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巡りゆく 遠藤彰子展(サントミューゼ上田市立美術館)

今日は遠藤彰子さん個展のPRのため、まだ書いてない展覧会鑑賞記もすっ飛ばして速報。

私と遠藤彰子さん

遠藤彰子さんの作品とは美術館巡りで時たま出会っていた。記録によればたぶん最初に見たのは府中のミレー展のついでに覗いた常設展で目に留まった「光景」という作品。

「アクロバット的なスリリングな画面」とまたおバカな(文法的にも変な)感想を書いてるな。それはともかく魚眼レンズで撮影したような不思議な世界は心に残り、以後あちこちでお見かけするようになった。


富山


東京ステーションギャラリー


先日府中美術館で各地の展覧会のチラシを見ていたところ遠藤さんの個展が開かれるというではないか。上田かい。しかし今の私に距離でためらうことはない。


はじめての長野県上田市。去年長野に行った時に通り過ぎたくらいだ。また前泊作戦にしてお宿は東横インにする手もあったが今回は東急REIホテル。会社の近くにあったのになくなっちゃったんだよなという懐かしさもあり、使ってみた。ホテルレポートはまた追って書こう。

翌朝の外気温は2~3℃くらいしかなかったと思う。日が差しているので助かっているが、さすがに風が吹くと寒い…。

川沿いを歩くと鉄橋を単線列車がちょうど通り過ぎた。

のどかでいいわい。

サントミューゼ到着

上田市の複合文化会館的なところ? 

チケットを購求して入場。来て初めて知った撮影OK! おお太っ腹。展示されるほとんどが画家の個人蔵だから可能なのかな。

警告

受付の方が「作品が大きいので(全体を見ようと)後ろに下がる際に他のお客様や作品にぶつからないようご注意ください」と警告を発してきた。って、ろくにひといないよ…。

地方美術館のあさイチだ、そんなもんだろうと予想はしていたが寂しいな(お昼過ぎてからはぼちぼち増えてきた)。

だが中に入るとその意味がよくわかった。

《鐘》2007~08年

うわ、ほんとにこんなデカいんだ(写真だといまいち伝わらないかも。比較対象で人を入れればよかった)。これは知らなかった。日本人の作品でこんなでかい絵を見たのはフジタの「秋田の行事」くらいなものだ。双眼鏡を持ってくればよかった。

登場人物何人いるんだよ。なんかみんな飯食ってるし。馬が飛ぶのはシャガールっぽいけどこりゃむしろ天地創造だな。イマジネーション大爆発。

サイズは333.3×745.5(cm)。日本では(たぶん日本だけだと思うのだが)絵のサイズを号数で表し、500号(3333x2485←いくつか微妙に違う規格があるみたい)が最大サイズらしい。それを立てて横に三枚並べて制作して「1500号の作品」。そんなのがこのあといくつも出てきた。

遠藤さんの場合、この巨大さも彼女のこだわりのひとつだそうだ。500号を最大とする決まり(どうせ自主規制だけど)がなければもっともっと大きな作品に取り組みたいとか。

しかしこの絵、どこに標題の「鐘」があるんだろう?

楽園シリーズ

比較的初期の作品群。こちらはアンソールっぽい作風だね。この頃はまだ森にうさぎや猪がいた相模原にお住まいだったそうで、「昼間に森の中にデッサンをしに行き、夜になると油絵で描くという毎日」だったと画家本人のキャプションが付いている。って先生、相模原にゾウはいないゾウ…。「見えちゃう」ひとなんだろうな。


《部屋》1970年

奇想のアソートだな。ひとつひとつはフジタのタイル絵みたい。諸橋で見たパメーラ・ジューン・クルックもこんなの描いてたような。クルックは彼女とほとんど同い年なんだ。国は違えど同時代の芸術家はどこかしら似ている部分を持つものだ。


《入江の笛》1991年

海水浴場だろうか…。でも時間は月夜みたい。入江に飛び込む女の子。手を繋いでぐるぐる回る女の子たち。ひとりだけ外向いてる。しかしあんな薄っぺらくそっくり返った崖って現実にあるのだろうか。高速道路の橋じゃあるまいし(これは他の絵によく登場する電車と線路とかに通じるのかな)。

で、先生、どこに笛があるのでしょうか…? 耳を澄ませてごらんということ?

街シリーズ

《明日》1988年

で、なんでこれで標題が「明日」?  …こんなのばっかり。タイトルの付け方が独特だね。遠藤先生の中では繋がっているのだろうけど。

それはともかく、じっと見ていたら中央の誰もいないスペースにどうも妙な存在感があると思えてきた。四つ角ではないが三叉路? 去年のドラマ「岸辺露伴は動かない」にも出てきた辻神ってのがある。それがいるのかな。

《迷宮の街》1983年

エッシャーっぽいけど、建物の構造に矛盾はない。建物の底は闇に向かっているが絶望的な感じではない。ただ陽が届かず薄暗いだけ。でも先程の辻神的ななにかがいる?

こんな立体作品も制作されるのね

獅子
葉っぱ猫

大作シリーズ

《炎樹》2017年

比較的最近の作品。これは標題と絵が合ってるな。でもキャプションによればプロメテウスの火? 原発反対とかわかりやすいやつかな。また底がある。でもみなで協力してなにかを引っ張り出そうとしてる。虹も出ている。希望を見せている。満月と三日月が同居しているのは時空を超えた表現かな。


《みつめる空》1989年

この作品では明るい空と暗い空を時空を折り曲げて同居させている。建物の構造もエッシャー的な非現実的なものになっている。はじめての500号作品であり、大作シリーズの起点となったということだ。

《いくとせの春 春》2009年

四季四部作の一枚「春」。今回いちばんきれいだなと思った絵かな。桜だけど水中花? まだ見てないけど「アバター」の最新作はこんな感じ?

花の部分拡大

いやもう後半になるとこっちのエネルギーが尽きてきた。地方美術館だし、小規模に作品があるだけで小一時間もあれば見終わるかな、時間余ったらどうしよかとたかをくくっていたらとんでもない、遠藤さんのパワーに圧倒されてしまった。もう御年75というのに凄まじい。

最後に2つの作品の制作過程をタイムラプスで見せる動画があった。これは撮影禁止。別にいいし、特別撮らせて欲しいわけでもないが、なんでどこでも動画は撮影禁止なんだろね?

それは置いといて、遠藤さん巨大なキャンバスを前に脚立に登って上から下へ、はたまた右や左へ大忙し(早回し再生ということもあるのだが)、体力的にもそりゃ大変そうだ。

ただちゃんと最初の下描きの通りに制作している。ピカソとは違うな当たり前ですかそうですか。

イラストエッセイ

御本人が今回の個展に寄せたイラストエッセイ? いやたのしい❤ これいっぱい書いて本にしても売れるのに。もう一枚あるのだけど、それは会場に行って見てください(いけずぅ)

遠藤彰子《鐘》のすべて

ショップでこんな本が売られていた。Amazonでも扱っているけどせっかくなので地元にお金を落としておいた。まだ読んでいないが標題の付け方の謎がわかるかも!

PR動画


おまけ

そういえば、チケットカウンターで「えんどうしょうこさんのチケット2まい〜」と言ってるカップルがいた。受付のおねえさんもつられて(?)「はい、えんどうしょうこさんですね」と言ってた。あきこだよ〜〜ww。

私は知り合いに彰子と書いてあきこと読む人がいたせいか最初から「あきこ」と読むのかなと思っていたね。


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