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夏の着物は美しい

「夏着物の文様とその見方」序文


野山にひっそりと咲く百合の花や、風にそよぐ秋草の姿を写し取った夏の着物や帯は、私たちを魅了してやみません。また、それらの文様がつけられた紗や絽の「うすもの」が美しく透ける様は、江戸時代の浮世絵や明治期の絵画の題材ともなってきました。

わずか二カ月の夏の間のために、文様や布地まで特別なものを作るという、日本人の着物にかけてきた情熱には並々ならぬものを感じます。

夏の取り合わせ。素材も色も涼し気です。

「着物を着る方が少ない、特に夏は地球温暖化の影響で一層着物離れが目立つ」などと言われながらも、産地は独自の技術により伝統を守って着物づくりを行っています。日本の伝統に培われた夏の着物や帯の美しさを本書で存分に味わって頂ければ幸いです。
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これは拙著「夏着物の文様とその見方」で冒頭に書いた文章です。夏着物の美しさと素晴らしさが何とか伝わるようにと懸命に説明しています。

着物は着てみなければよさが伝わらないもの。トップ画像の着物を着たモデルさんです。

夏のための素材と文様

夏着物がなぜ素晴らしいか、それは素材と文様、どちらにも涼しさの工夫があるからです。

矢羽根に夏草野呂の帯

絽・紗・羅など、平織りよりはるかに複雑な織り方で作り出される蔬素材があり、その上に描かれる文様は、夏の花や秋草といった涼しさを想起させるものばかりです。

夏着物だけ別ジャンルで本を作りました。確かにこの温暖下の日本で、夏に着物を着よというのは酷かもしれません。「夏は着物を着ないんです」と断言する方もあります。それも理解しつつ、夏のために着物や帯を別に作るという日本人の季節感と美意識を、できれば理解していただきたいというのが、ささやかな願いです。

似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
(この原稿の著作権は昭和きもの愛好会に属します。無断転載を禁じます)

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