【書評】集中力はいらない/森博嗣 SB新書

この本は「集中とは人間に機械のようになれという意味」という独特の解釈から始まる。
そして、「集中しないことで、機械にはできない人間本来の能力を発揮することもできる」ということを説明してくれている。

著者は小説家で工学博士の森博嗣さん。
以前友人から著者の小説「すべてがFになる」を薦められて読了。
理系特有の世界観がとても印象的であった。
ここでもその独特の考え方や生活が健在。

集中するということは「具体化」すること。
逆に集中しないことは「抽象・分散化」すること。

抽象・分散化することのメリットは次の3つ。
1.常に冷静に作業を進められる
2.複数を同時並行するため、それがリスクヘッジになり「安心」につながる
3.客観的視点が作れる

集中することは合理的ではあるけれど、それが人間の本来の傾向とは言いがたいと述べている。
その一例として小学校の時間割が分散していることを挙げ、同時進行することが有効であるとの共通認識が自然にあったとしている。

また、集中から発想は生まれず、抽象・分散から生まれると主張。
その理由は分散・抽象化思考により様々な事柄が結びつき、それが発想に繋がるとのこと。
よって部下に「問題を与える人」であるリーダーは集中思考は向かないという。

ただ最後に著者は集中が悪いことではなく、この本は「少なくとも『集中しなさい』がすべてに成り立つわけではない、という反証になっている」というスタンスをとっている。

個人的に一番しびれた言葉は次の一文。
「相手の立場だったら、という想像ができることが、人間の頭脳の特殊な能力であり、高い知性の証でもある。」

どんな時も、複数な視点を持てることが知性。
そして人間はそれができる。
常にそういう人間でいられるようになりたい。

著者の考えは細谷功さんの考え方と共通する点が多いと感じた。
少しでもご両人のレベルに近づきたい。


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