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ダボスにて@世界経済フォーラム 2024(2)

引き続き、世界経済フォーラム(2024年1月15日ー 19日) の備忘録をシェアしたい。


◉ イベント:マインドフル・メディテーション with Penny Low

ダボス会議の期間中は、メイン会場で行われる公式MTGの他に、会場外では世界から集まる国や企業、個人が主催するの様々なイベントが行われている。

今回、友人のPenny Low氏からの誘いを受けて、モーニングイベント「Mindful Meditation」を開いた。Pennyはシンガポールの国会議員を長年務め、現在は「Social Innovation Park」の経営者として、社会的イノベーターや社会起業家を支援している。リーダーシップ育成やイノベーションにも重要な要素としてマインドフルネスを取り入れている。


イベントでは、Pennyのガイドで瞑想の時間を設けたあと、自分からは、昨年の朝のマインドフル・セッションで行った「Meditation with Good Ancestors(よき祖先とのメディテーション)」のガイドをした。「Meditation with Good Ancestors」は、何か特別な瞑想実践ではなく、先祖や祖先に心を向けゆくもので、日本の「法事」のような場だ。宗教的儀礼としてではなく、誰でも親しめる言葉を添えて、先祖から祖先へと心を向けていく。どこでも出来る、シンプルなマインドフル習慣として持ち帰ってもらえたらと思う。

今、世界で多くの人がマインドフルネスに注目している。我がごととして関心を寄せる人たちは、自ら率先して熱心に取り組み、そこから深い学びを得ている。朝の時間帯は、会議参加者にとっては貴重な休息タイムでもあり、集まった人は10名余りだったが、ヨーロッパやアフリカ地域など出身は様々だった。

マインドフルネスをテーマにした周辺イベントは他にも様々開かれていて、テクノロジーを生かしたマインドフルネスを提案する企業も多い。世界の産業界からも、マインドフルネスはいよいよ注目されている。


◉ Faith in Action: Religion and Spirituality in the Polycrisis

(ポリクライシス*において、宗教とスピリチュアリティは何が出来るか)

Faith in Action: Religion and Spirituality in the Polycrisis(ポリクライシス*において、宗教とスピリチュアリティは何が出来るか)というテーマに、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、仏教と多宗教にわたる関係者が集まるクローズドなMTGにも参加した。ここには、聖職者や宗教家に限らず、関係するコミュニティから社会活動を行う人々も参加者に含まれている。

* Polycrisis(ポリクライシス)
a cluster of related global risks with compounding effects, such that the overall impact exceeds the sum of each part.複合的に影響し合う関係するグローバルリスクの集まりで、全体が及ぼす影響が部分の総和を上回るようなもの

引用:Global Risks Report 2023


ダボス会議は、毎年少数ながら宗教関係者を招待し続けている。しかし、そのプレゼンスは細々とし続けてもいる。戦争、天災、人災、急速なAIの発展と、めまぐるしい変化と動揺の只中にあるこの時代にこそ、会議の場に、Spiritualな風を通すことはできないか。Spiritualityこそ、会議で繰り広げられる対話の質を変えることができるのではないか。周辺要素としての「宗教」ではなく、会合全体にかかわる「Faith in Action」があるだろう。宗教の違いを超えたSpiritualityを共にしながら、これからに向けたヴィジョンを共有した。


◉ ゼレンスキー大統領(ウクライナ )によるスピーチ

ウクライナのゼレンスキー大統領による演説が注目された。昨年まではリモートでのスピーチだったが、今年は本人がダボスへ足を運び、満場の参加者と世界に向けて、更なる支援を力強く呼びかけた。濃緑色のスェット姿で、戦時下を感じさせるスタイルだった。戦争を長引かせるべきではなく、かといって、問題を棚上げしたまま凍結すべきでもなく、早期解決に向けて徹底して闘うとの決意表明と、その支援を世界に要請した。

スピーチの後は、世界経済フォーラム総裁であるBorge Brendeとの対話がなされた。元コメディアン出身のゼレンスキーらしく、笑いを交えながらも、ロシアとの戦争がウクライナだけの問題ではないこと、西側諸国のためにもウクライナのEU加盟が不可欠であることが強調された。


▼ ゼレンスキー大統領 スピーチ/ WEF総裁 Borge Brendeとの対談(2024.1.16)



◉ ハビエル・ミレイ大統領(アルゼンチン)によるスピーチ

「アルゼンチンのトランプ」と称される、大統領就任直後のアルゼンチンのミレイ氏のスピーチは、マスコミにも大いに注目された。経済学者らしく、数字を交えての情熱的な演説。基本的には、自由貿易や小さな政府を信奉し、経済を活性化することがすなわち貧困を撲滅することにつながるといった内容であり、「社会福祉を重視し保護貿易に傾斜し、資本主義の良さを忘れてしまった西側諸国に警鐘を鳴らしたい」という発言もあった。

モデレーターとの対話や質疑応答などのない一方的なスピーチではあったが、カリスマ性を感じた。会場を後にした彼を追いかけるマスコミもの様子もものすごかった。

▼ ハビエル・ミレイ大統領 スピーチ(2024.1.16)


◉ Japan Night

日本の省庁と企業の連合で「Japan」を盛り上げるイベント、Japan Nightが開催された。Japan Nightは、毎年開催される定番イベントとなっている。会場では日本食が振る舞われ、日本のスポンサー企業と官庁が集まる。会の進行や内容も極めて日本的だが、日本ファンや日本通のダボス参加者で盛り上がる。政官民の多分野にわたる方々と一堂に会し繋がることができる貴重な機会でもある。日本との関係を重視するクラウス・シュワブも例年のごとく顔を出し、ショート・スピーチを行った。

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