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シリーズ北海道1.旭川②博物館(後編)

旭川の博物館について後編。
前編では、旭山動物園、北海道立美術館、川村カ子ト記念館について書いた。
後編では、旭川市科学館(サイパル)、北邦野草園、旭川市博物館、おまけで上野ファームと北鎮記念館について書く。


・旭川市科学館(サイパル)

内側の入口。

日曜日に訪ねたこともあり、子どもたちがいっぱいいて良かった。ボランティアのおじいさんもたくさんいて、子どもの科学への興味を育むという意味でも、高齢の方々への生涯学習にも良い。
旭川市青少年科学館から旭川市科学館と数年前に名称を変え、子どもだけではなく大人にも楽しんでもらえる施設にしようという意識はあるそうだが、内容は「子どもお天気ニュース」など子ども向けのものがあったり(見たけど。わかりやすかったけど。)、わたし以外の若者の来館者をほとんど見かけなかったり、なかなか難しそうだなぁと感じた。でも、付き添いの大人たちが楽しそうに参加していたのでそこから広がれば良い…?広がっていくかな…?
愛称のサイパルは、サイエンスパレット(様々な科学の彩りに出会える「パレット」のイメージ)の略で、サイエンス(科学)とパル(友達)の組み合わせで「科学仲間」の意味もあるらしい。

あと、イベントとしてドローン操縦体験をしていたのも良かった!やってみたかったなぁ。ひとりで受付しに行くの恥ずかしくてやめた。強いメンタルが欲しい。

良い天気だったし、楽しそうだった。



・北邦野草園、アイヌ文化の森・伝承のコタン
嵐山という地区にある。この地はアイヌ語ではチノミシリといい、祈りの山として神聖な土地であったらしい。
今は野草園の名で、森の中で植物が育てられている。

旭川での生活が終わりに近づいて、慌てて行ったので、気持ちが追い付いておらず、とりあえず来たは良いものの、ベンチに座り込む。そのベンチが良かった。森の中、わたし以外いない。木漏れ日のなか、息を深く吸い込むことで回復した。めちゃくちゃ気持ちの良いところで、早く訪れなかったことを後悔しながら、歩き出す。ショートコースとロングコースがあり、ロングコースを看板の番号を頼りに進む。

森の中の野草園
2時間コースをさくさく進む。

一周回ったところで、山の上に展望台があるようなので、そこまで登ってみることにした。
こんな山登りと思っていなくてクマにおびえながら、展望台まで登った。旭川が盆地であることがよくわかる。

展望良し。
看板と照らし合わせて楽しむ。


麓にセンターがあり、展望台で手入れをしていたおじいちゃんたちが帰って来ていた。みな、展示をみているわたしに愛想良く挨拶してくれる。
朝ドラ「らんまん」の展示もあった。牧野富太郎先生好きとしては嬉しい。

少々文章には違和感あり。先生、一人称「わし」なん??


また、アイヌを植物とからめた展示があって良かった。アイヌにとっても大事な場所であることを伝えながら、これからも森を守り続けて欲しい。

アイヌ伝統のオオウバユリをまとめて乾燥させたやつ。
考古遺物もある。


北邦野草園のとなりには、アイヌ文化の森・伝承のコタンがある。
アイヌ民族の住居であるチセや、食料貯蔵庫であるプがある。

なかなか大きい。
プ。高床式。写真、ぶれております。

写真を撮り損ねたが、男女別のトイレも建てられていた。これらは、笹で作られており、この地域のアイヌの特色である。

https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/hakubutukan/navi/d053250.html


・旭川市博物館
これまた帰る前週に、一応行っとくか、と訪れたのだが、はちゃめちゃに良かった。旭川に行く人は行った方が良いってくらい楽しかった。
なぜか資料館的なものを想像していて、歴史的なものが並べられているだけだと思っていたのだが、全然違った。

良い天気だった。

フロアが2階分あり、ざっくりとアイヌの歴史のフロアと旭川の考古学、自然、地理のフロアである。
ここがめちゃくちゃ良い!!というよりも、全体的にしっかりと工夫された展示をしていて、全部がプラス評価、という感じ。とても満足した。
知識的にも、モンゴルや中国などの大陸との関りについてはじめて知ることがあり、良かった。

