カラヴァッジョ展@あべのハルカス美術館

カラヴァッジョ展に行ってきた。
行く前にホームページでちらりと予習した。
"光と闇の明暗を明確に分ける表現"が特徴の"17世紀バロック絵画の創始者"だそうだ。
カラヴァッジョの作品10点ほどと、あとはカラヴァッジョに影響を受けた画家の作品で展示を構成しているらしい。
カラヴァッジョ展と銘打っておきながら、10点ほどの作品数で満足のいくものができているのか、少し不安だったが、せっかく朝早く起きれたのだし、とハルカス美術館に向かった。

土曜の10時開館より30分ほど遅れて、美術館に到着した。
そんなに混んでないかなと楽観的にいたら、チケットのもぎりの人に、リュックを預けることを勧められて、どきりとした。
嘘、もう混んでる?と不安になりつつ、ガイドコーナーを抜けると、展示が始まった。
わたしはいつも、はじめに、のパネルをしっかり読む。展示の制作者がどんな意図を持って、何を感じてもらいたいのかわかっていた方が、観覧者としても展示を楽しみやすい。それに、単純にわくわくする。制作者の意欲を直接的なかたちでみることができるのは、はじめに、のパネルだけだ。

そんなに混んでいないことに、ほっとしながら、作品リストを手に、さて始まるぞと高揚してきたところで、「黒」の垂れ幕がかかっていることに気が付いた。
同時代の人によって書かれたカラヴァッジョに関する言葉たちだ。
まだカラヴァッジョについて全く知らないけど、なんだかかっこいいことが書かれている。
よし、今度こそ、見ていこう。

とはいえ、最初の導入部は、人が多くてほぼ通り過ぎてしまった。
カラヴァッジョの作品なかったし、映像での説明とかだったので。

始まる第一章。「1600年前後のローマにおけるカラヴァッジョと同時代の画家たち」というタイトルだ。
カラヴァッジョの作品と推測されている静物画が初めに展示されている。今展示唯一の静物画だ。静物画でもカラヴァッジョを感じるかっこよさだった。
だが、この章でのメインは「リュート弾き」だろう。
モデルの服やリュートを露出展示し、スイッチを押せばリュートの音を聞くこともできるような工夫もされていた。

また、カラヴァッジョの作品の背景は、目立つように赤の壁になっていた。カラヴァッジョの作品数の少なさを心配していたが、この工夫により、カラヴァッジョの作品は、他の画家の作品にまぎれることはない。
しかも、章ごとに色分けがされているため、時代の変遷や系列の違いが視覚的にはっきりとわかる。第二章は青、第三章は緑だった。

第二章は「カラヴァッジョと17世紀のナポリ画壇」で、このあたりからカラヴァッジョの画風がわかってきた。
カラヴァッジョの絵は黒い。基本的に背景が黒で塗りつぶされている。
あと、宗教画が多い。これはカラヴァッジョの画風ではなく、この時代以前のヨーロッパの絵画といえば宗教画なのだろう。
宗教画は知識がないと楽しめないので、わたしは苦手だったのだが、カラヴァッジョの絵は素人目にもかっこよかった。モチーフの意味がわからなくても、良い!かっこいい!と楽しめた。
しかも、宗教画の説明を解説してくれるパネルがあるのでわかりやすかった。説明もややこしくなく、平易に書かれている。
そんな中、「聖アガピトゥスの殉教」が良い!なんか良い!と思ったので、隣にある解説のキャプションを読むと、なんと首から血をぴゅーと噴き出してる絵とのことだった。画面が暗すぎて、どんな絵かはっきり分からずに良い!と思っていたが、解説読んで再度見ると、確かに首から血が噴き出していた…。そんな絵だったのね…。殉教者がモチーフということで、暗い意味を持つ絵ではない。

他にも、大阪展でのチラシに使われている「法悦のマグダラのマリア」も余白の使い方など素敵だった。
しかし、チラシの「赦したまえ。」の言葉の妙よ。
この言葉が付け加わることで、殺人を犯すという大罪を抱えたカラヴァッジョの心が作品とリンクする。

第三章は「カラヴァッジョ様式の拡がり」。
第一・二章でもカラヴァッジョに影響を受けた画家の作品は展示されていたが、第三章でその拡がりを示している。
個人的にはグエリエーリの「ロトと娘たち」が絵の良さもさることながら、モチーフのすさまじさにびっくりしてしまった。
ぱっと見て大作だと感じ、細部の書き方など好みの作品だったので、解説キャプションを読んだら…。子を生すために、父を酩酊させてるところだと…。すごいな、宗教画…。
人間の生を考えるなら、宗教は避けて通れないことに、確信を深めた。

最後はパネルでカラヴァッジョの作品を見ることができるイタリアの教会や美術館の紹介をしてくれていた。推しのためならどこへでも行くオタクへの優しい計らい。
結構オタクを意識してるのか、なんと作品リストの裏にも「カラヴァッジョがめぐったイタリア」と題してイタリアの地図とカラヴァッジョゆかりの地の説明があった。ヤマザキマリさん作のカラヴァッジョと共に。
そう、ヤマザキマリさんとのコラボも素敵だった。
展示にもマリ作カラヴァッジョが出てきて、気持ちを吐露してくれる。こんな風に思って、こう描いたんだ!みたいな。
好きか嫌いかは置いておいて、わかりやすさと新しさがあって良かった。

学芸員資格取得の勉強をしたときに、わかりやすく人に伝えるためにどんな工夫をしているかを見ることが好きになった。それ以来、博物館や美術館に行ったときは、展示の内容ももちろん重要だが、展示の仕方・工夫が気になってしまう。
その点、ハルカス美術館はいつも、展示の仕方が考え抜かれている。お金もかかっている。(内装がバロック様式風だった!)どれだけたくさんの人がこの展示のために力を尽くしたのだろう。
今回もたくさんの観覧者を楽しませる仕掛けがあって、大変満足した。
ありがとうございました。

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