『名探偵コナン 黒鉄の魚影』について(感想)

 今日は表題の通りコナンの映画を観てきた。本稿ではその感想を書いていきたい。ネタバレ等に関する配慮は行わないので気にする方は確実自衛していただきたい。

 日曜日の真っ昼間ということもあり、子連れの客が非常に多かった。そういう時に成人男性が一人でコナンの映画を観に行くというのは少々恥ずかしさもある。だが今回は、隣の席に座っていた方がどう見ても一人で来ている陰キャっぽい女の子だったのでなんとなく仲間のように感じ恥ずかしくなかった。向こうはキモいと思ってるか何も思ってないかだろうが。

 コナンが重要施設に入り込むのはお約束とはいえ、今回のパシフィック・ブイに押し入るのはかなり強引だった。まぁこれくらいはご愛嬌。いつもの阿笠クイズが今年は例年に比べて簡単すぎた気もするがこれもご愛嬌である。ご愛嬌では済まされないのは、犯人が最序盤からバレバレなことである。グレースの声が村瀬だからこいつが犯人、とすぐに見抜けるのは流石にオタクすぎるから考慮しなくてもいい。だが本譜の、グレースがフランス出身であると紹介した直後に、コナンの田舎チョキを2ではなく1だと思ってしまうというのはお誂え向きのミスである。私はフランスでは田舎チョキが2を表すジェスチャーであるということを知っていたので、この瞬間こいつフランス人じゃないじゃん嘘ついてるじゃん怪しいなと思った。コナンと同じタイミングである。フランスでは田舎チョキで2を表すということを知っている人なんていくらでもいると思うので、今回の犯人探しは推理ではなく単純な知識ゲーになってしまった感は否めない。もう少し気の利いた伏線の張り方はなかったものか。

 とまぁ批判的なことばかり述べてきたが、こんな瑣末な問題なんて取り返していくらでもお釣りが来るくらい良作であった。謎解きが簡単すぎる分、アクションとロマンスに力を入れた感じだろうか。推理漫画じゃないのかよと言いたくはなるがコナンがアクション映画なのは昔からずっとそうなので言うだけ野暮というものである。

 もう言われ尽くしているとは思うが、本当にコ哀成分で全てを焼き尽くそうとする気概を感じられた。もし私がコ哀派だったならば最後まで耐えきれず途中で灰になっていただろう。新蘭派でよかった。最終盤での人工呼吸以降のラッシュは凄まじかった。それは「あなたは気づいていないでしょうけど、私たちキスしちゃったのよ」(だいたいこんな感じ)でピークに達する。もう公式はコ哀で行く気かと本当に思った。

 が、そこからが凄い。もしかしたらコ哀派は蛇足だったと思うかもしれないが、個人的にはアレ込みでコ哀を愛でるのが真のコ哀派だと思う。最後の最後、灰原は蘭にキスし、コナンを見ながら「ちゃんと返したわよ、あなたの唇」的なことを心の中で言うのである。これには痺れた。灰原をどこまでも良い女として描きながら、公式は新蘭だという一線は譲らないという強い気概を感じた。信念の乗った演出は強い。この展開についてコ哀派はどう感じているのか、有識者の見解を聞きたいところだ。

 それにしても灰原のための映画だった。特に興味深いのはゲストヒロイン・直美アルジェントに、灰原哀=宮野志保だと事実上バレていることである。コナン=新一がゲストにバレるにはもはや様式美みたいな感じだが、灰原の正体がゲストにバレるのはかなり珍しいのではないか。直美は結構力の入ったキャラなような気もするので本編登場もワンチャンあるかもしれない。

 ところで灰原にばかり注目がいく本作だが、実は歩美も要所要所でかなり可愛かった。光彦と元太はまるで良いところ無し。まぁ仕方ないがファンは悲しみそうだ。園子は今回特に何をしたでもなく、いつも通り財力に物を言わせて物語を進める装置に徹していたが、こいつ本当に良い女だな。前髪下ろしてなくても十分戦える。意外とファンかもしれない。小五郎は本当に良いところが何一つ無し。割とファンなので悲しいがこれがおっちゃんクオリティか。蘭は今回はヒロインの座を灰原に譲った都合上活躍は控えめだが、相変わらず戦闘面での活躍が目立った。強すぎるだろ。そしてその蘭に普通にアドバイスできる黒田管理官ね。恐ろしい世界だ。

 ジンの兄貴は相変わらずコナンの正体を知った人間を消すことに余念がない。こいつもネズミだろとかネットでイジられるわけだ。ただ個人的には、ジンには強敵であって欲しいのでジン無能イジりはほどほどにしておいて欲しい。今回のジンは結構やれてたと思う。コナンのジンアゲもグッド。黒の組織はネズミだらけでガタガタなんてイジられ方もよくするが、むしろあんだけ情報ダダ漏れだったにも関わらず対等に渡り合った挙句パシフィック・ブイを消すという目標は達成しているわけで、めちゃくちゃ頑張ってたと思う。

 ちなみに本作で一番株を上げたのはコルンだと思う。マリオ・アルジェント暗殺に失敗したとはいえ、ユーロポールとFBIを出し抜いて一発入れたのはデカい。バレて身を潜められた直後に関係ないトラック、しかも走行中のタイヤを正確に狙撃して横転させ大事故を起こし、その騒動が気になって身を乗り出した瞬間に狙撃するという一連の流れを瞬時に実行したのは熟練のスナイパーを感じさせた。キャンティともどもいつもはスナイパーとしての腕をアピールする機会に乏しいので、今回はコルンかなり活躍した方だと思う。マリオ議員は別に助からなくてもよかったとは思うのだが、まぁそれは仕方ないね。

 初めの方でも少し触れたが、今回の映画は村瀬の演技が全ての鍵を握ると言う意味で凄まじかった。村瀬の快演光ると言う感じだろうか。今回のゲスト黒の組織メンバーであるピンガ(男性)はグレース(女性)としてパシフィック・ブイに潜入していたわけだが、初めは全く気づかなかった。両声類としての面目躍如という感じで、素晴らしい演技だった。村瀬の個人技能にかなり依存した作品だったとさえ言いうるかもしれない。

 それにしてもベルモットはなんで老若認証を潰したんだろうね。あの方の考えとは別に個人的な思惑もありそうだけど...。気になるところ。

 コナンの映画を映画館で見るのは久しぶりだったけど中々楽しかった。来年の映画はどうやらキッドと平次がメインらしいと言うことで、新蘭より平和の方が遥かに好きな私は期待に胸が膨らんでおります。キッドも大好きだし。古参ホイホイみたいな布陣だけどどうなるんだろうか。すごく楽しみである。

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