入口からみていく。

四季折々の旭川の風景を壁面いっぱいに。

まずは象徴展示からはじまる。ここでもう、来て良かった、良い展示だと確信する。
アイヌをあらわす象徴的なモノが円筒状の透明な枠で覆われている。この空間は、天井からたらされた白い紐で区切られている。
アイヌをあらわす象徴的なモノとは、イワㇰテである。イワㇰテとは、モノを神の国へ送る儀式のことだそうだ。数日前に訪れた嵐山という土地がアイヌにとって神聖な山であったということは前述したが、その嵐山で見つかった祭事の道具として子どものためのおもちゃ(メリーゴーランド)が展示されている。嵐山が近代においてもアイヌの人たちにとって神聖な山であり、かつ儀式が引き継がれていることがわかる。

イワㇰテの展示

イワㇰテやこの展示についてもっとよく知りたい方には、博物館のホームページに歴史学習シートがアップロードされているので、それをみて欲しい。
旭川市博物館歴史学習シート | 旭川市 (city.asahikawa.hokkaido.jp)
イワㇰテだけでなく他の展示についても展示場に印刷されたシートが置かれているので、興味をもったものを持って帰ることができる。博物館は学習施設であるので、学びにつなげる工夫のひとつとして好感が持てる。ちなみに、地学のシートも充実していた。

象徴展示が終わると、生活についての展示がはじまる。
チセ以前の竪穴住居や、石包丁なら貝包丁など、北国の古代の生活の様子からはじまり、アイヌの生活について展示されている。

チセの展示もされている。チセの展示はよくあるが、旭川市博物館の展示はひと工夫加えられていた。
チセの中に入ると、靴を脱いで奥に入るように誘導される。うす暗いなか入っていくと、ぼやぁと明かりがつき、ユカラが流れる。ユカラはアイヌの叙事詩の総称である。おばあちゃんが語りかけてくれる。もちろんわたしにアイヌ語はわからないので、音楽のように聴くだけだ。わからないながら、耳を傾ける。このような語りが録音とはいえ残っている幸運と、かつて残そうとした人々の気持ちを思う。

時代が進み、「アイヌと大モンゴルの戦い」というコーナーに入る。先にも述べたように、アイヌとモンゴルとの関係を知らなかったので、大変興味深かった。そりゃあ本州と同じくらいの距離に大陸があるのだから、関係がないわけがない。しかも、アイヌは樺太にもいたのだから、より深い関係があっただろう。
アイヌと和人の話になると、和人の卑劣な戦い方によってアイヌが理不尽な目に合うが、モンゴルとアイヌの話では、アイヌが大陸でやりたい放題するもんだから、大モンゴル帝国がいっちょ懲らしめたらんと、と出張ってくるというのが意外で面白かった。

アイヌとモンゴルの関係、知らなかったなぁ。


アイヌを含む北方民族の装飾品の展示も良かった。これはもう、モノが素敵なので、実質美術館。

日常着も美しい。環境の違いによる素材の違いが面白い。
おしゃれじゃん。つけたい。
皮への刺繍。
模様も色使いも素敵。
北方民族の刺繍の似ていることよ。
これ欲しい。
これも欲しい。
あ~、選べない~。


続きまして、アイヌの神謡についてのコーナーへ。
知里幸恵さんと「アイヌ神謡集」について説明が書かれている。

良いでかパネルだ。

知里幸恵さんの自筆ノートをしっかりした素材に印字して、各々好きにみることができるようにしてくれていた。

左側がアイヌ語をローマ字で表記したもので、右側が和訳したもの。


続いて、現代に生きるアイヌの展示コーナーがある。近代の悲劇的な歴史の中でも、アイヌの魂を受け継ぎ、未来につないでいく努力をした人々がいて、その結果としての今を伝統工芸品や音楽、映像によって展示されている。
この展示でアイヌについての展示は終わりだが、休憩室には、アイヌ語のラジオ講座やアイヌについての施設のポスターが貼ってあり、失われた民族、文化にしてしまわないように、わたしたちはできることをしていかないといけない、いや、させない、という思いが伝わってきた。

