、私は弁当と分散し難なくグッズも弁当もゲットし、11列目からの見物。分からない事だらけだからと借りたイヤホンガイドはめちゃくちゃ親切。板の上で舞うときの袖の意味や扇の意味などの所作の「意味」も「誰が何を演じていて屋号の紹介までと「刀剣乱舞は知ってるけど歌舞伎ってしらなーい」という人にはとてもありがたかったです。
歌詞が先行して読み上げられて「これはこう言う意味です」って解説はいるので目も耳も脳も忙しいけど。
ストーリーは「永禄の変」ということ以外は入れずに初見(=自分)の新鮮な悲鳴を大切にしつつ「歌舞伎ってすっげえ!!!」と思いながら新橋演舞場をあとにしました。
「あと三回くらいは見たい」と思いながら松竹のサイトを見てたら花道近くが空いてる日程の公演を見つけ……
7月25日公演を追いチケしました。
1回目より明らかにレベルが上がっている台詞回し、立ち回り、舞、音曲。ストーリーを理解した目は「あ、こういうことか」「このときはこういう気持ちだったのでは」と考えながらじっくり見ることができました。2.5次元、宝塚、劇団四季など様々な舞台は年に5,6回は見てますが、公演初旬と下旬を見るのは初めてかも。どんどん進化する舞台を目の当たりにできて「すごい」としか言えませんでした。
そして、歌舞伎は何百年も続いた「伝統と格式のある娯楽」だと実感しました。
カテコの写真撮影タイム、撮影もだけど初心者たちに一斉に「大向こう」の体験をさせてくれる上に「歌舞伎刀剣乱舞」の画像というアーカイブまで残せて最高ですね。
「○○屋はこう」「新作ならこう」「客はこういう服」など、いろいろなしがらみはあれども「○○は歌舞伎の○○って演目に出てくる」という知識はやたらある審神者(さにわ)に向けて「文章ではそう表現されてますが実際はこうですよ」と見せてくれる。とても素晴らしい「体験」でした。
まさか同田貫のオリジナルグッズをめぐって武彦さんとジャンケン大会をするとは思ってなかった…
開演前から「さにわの皆様、準備はよろしゅうございますか?」と会場を温めて寄り添ってくれる押彦さんと武彦さん、「狐火の模様の着物」をまとった歌舞伎本丸のナビゲーターであり連絡係であり、まさに「歌舞伎とさにわの間を取り持つ」役割を終始担っておられて「歌舞伎って、もしかして、敷居低い?」と思わせていただきました。
話題になった花道撮影タイム、7日公演より25日公演の方が明らかに「SNS映え」を理解され、「その場にいる人たちを沸かせる」演出としてこれ以上ないほど楽しく幸せなひとときできた。時間遡行軍をJAEというアクションのプロが担っておられるので「花道をバク転」「手押し車からの倒立」「倒立歩行からのバク転」など、アクロバットパフォーマンスショーとなっていて「アクションが目の前で見られた!」と、小学生みたいな目で見てました。
客席降りの演出はずっと時間遡行軍だったので「時間遡行軍に取り囲まれる庶民や審神者」の気分を味わえました。まさに舞台と客席が一体となるよう、演出やアンサンブルの皆様が努力なさったおかげだと思います。
そして刀剣男士たち。
「歌舞伎という枠と原作という枠を大事にして生み出された刀剣男士の造形」の見事さ。歌舞伎という長年続いたエンタメの懐の深さを感じました。見たことのない姿だけど「分かる」の、本当にすごい。声も所作も全然違うのに、何百年もこういうスタンスで振る舞ってましたけど?って言われたら「そうだったね」と納得する説得力。
そして「歌舞伎」の世界観を表現する、中村梅玉丈をはじめとする重鎮界隈の皆様。「歌舞伎というのはこういう世界ですよお嬢様方」と紹介されたような気分でした。
令和にもなれば「いやいや、ばかじゃねぇの」と思うような脚本を、歌舞伎という板の上では演じられると、時間も空間も倫理も超えた非日常。「ああ、そうだよね、分かる分かる」と思いながら大義のために命をなげうつ「歌舞伎あるある」の世界を馬鹿にすることも冷静になることもなく、「そんな…でも…すばらしい…」と涙ぐみながら堪能することができました。
今後、我々刀剣乱舞歌舞伎を見た「さにわ様」は江戸の倫理観で話が進んでも「あーでも刀剣乱舞歌舞伎でやってたもんなー」と受け入れられることでしょう。あり得ないような忠義も、華麗な衣装も、現代の照明設備ではバカ殿のように滑稽にすら思えるドーランも、我々の目には「美」と写るようになりました。
今後、古典歌舞伎や他の歌舞伎を見るかどうかは分かりませんが、テレビで歌舞伎役者を見ると「あの時新橋にいた人かな?」と身を乗り出すし、松竹が出してくる公演情報は気になるし、新作刀剣乱舞歌舞伎がかかればまた江戸に赴くことでしょう。
東京のエンタメではなく、江戸の娯楽に我々は赴いたのですね。
初めての歌舞伎が「刀剣乱舞」で良かった。そう思えた2023年7月でした。審神者として刀剣男士たちが歌舞伎の板の上に立つことを願うし、上方の者として「京都か大阪でやってくれないかな?」と思うし、2.5次元を見る者として「アクスタは全員に行き渡るようにして!!お土産になるようなもの頂戴!!ランダムは悪い文明!!」と思う。
すべてを受け入れる懐が歌舞伎にあると分かったので、楽しみにしながらブロマイドとアクスタを棺桶に入れて欲しいと注文しながら、次の舞台を楽しみにしたいと思います。
で、次はいつ誰が主演で行われます?当然円盤とサントラもありますよね?
夢と経済を回しつつ、次の「歌舞伎刀剣乱舞」楽しみにしております。
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