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人生を「道」にする

とあるビジネスリーダーの集う合宿で、三枝大地さんというバレーボールのプロコーチとご一緒した。どんな方かは、インタビューから少し感じていただけるかと思う。

私はこれまであまりスポーツとは縁のない人生を送ってきたこともあり、集団生活のようなものがあまり好きではないので、特にチームスポーツのようなものには必要以上に距離感を感じてきたようにも思う。それもあって、最初にご挨拶した時には、「ほー、バレーボールですか」みたいな感じで、少し言葉に詰まった。

スポーツの世界に生きる人と話す言語を持っていなかったのだ。

しかし、本当に幸運なことに、三枝さんと同室になってポツリポツリとお互いに話し始めると、どんどん話に引き込まれる自分がいた。理論とか概念ではなく、指導の現場で起こった具体的なことを引き合いに出しながら、至極まっとうなお話をされる。

「学生の選手たちには、こう伝えるんです。バレーボールで勝つことがゴールではない。チームスポーツ、とりわけバレーボールは、パフォーマンスを発揮するのに必ずチームで協力する力が必要になる。ここでパフォーマンスを発揮できたら、これからの人生でどこに行ってもそれは役立つ。そういう視野で、バレーボールに取り組もう、と」

これはもはや、スポーツの話ではない。「道」の話だな、と思った。仏道であれ、バレーボール道であれ、あらゆる道は、一つの道に通じている。それぞれに専門性はありながらも、そこで身についたものは普遍的に生きる。

ふと、学生を指導する三枝さんに聞いてみたくなったことがあり、聞いてみた。

「若い人は、未来があるから、”ここでの学びが今後の人生に役立つ”と伝えるのは有効かもしれない。しかし、企業で働く年配の社員の中には”どうせ自分にはもう将来がないから”と言って、やる気を失ってしまう方もある。そういう方にはどう声がけしますか?」

すると、三枝さんは、こう答えた。

「私も、同じコーチ仲間で年配の方に、コーチの仕方を指導することもあります。でも、基本的には学生さんに向き合うのと、変わりません。誰だって、自分が変化できることを実感すれば、変わっていきます。たとえば、ストレッチの仕方ひとつとってみても、身体の使い方を工夫するだけで、その場で変化するんです」

これは、グッド・アンセスターの話にも通じると思う。

「わたしたちはいかにしてよりよき祖先になれるか」という問いは、インスピレーションに溢れている一方で、人によっては大きすぎる問いと受け止められることもある。

しかし、よくよく突き詰めていくと、あることに気づかされる。「よりよき祖先になる道は、日々の暮らしでの積み重ねの中にこそある」ということを。

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このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじ…

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