読了「FAKEな日本」

(森達也・著。角川文庫。2020/12/24発売)
2021/7/15(木)夕読了。honto電子書籍にて。

鋭い切り口のドキュメンタリー作家の著者と、テーマごとに選ばれた人との対談の数章。
鋭い批評は、課題をひたすら提示し続ける重要な営みと思うけど、世の中には問題しかないかのように思わせられるのも、救いがないし疲れてしまう。建設的な提案や解決に向けた行動無くひたすら文句ばかり言う人(脊髄反射的に感覚と感情で分断したがる人達)はツイッターにもあふれているが、私は好きではない。
賞賛されるべき状況もどの時代のどこの世の中にはあるはずなので、こういう本を読んだ後は、輝かしい対象を扱う書籍を読んでバランスをとらないと、それこそ一人の人間の頭の中としては偏り過ぎる。

それでももちろん問題が存在し、そこに問題意識を持ち、一人一人が解決の片棒を担ごうとしなければ、社会は良くならないというのも分かるし、重要で、大事。放置はできない。

そういう中で、本書に書かれている類のことは目新しくはないけれど、様々な視点から繰り返し頭に入れ続けないといけない。そこから意識が高まり、行動に移行する。直接結びつかない小さなことでも、意識で少しずついろんなことが変わることが、社会を変えられる。多くの人のそれで、社会は良くできる。

前半の対談は、結局は課題意識を同じくする対談相手であるから、議論に深みがあるとはいえ、限界がある。
「対談」であれば、意見が違うことを受け止める器があってなお意見の違う人と対談してもらって、その「違い」が何なのかの根源を、できるだけたくさん見出して、それを世間に問い、知らしめることが重要なのではないだろうか。

ただ、終盤、第六幕の長野智子さんとの対談の章から、あとがき、解説にかけてのあたりが、
とても共感できた。
物事の起きた事実は、物理的に絶対的に一つであっても、
「真実」は、人によって異なるということ。絶対的ではないということ。
そこを、何によってどう規定するのか、そここそがしっかり議論されるべき対象なのではないかと
私は思う。(一人称で語る、ということの重要性にも、共感する。)

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