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着物リフォームの歴史その1・いつ?(When)

さて、これからこの着物リフォームブームを解析してゆくわけですが、ここはビジネスのフレームワークである、5W1Hにのっとってご説明します。筆者は着物リフォームも小規模ながら、ひとつの経済事象であると考えます。単におばちゃんたちが集まって、古着をリサイクルしたという風にとらえず、なぜこれほどの現象が起こったかを考察しましょう。

今更ですが5W1Hとは、
いつ(When)
どこで(Where)
誰が(Who)
何を(What)
なぜ?(Why)
どのように(How) 
を指します。
客観的にこの事象を見るには、この説明が一番良いと思います。

いつ(When)

常に着物はスタイルを変えて着用する提案がなされてきました。広義には着物リフォームは、太平洋戦争後に大塚末子女史が提案した改良きものも含まれます。またデザイナーの森南海子女史が1980年以降に出版した、一連の手縫いの本もその提案一つであると位置づけられます。しかし、これらは一人のリーダーと読者もしくは賛同者という関係でした。

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大塚末子女史の紹介(婦人画報社・きもの入門 昭和49年)


日本全土を巻き込んだ着物リフォームブームは、その後に訪れました。筆者の記憶では1985年以降ではないかと思います。このブームは、洋裁のできる人や洋裁の少しできる人がこぞって着物をリフォームし、手持ちの着物がない人は業者から購入するというより大規模なものでした。

時系列でみるリフォームの歴史

1985年(昭和60年)は、大阪万博も終わり、着物そのもののブームには陰りが出始めた頃です。日本万国博覧会は、1970年に大阪府吹田市の千里丘陵で開催された国際博覧会です。まさに日本の経済規模の大きさを海外に誇る内容でした。東京オリンピック以降、押せ押せで進んできた日本経済も、さすがにゆるやかな下降をたどり始めます。

この時に50歳の方は、1935年(昭和10年)生まれで、60歳の方は1925年(昭和元年)生まれでです。こうした年代の方々が、リフォームブームの主力でした、戦前の生まれなので、嫁入り時の着物はたくさん持っています。持っているが着ることはない、ということでリフォームが始まったのではないかと思われます。

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リフォームで好まれた素材・紬です。

このブームは2010年頃まで続きました。2010年になると、この主力の方々は、昭和10年生まれなら75歳・元年なら85歳です。さすがに針を持ったりミシンをかけたりは難しくなってこられます。NPO法人京都古布保存会では、定期的にバザーを行って古い着物を販売していましたが、来られなくなるお客様も出てきました。こうしてブームは終焉に近づいてきたのです。また、加えて述べれば、より若い年代の方々がリフォームされた服を買うことはありませんでした。その理由などは以降の章で考察したいと思います。

また、この着物を洋服にリフォームするブームの前に、大きなパッチワークのブームがあったことも見逃せません。米国やヨーロッパで端切れの利用として普及したパッチワークは、日本に上陸すると一大潮流となり、単なる残り切れではなく、もっと目新しい素材が求められるようになりました。そこで人々が目をつけたのが、和の布(木綿・絹)です。この流れは洋服のリフォームより早く、1970年代には和の布がパッチワークとして利用されていたと思われます。

似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
(この原稿の著作権は昭和きもの愛好会に属します。無断転載を禁じます)

【関連記事】 着物リフォームの歴史その2・どこで?(Where)
https://note.com/showakimono/n/n29788d47c667/

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