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プノンペンの奇跡をカンボジアの奇跡へ

 ベトナム戦争の影響とその後の長い内親で、カンボジアの首都、プノンペンの上水道施設は壊滅的な状態だった。当時のプノンペンの市街地では20%ほどしか水道が普及しておらず、給水できるのは一日10時間程度。それを改善するために、日本をはじめ世界銀行やアジア開発銀行、国連関発計画などが参加し、水道施設の復旧復興にあたった。同時にプノンペン水道公社の総裁のもと、水道事業の運営・経営能力の強化にも力を入れ、漏水率を減らし、水道料金の徴収率を上げ、公社の経営を安定させた。1999年には24時間給水が、水道料金の徴収率はほぼ100%を達成。2003年には蛇口から直接飲めるほど水質も向上した。途上国において、10年という短期間でここまで水道が整備された例はない。

 長い内戦の後、カンボジア王国が誕生した1993年にJICAがプノンペンで開始した上水道整備事業。わずか10年間で質のよい水道水を24時間提供できるようになり、「プノンペンの奇跡」と呼ばれている。カンボジアの復興支援として、日本だけでなく多くの国や国際機関が支援した。日本からはJICAとともに北九州市や横浜市の水道局職員が協力した。プノンペン水道公社の強いリーダーシップもあり、「奇跡」が起こった。

1 カンボジアのプノンペンとは

 カンボジアと聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか?「貧困」「内戦」「地雷」「危険」…。しかし、カンボジアでは急速な経済発展が続いており、2010年から18年までのGDP成長率は年平均7%にもなる。近年は、とりわけ中国からの投資が過熱し、首都プノンペン都では高層ビルの建設ラッシュが進むなど、カンボジア経済は当面好調が続くものと見られている。
 カンボジアにおける一人当たりGDPは1,509US$(2018年)ですが、プノンペンだけに限ると、4,000US$クラスの世帯も増えてきている。都市と田舎の格差がかなり広がっている。

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