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モスリンコレクションのできた経緯

ビーズバッグに引き続き、モスリンコレクションの出来上がったいきさつについて説明します。

1 モスリンは虫に食べられやすい

「モスリンは虫に食べられやすい」は着物にかかわるほとんどの人が言うことです。 たんすを開けてみたら、モスリン製の長じゅばんが穴だらけになっていたという経験をしたことのある人もあるはずです。

呉服屋さんのお話では、「モスリンの紐や裏地のついている着物は、別にしてしまう」ということでした。こうして、色柄は美しいのですが半ば厄介者のモスリンを顧みる人はあまりいませんでした。

競り市でモスリンの下着や帯は置いて帰られることが多かったのです。今もそうではないかと思います。古物業の方にとって、売れない商品は車のスペースを塞ぐだけ無駄というものです。競り市の終わったあとはモスリンのはぎれが必ずありました。それを拾いあつめているうちに、今のコレクションが出来上りました。京都古布保存会のモスリンコレクションは、実は「拾ったもの」なのです。しかし、それで展示会場が埋まるくらいになったので、拾うのも侮れないと思います。

2 モスリンの由来と歴史

モスリン展の案内
モスリン展の案内(裏)

ではモスリンとはどんな布なのでしょうか。 以前ご説明しましたようにモスリンはウールの糸で平織りに織れた着物を指します。 強度がなく、虫に食べられやすいという弱点があります。

モスリンが日本で作られ始めたのは案外古く、明治末期には製造があったようです。 モスリンは保温性にすぐれているため下着として利用されました。 特にちりめんの代用として安価なモスリンは消費者に好まれたようです。

またウールの特質として染色性にすぐれていることもありました。 こうして下着から始まったモスリンですが、子供のきものにも使われ次にはふだん着の帯にも使用されるようになりました。昭和初期の方の聞きとりをすると、モスリンのことを「フクリン」と呼ばれることがあります。 どんな字を当てるのかまだわかっていません。
若い娘さんの普段着に合わせたと思われる、表地が花柄のモスリンで裏側が黒しゅすの布地をつけた帯も見られます。また、太平洋戦争前には、いわゆる「戦争モスリン」という布地が出回りました。飛行機や戦争シーンを染めたもので、このジャンルにはコレクターが多いようです。

3 モスリンラベルも面白い

モスリンのラベル
同じくモスリンラベル

上記のラベルは、「コマテキスタイル株式会社」が出された記録冊子に掲載されていたものです。ラベルも面白いと思いませんか?高級品というより庶民の日常着なので、反物が目を惹くように可愛い絵柄のラベルをつけたのではないかと思います。

ビリケンは大阪で人気のあったキャラクターです


4 モスリンの魅力

こうして下着としては重宝されても、なかなか表に出ることのないモスリンですが、筆者は手芸素材としてモスリンの価値を認めています。キルティングをしても針が通りやすく、穴のカバーも刺繍などで可能です。なかなか面白いキルト作品になるのでおすすめです。


針の通り安さが手芸向きです。
キルティングをしているところ

染色素材としての面白さについては、作家の中井由希子さんが説明をしてくださっていますので、そちらもどうぞご覧ください。「モスリンという布地」でご紹介しています。

似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
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