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ハウルの指輪

頭上に光る金色の輪に、白く柔らかな頬。目はどんな宝石よりも深く綺麗で、控えめなそばかすは君をくすぐっているようだ。

僕は君を抱きしめる。愛しさの故、戸惑いの故、独占欲の故。君の体は厚いけれど、いつかすっと消えてしまいそうな予感がする。
君は僕を抱きしめ返す。甘えの故、寂しさの故、独占欲の故。それで良い、それが良い。君は少し自己中なくらいが丁度良い。

ある時、君は羽根をボロボロにして帰って来たね。人間が—あの下賤な肉塊共が—君をいじめて。君の可愛さが羨ましいのかな、君の純な瞳が憎いのかな、それとも君のぽってりとした指先が欲しくなっちゃったのかな。そうだね、君はあまりに美しいからね。人間共が喉から手が出るほど欲するのも分かる。僕だって時折、君の美しさを破壊してみたくなるからね。だから、人間共には指一本触れさせやしない。始めは優しさでも、次第に気持ちがどす黒く煮詰まってきて、やがて君を殺してしまうかもしれないからね。

僕が守ってあげるよ。君はただそこで輝いていて。僕の笑顔だけ見ていて。背中を見てはいけないよ、少し怖いお化けが住みついているんだ。この世の憂いは、僕の羽根で全部隠してあげる。僕の肌が焼け焦げるまで。

…僕がを焼け焦げて、先に死んでしまったらどうしよう?僕らは不老不死じゃない。ちゃんと死ねる。だけど、僕が先に死んでしまったら?君を刺さずに抱きしめてくれる人は?優しく目隠しをしてくれる人は?この世界は君が生きるにはあまりに汚すぎる。僕がハリボテの「綺麗な世界」にならなくちゃいけないのに。

……ねぇ、一緒に死のうよ。幸せなうちに。二人で抱き合って眠って、知らないうちに雲から落っこちて、湖にでも溺れて死んじゃおうよ。この世界は汚すぎる。僕らには汚すぎるんだよ。もう血塗れなんだ。君も、僕も。

僕と一緒に、死んでくれませんか。

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