見出し画像

日野原重明さんの「命」の授業

 2017年7月、日野原重明さんが105歳で亡くなられた。生涯現役の医師として活躍し、命の尊さについても積極的に発言してきた日野原さん。

 2006年ごろだっただろうか、日野原さんは2週間に1回のペースで小学校に出向いて、10歳の子どもを相手に45分間の授業をされていた。テーマは「命」だ。

 最初に子どもたちに校歌を歌ってもらい、前奏が始まると子どもたちの間に入って、日野原さんがタクトを振る。そうすると子どもたちは外から来た年配の先生が自分たちの校歌を指揮してくれたことで、子どもたちと日野原さんの心が一体になるという。

 日野原さんが子どもたちに「自分が生きていると思っている人は手を挙げてごらん」と言うと全員の手が挙がる。次に「では命はどこにあるの?」って質問すると、心臓に手を当てて「ここにあります」と答える子が出てくる。日野原さんはおもむろに聴診器を渡して、生徒たちに隣同士で心臓の音を聞いてもらった上で話を続ける。

 「心臓は確かに大切な臓器だけれども、これは頭や手足に血液を送るポンプであり、命ではないんだよ。命とは感じるもので、目には見えないんだ。目には見えないけれども大切なものを考えてごらん。空気って見える? 酸素は? 風は見えるの? でもその空気があるから僕たちは生きている。このように本当に大切なものは目には見えないんだよ。」と。

ここから先は

2,417字

¥ 290

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。