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将棋の思想

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記事一覧

相掛かり模様から角対抗に行きたい!

 本稿は先週に投稿した二本の記事の続きである。簡単に内容をおさらいしてくと、初手26歩に対して34歩なら25歩と突いて角対抗を目指そうという魂胆で居飛車党への転向を目指したが、二手目84歩に対してどうすればいいのか分からず断念したという感じであった。この間には多くのことを考えていたので、本稿ではその一部を公開してみたい。今回の目標は、相掛かり模様から角対抗に持っていきたい!ということである。まずは

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居飛車党への転向を目指していた間に私の脳内で起こっていたこと

 前回の記事では、居飛車党への転向を目指して色々と勉強したり考察したりしていたここ一ヶ月半くらいの間に考えていたことを言語化していった。本稿はその続きなので、必ずそちらを読んでから本稿は読んでいただきたい。前回の記事を書いた後、「真理を求めようとする態度と横歩を取りたくないという態度は矛盾してないか?」というコメントがあった。これは言うまでもなく矛盾している。確かにこの辺りの論点が私の中でどのよう

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居飛車党への転向を目指して考えていたこと

 先にネタバレしておくが私は居飛車党に転向しはしない。ただ、ここ一ヶ月半はそこそこ本気で居飛車党への転向を目指して色々と勉強したり考察したりしていた。結局居飛車党への転向は(一旦)断念することにしたので、この間に考えていたことを言語化しておこうという狙いである。一応断っておくが、本稿で私が使う"正しい"という言葉は、客観的な真理を示すものでは無く、それもしくはそれに近いと私が感じているという主観的

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神田事件に対する当時の言論状況

 今年2024年は日本将棋連盟の結成100周年である。非常にめでたいことであり、今後の棋界の発展を心から祈っている。その一方で、この100周年というのはどれくらい本当なのかとは思わなくもない。100年前の1924年は、東京を拠点に活動する関根派・土居派・大崎派の三派が合同し東京将棋連盟が結成された年である。その数年後に関西を拠点に活動していた木見派が合流することで日本将棋連盟と改称し、残る独立勢力

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将棋の戦法としての高飛車について

 「高飛車」という言葉がある。この言葉は元は将棋用語で、そこから転じて一般語彙に定着したとされることが多い。しかし、この言葉が将棋用語として使われている事例を探すと、それが驚くほど少ないことに気づかされる。本稿は、将棋の戦法としての”高飛車”とは何なのかを探るものである。今日では、高飛車という言葉が将棋用語として普通に用いられることはまずない。だが、一部で信じられている定義として、飛車を2五(後手

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”振り飛車”の起源について

 序盤の段階で飛車を左辺に移動させる戦法のことを今日の我々は”振り飛車”と呼ぶが、この表現がいつごろから用いられるようになったのかは明らかではない。1707年の『将棋綱目』においては「居飛車」という表現は既にみられるものの「振り飛車」という表現は見つからない。「左飛車」という言葉はあるが、これは相振り飛車の戦型を指して用いられている言葉のため、振り飛車にあたる言葉なのか相振り飛車を指す言葉なのかは

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私にとって将棋のnoteを書くとは何か

 先日、将棋の終盤力に関する記事を書いた。ガスボンベさんに反論していただいたこともあり、少し話題になってうれしかったものである。ただ、この記事をはじめとして私の将棋に関するnoteの記事がどのような性格を持っているのかについてを明らかにしておくべきな様な気がした。なぜこのようなぼんやりした書き方になっているのかは本稿を閉じる頃には明らかになるだろう。現時点では、書くべきだという結論しかない。

 

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斎木 稔貴「終盤力とは勝ち切る力である」への応答

 先日、将棋の終盤力に関する記事を投稿した。すると、これに対し興味深い反論が寄せられた。

 本稿はこの反論に対し応答を行うものである。わざわざ言うまでもないことだが、私はこのような反論が届くことが何よりもうれしい。私のnoteの記事など、思い付きを適当に文章化しただけのものであり、いわば「こんな考え方もできるんじゃない?おもしろくない?」と言っているだけのものだ。それに対して「は?違うが?こう考

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二種類の終盤力について

 将棋指しを評価する際、序盤派/終盤派と分けるのは良くある話であろう。一般的に言って序盤派は研究家で、序盤でリードを得るのに長けており、終盤派は劣勢な局面を難しくしたり難解な局面から抜け出すのが上手いと言った感じであろうか。だが、この区分には問題があるように思われる。というのも、序盤派は終盤派より序盤知識が深く、終盤派は序盤派より終盤力が高いというような印象を与えてしまうからである。前者は正しいだ

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#エイプリルフールなのでいいねの数だけ将棋の戦法について偏見を言う について

 すっかり忘れてた

 今さらツイートしていってもTLを汚染するだけだし、時期を逃してしまって恥ずかしいし、なにより今さらいいね数が増えて対応しないといけないのは面倒くさいので、noteでまとめて対応してしまおうと思う。10いいねだったので、10個語っていきたい。

1.横歩取らず
 伝統ある戦型なのに今日ではあまりにも軽んじられすぎではないか。横歩も取れない男に負けるわけにはいかない、とか言って

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横歩取り竹部流と端歩の関係について

 本稿は横歩取り3三角戦法に対し、同飛成と取る先手の作戦について研究するものである。特に、9筋の端歩の付き合いが入っている場合にどのような違いがあるのかを検討する。横歩取り3三角戦法は、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛の局面で△3三角と上がる作戦のことである。

 この局面で、▲同飛成と取るのが竹部流である。以

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詰将棋は終盤力強化のためのものでは無い


はじめに

 本稿は表題のとおり、詰将棋は終盤力強化のためのものでは無いということを論証するために書かれたものである。論証、などと強い言葉を使ったが、実際にはこの命題は証明しうる類のものでは無い。より控えめに言い直せば、なぜ私がそう考えているのか、というのが本稿の主題である。また、少なくとも、詰将棋が誕生した背景に終盤力強化という目的があったことや、詰将棋を解くことで終盤力が鍛えられるということ

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将棋の結論とルールの関係について

 将棋は先手必勝なのか、後手必勝なのか、引き分けなのか。たびたび話題になるテーマである。私は以前このテーマについて将棋は後手必勝であると主張する記事を書いたことがあるが、正直に言ってもはやそう信じてはいない(当時から本気ではなかった節もある)。現在の私の見解はこうだ。将棋の結論は、解無しである。

 私は以前より、将棋というゲームを構成する本質的な要素は何かという点について考えてきた。以前の記事で

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評価値に関する覚書き

 評価値と呼ばれるこの不思議な数字に対して短い考察を加えさせていただきたい。私が気になっているのは、この数字が、局面の形勢の差がどれだけ離れているかを示す数字であるかのように思われているということである。それは真実なのか?一般的に、先手が100点良い、と言えば、互角ながらちょっと先手寄り、という意味だと思うであろうし、先手が3000点良い、と言えば、先手がかなり勝ちに近づいているという意味だと思う

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