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子どもの意見表明権をどう考える?

 国連子どもの権利条約の第12条「意見表明権」を、日本ユニセフ協会が分かりやすい言葉で紹介している。「子どもは、自分に関係することについて自由に自分の意見を表す権利をもっています。その意見は、子どもの発達に応じて、じゅうぶんに考慮されなければなりません。」 
 
 子どもの権利条約の4つの柱「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加・意見表明する権利」の中で、世界的に見ても日本の状況を見ても一番軽視されているのは「意見表明する権利」であり、昨年度の児童福祉法の大きな改正で、厚生労働省からこども家庭庁が独立した。

 「子どもの意見表明権」の強化も「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」でとりまとめられた。「子どもアドボカシー」は「子どもの意見を聴くこと」と訳され、子どもに権利があることを伝えた上で、その意見に耳を傾け、思いや不満を受け止める。もし、子どもがその状況を変えたい、自分の意見を周囲の大人や社会に伝えたいと思う場合、どうすればいいかを一緒に考え、子どもが選択できるように情報を提供し、行動を支援するということだ。そして、それを実践する人を「アドボケイト」と呼ぶ。しかしながら、アドボケイトの導入は昨年度の児童福祉法改正では見送られてしまった。子どもの声を聴く、子どもの思いや不満に耳を傾ける…文字にしてしまえばとても簡単そうなことを大人はできていない。

 1992年、ブラジル、リオ・デ・ジャネイロにて開催された「環境と開発に関する国連会議(環境サミット)」に集まった世界の指導者たちを前に、12歳の少女、セヴァン・スズキさんは語った。
 「私がここに立って話をしているのは、未来に生きる子どもたちのためです。世界中の飢えに苦しむ子どもたちのためです。そして、もう行くところもなく、死に絶えようとしている無数の動物たちのためです。(中略)もし戦争のために使われているお金をぜんぶ、貧しさと環境問題を解決するために使えばこの地球はすばらしい星になるでしょう。私はまだ子どもだけどそのことを知っています。」

 当時、すべての参加国の代表者から拍手喝采を浴び、伝説のスピーチと呼ばれ、『あなたが世界を変える日』という本になり、『セヴァンの地球のなおし方』という映画にもなった。しかしながら、セヴァンのスピーチの後、地球を取り巻く状況はまったく変わらなかった。

 それから27年後、グレタ・トゥーンベリは2019年9月、国連気候行動サミットに出席し、地球温暖化に本気で取り組んでいない各国のリーダーを叱責した。
 「30年以上にわたり、科学が示す事実は極めて明確でした。なのに、あなた方は事実から目を背け、必要な政策や解決策が見えてすらいないのに、この場所に来て、「自分たちはやるべきことをやった」とどうして言えるのでしょうか。私たちにとって、50%のリスク(=今後10年で世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性)は決して受け入れられません。その結果と生きていかなければならないのは私たちなのです。あなた方は私たちを裏切っており、若者たちはあなた方の裏切りに気付き始めています。未来の世代の目は、あなた方に向けられているのです。」

 子どもの意見表明権は「抵抗する」権利でもある。子どもは国家、社会、そして大人との権力関係に晒されている。子どもは大人の圧政に抵抗する権利を持っていることが右の二人のスピーチからも窺える。その切実さや真摯さに心が動かされる大人もいれば、いらいらし、冷笑し、上から目線で見下そうとする大人の反応もあり、大人は心が平静でいられない状態にさせられる。

 これこそが子どもの意見表明権の背後に存在する「大人に抵抗する子どもの人権」なのではないだろうか。

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合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己
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