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星空と天使 第1話『出会い』

 僕は星空を見るのが好きだった。

 今はもう見ることがない、あの星たち。

 みんなの希望の光、みんなの道しるべ。

 ただの光もなにもない暗闇の空に手を伸ばした。

 

 どのくらいの時間が経ったのか分からないけど、僕は小高い丘の上で眠ってしまった。やっちゃったと思い急いで家に帰ろうと重たい体を起こしたら、目の前に白銀の光を纏った羽根を生やした天使のような女の子が立っていた。僕は驚いてひっくり返ってしまった。

 「やぁ! ちょっとビックリしすぎじゃないかな?」

 彼女が転がっている僕に手を差し伸べてくれた。

 「あ……ありがとう!」

 彼女は笑顔で頷いた。

 僕は君はなんなの? 君はどこから来たの? 質問攻めをしてしまったが、彼女はずっと笑顔だった。

 どうやら彼女は本当に天使みたいで、あの失われた星空の向こう側から来たらしい。僕は突拍子もない話に驚いたが、彼女の眼差しが真剣だったから信じることにした。

 「君はずっと星空を見てたよね?」

 「今はもう見れないけどね……っていうか、どうして知ってるの?」

 「それは、君を星空の向こう側から見てたからね! それに星が見えなくなってからも君はこの場所に来てたでしょ? それが印象に残ってたから」

 「そうなんだ」

 どうやら星空満天の時はみんな見に来てたのに、星が消えてからは誰も来なくなったそう。僕以外は。

 基本的に天使は人前には現れることはないし、いちいち人のことは覚えていないらしい。だったらどうして僕の前に現れたのか聞いたら彼女は一瞬視線を落として、『気まぐれだよ!』そう言いながら笑った。あからさまになにかを隠しているように見えたので、僕は彼女の顔を数秒見つめた。彼女は怪しまれてると思ったのか『君は星が好きで希望を抱いてたと思うけど、星が消えても祈りを捧げてたように感じたから、すごいなぁって思って。でも、ただ単純に純粋に気まぐれにロマンティックをしたいなぁと思ったからだよ』と身振り手振り説明してくれたが、僕はよく分からなかった。『気まぐれにロマンティックってなんだよ』って思わず口に出してしまった。彼女はそんなことは気にせず、笑顔で『ロマンティックを感じてみたかっただけだよ』そう言った彼女はどこか寂しそうであり、恥ずかしそうに微笑んでいた。

 その表情にドキッとした。


 最近はこの丘には来てなかったけど、今日来たのは星空をまた見たかったから。ここから見える星の海のような風景も好きだった。

 心の奥底では分かってはいたけど、もう一度星空を見れるんじゃないかと淡い期待を抱いてしまっていた。もう見ることはないのに。

 人はないものねだりをしてしまうものなんだろう。


 「もう星空は見れないのかな?」

 「このままでは無理だろうね」

 「その言い方だとなにか手があるみたいだけど」

 「あるにはあるんだけど、多くの人達の星に対する想いが大切で必要なんだ! それは難しいけど、絶対に無理ではないかな」

 「そうなんだ。まだ希望はあるんだね!」

 「まぁね……君は前向きだね」

 「別にそんなんじゃない……でも、あきらめたくないから上を、星空を見上げてるんだよ」

 そうは言ったけど、本当は悲しくて仕方なかった。それでも彼女が希望を持たらさせてくれたから。

 「その心持ちはいいと思うよ! 可能性があるとしたら、簡単に言うと星空をまた見たいと強く願っている人の想いを具現化するんだ。その為にはいろんな人に会いに行く必要があるんだよね。今すぐ行動するかな?」

 彼女は人差し指を立てながら言った。

 僕は『うん』と即答した。

 「あ、私は『気まぐれにロマンティック』を探したいだけだからね! そこんとこよろしく!」


 天使な彼女と僕は旅をすることになった。






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