旧統一教会問題について懸念すること

 旧統一教会問題に関する議論について懸念していることがあります。
 それは、議論の流れが

「旧統一教会は気持ち悪いから潰そう」

という意思で動いているように感じる点です。

自分自身の感情としては、合同結婚式や異常な額の献金などについてどう足掻いても好意的に捉えることはできませんが、それでも「気持ち悪いから潰す」ということはあってはいけないと思っています。

なぜなら、この「気持ち悪いから潰す」という考えは、最近話題になった事実上の業界潰しであるAV新法や長く続き、今でも存在する性的少数者への差別と同じロジックだからです。

どんなに気持ち悪かったとしても、それを理由に旧統一教会を潰してしまえば、後に続くのは果てしない「キモイから消えろ」の大合唱です。それらは、あらゆる多様性を焼き尽くし、文化だけでなく経済的にもこの国を燃やし尽くすでしょう。

かといって、旧統一教会に問題がないわけではありません。実際に被害者も出ていますし、現在進行形で苦しんでいる方もいると思います。
なので、「キモイから消えろ」以外の論点をいくつか整理してみます。

まず、大きな問題は以下のように大別できると思います。

  1. 霊感商法

  2. 韓国への献金

  3. 2世信者、政治参加など宗教全般の問題

一つ一つ見ていきます。

まず、霊感商法について。
これは明らかに消費者問題です。ありがたいことに現在は霊感商法を取り締まる枠組みが存在するらしいので、法律の厳格運用によって対応できる問題だと思います。
この件については、「安倍元首相の功績だ」、「民主党政権の功績だ」、「いや福田元首相の功績だ」とさまざまな意見があるそうですが、いずれにしても今ある法律で対応できることを喜び、消費者行政に関わってきた官僚の方々に感謝するべきことです。

次に、韓国への献金問題です。
これは、統一協会側が日本はエバ国だから、だの謎の主張をして日本から資金を巻き上げていることで問題視されているのだと思います。
しかし、これでは「気持ち悪いから規制しろ」という議論になってしまいます。
物事を一般化し、日本の活動で稼いだ資金を外国に送金しているという点を問題視するのであれば宗教法人に限らず外資規制にも踏み込んで議論をするべきです。

最後に宗教問題一般です。
二世信者問題は、信教の自由的に極めて難しい問題です。宗教がその団結力によって政治に影響力を及ぼしていたとしても、政治の側から宗教に便益が供与されていたかどうかを検証する枠組みが存在するかどうかは正直怪しいです。
宗教法人の税制面の優遇や人間関係を破壊するほどの勧誘活動について問題視する意見もあるけでしょう。
しかし、これらは旧統一教会に限った話ではありません。
ここで旧統一教会だけを叩いては、テロリストだけの意見を反映して救えるかもしれない多くの人を見殺しにする結果になってしまいます。

最後に、この問題を政局の問題に矮小化しないでいただきたいです。
下村博文議員が引責辞任したとしても被害者は救済されません。
気持ち悪いから旧統一教会を、気持ち悪いから宗教をという議論をしてしまっては、救える人を救えずに、宗教に救いを求める人々や重要文化財を守る宗教団体、文化の担い手を破壊してしまう結果になるかもしれません。
表現規制にも性的少数者への扱いも、「気持ち悪いから」という議論をせず、何が問題なのかを冷静に切り分けて対応していただきたいです。

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