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武田砂鉄「マチズモを削り取れ」

世の中を見回してみると、女性に比べて男性が優位に立っていることが多いと感じる。

それは男女雇用機会均等法が制定されて30年以上経った今でも変わらない、あるいはひどくなっていることもある。

働く既婚女性は家事育児に追われ、男性も参加しているものの、主体は女性に置かれているようである。

男性である私としては、大変に肩身の狭い思いをしているのが正直なところである。私のような能力の低い者が男というだけで、優遇されているというのがどうもむず痒いのだ。しかもそれは元から備わったいわゆる”特権”と呼ばれるものだ。

それは自覚していないところで男性に植え付けられているもので、知らないうちに女性を傷つけているのかもしれない。

そんな折に、ライターの武田砂鉄さんの「マチズモを削り取れ」を手に取る機会に恵まれた。

この本の中では、タイトルにもあるように”マチズモ”という言葉がキラーフレーズのように使われている。「男性優位の社会」という意味で使われているのだが、これもいわゆる”特権”というやつなんだろう。

全12章に亘って、男性優位と思われる事象を女性編集者の”檄文”から考察していくというスタイルを採用しているが、時に強い表現を使い、男性優位の社会を批判し続けている。

批判のトーンの激しさに、ブーメランのごとく男性である武田氏に批判が向かないか心配になるのは余計なお世話なんだろうなと思う。でも、心配させてほしい。

この本の読後感はイライラである。自分に置き換えたときに女性に対しての態度にマチズモ的なものの含有に対する焦燥、社会を変えるための明確な答えがないということに対する苛立ち、過激な文体で批判を繰り返す作者はどうなんだという嫉妬と心配、これらがないまぜになってイライラの渦を形成している。

イラっとしながらも、この本を読めてよかったと思う。そうでなければ、マチズモなる言葉に気づきもしないままに、社会に出ていたことだろう。それは恥を上塗りしているに等しいのだ。考えただけで恐ろしくなる。

きっと、女性に優しい社会は男性にとっても優しい社会なのだろう。

【余談】この本がきっかけで立って用を足すことができなくなりました。

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