Photo by konpyu0808 あめゆじゅとてちてけんじゃ:妹に救われた宮沢賢治 17 合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己 2024年3月2日 09:51 ¥390 「永訣の朝」は、宮沢賢治の最愛の妹であるトシの死をうたっている。『春と修羅』の中には他にも「永訣の朝」が記された日であり、トシが病により亡くなった日である1922(大正11)年11月27日の日付で、「松の針」「無声慟哭」という詩が収められている。これらも、宮沢賢治のトシの死に対する思いがつづられている。詩「永訣の朝」の全文(原文)けふのうちにとほくへいつてしまふわたくしのいもうとよみぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ 「あめゆじゅとてちてけんじゃ」うすあかくいつそう陰惨いんざんな雲からみぞれはびちよびちよふつてくる 「あめゆじゅとてちてけんじゃ」青い蓴菜じゆんさいのもやうのついたこれらふたつのかけた陶椀たうわんにおまへがたべるあめゆきをとらうとしてわたくしはまがつたてつぱうだまのやうにこのくらいみぞれのなかに飛びだした 「あめゆじゅとてちてけんじゃ」蒼鉛さうえんいろの暗い雲からみぞれはびちよびちよ沈んでくるああとし子死ぬといふいまごろになつてわたくしをいつしやうあかるくするためにこんなさつぱりした雪のひとわんをおまへはわたくしにたのんだのだありがたうわたくしのけなげないもうとよわたくしもまつすぐにすすんでいくから 「あめゆじゅとてちてけんじや」はげしいはげしい熱やあへぎのあひだからおまへはわたくしにたのんだのだ 銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいのそらからおちた雪のさいごのひとわんを…………ふたきれのみかげせきざいにみぞれはさびしくたまつてゐるわたくしはそのうへにあぶなくたち雪と水とのまつしろな二相系をたもちすきとほるつめたい雫にみちたこのつややかな松のえだからわたくしのやさしいいもうとのさいごのたべものをもらつていかうわたしたちがいつしよにそだつてきたあひだみなれたちやわんのこの藍のもやうにももうけふおまへはわかれてしまふ 「Ora Orade Shitori egumo」ほんたうにけふおまへはわかれてしまふあああのとざされた病室のくらいびやうぶやかやのなかにやさしくあをじろく燃えてゐるわたくしのけなげないもうとよこの雪はどこをえらばうにもあんまりどこもまつしろなのだあんなおそろしいみだれたそらからこのうつくしい雪がきたのだ 「うまれでくるたて こんどはこたにわりやのごとばかりで くるしまなあよにうまれてくる」おまへがたべるこのふたわんのゆきにわたくしはいまこころからいのるどうかこれが兜率とそつの天の食じきに変ってやがてはおまへとみんなとに聖い資糧をもたらすことをわたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ ダウンロード copy ここから先は 1,242字 ¥ 390 期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に! 購入手続きへ ログイン #宮沢賢治 #スペイン風邪 #永訣の朝 #あめゆじゅとてちてけんじゃ 17 私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。 記事をサポート