作家が読んだ、作家の本。『家宅の人』(檀一雄)
小説家は布団から這いでると、
まずビールの小瓶を手にする。
唇の泡をぬぐい、ひとごこちつけば、
おもむろに買い物かごを腕へひっかけ市場へ繰りだす。
作家は分厚いメガネの奥を炯々とひからせ、
食材えらびに熱中、帰宅と同時に
盛大なる精力をもって料理にとりかかる――。
壇の代表作『火宅の人』を読み返した。
本屋をそぞろ歩きしている際に彼の料理エッセイを手にとり、文体の明るさテンポの良さを再発見、これはたいへんな作家だと認識を新たにした次第。
家に戻るや、おっとり刀で彼の遺作の