以上、アイヌの展示だけで十分満足するクオリティの展示だったが、まだあと1フロアある。続いて、旭川の考古学、自然、地理のフロアだ。階段で下に降りる。

向かって左側が考古学、真ん中が自然、地理で、右側が開拓以降の歴史について展示されている。
ここからは写真とともに、展示の方法についてを中心に述べる。展示方法の工夫をみるのが大好物なんですよ。
まず、考古コーナーでは、模型のニッチさがすごかった。あんまりこういう模型みたことがない。縄文時代に詳しくないだけかもしれないが、古代、北方ではこのような埋葬方法がとられていたのだとわかりやすく知ることができた。

なんじゃこりゃあ。
上部に実際の遺跡の写真がパネル展示されている。考古学って面白い。


開拓以降の歴史は、開拓のために人々が移り住んで、工夫がこらされた生活を送っていた様が展示されている。

これがあの!ほんまに下駄にスケート合体させてるだけ!!


近代日本のおもちゃと同じだが、パネルの説明文に、開拓地の子どもは仕事が優先され、仕事の合間に遊んでいると書かれている。楽しげな配置がされていてグッド。
「列車住宅」の模型。これは、大阪くらしの今昔館の展示でもみたことがあるので、高度成長期の日本あるあるかもしれない。


そして、真ん中の自然、地理についてのコーナーである。ここがすごかった。正直、なめてた。これは展示に力入れている学芸さんだともうわかっちゃう、わたしクラスになると。
剥製の展示のクオリティがえげつない。生きてる感があるの。わたしの写真で伝わるだろうか。

えさを見つめているカワセミ(にしか見えなくない?!)
宮崎駿の『きみたちはどう生きるか』で話題のアオサギ。映画もちょうど旭川にいるときに観た。
い、いきてる〜〜〜!!
今にも飛び立ちそう。羽の音聞こえる。
きゅるん。

は〜、すごかった…。わたしは歴史系のことに興味があって、あんまり自然系の博物館には行かないのだが、とても良かったと思う。剥製以外も良かった。
ちなみに、植物標本も良かった。

高山植物の女王·コマクサ


歴史や文化、地理自然と、旭川の全てを網羅した素晴らしい展示だった。博物館はかくたるべし、という姿を見せてもらいました。



~おまけ~
・上野ファーム
映える観賞用庭園。博物館とは言えないので、おまけで。
天気が良く、気持ちよかったし、リフレッシュした。たまには女の子と写真映えするところできゃっきゃするのも良い。カウチやらベンチやらくつろげる場所が用意されているので、森の中で体を横にできてとてもリラックスした。

入口から映えてテンションあがった。
看板も可愛い。
ちょうちょ発見。
シラカバの小道。
小高い丘から庭を眺める。


・北鎮記念館
行ってないので、おまけで。
恐れと尊敬を込めて北鎮部隊と呼ばれたという第七師団についての資料が展示されているらしい。
「ゴールデンカムイ」のファンならば行った方が良い。と思う。ファンだけど、ちょっとわたしは行けなかった。正直あんまり軍に興味ない。
でも、第七師団かぁ。しかも依頼したら現役の自衛隊員が展示解説してくれるらしい。たぶんこれした方が良い。
でも、一人で行って、一対一で解説はちょっときついなぁ。やめとこ!!!!!となった。友だちと旭川に来る機会があれば、行ってみたい。


おまけも含めて、わたしが旭川にいるあいだに行った文化施設は以上となる。北海道の中核都市として、満足のいくしっかりとした施設ばかりだった。
市の施設は割引がきくリンクリンクというサービスがあるので半券をとっておくと良い。50円引き程度だが。
わたしみたいに博物館に行くのが趣味の人間以外にも、観光がてら遊びに行って楽しいところばかりだと思うので、選択肢のひとつに加えてくれると嬉しい。



簡単なチャートを作ってみた。
めっちゃ読みにくいけど、良かったら。

旭川に観光に来た人用チャート(博物館)
各施設とだいたいの位置

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