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人類は地球のために何ができるのか?

 2023年3月、ニューヨークの国連本部で「2023年国連水会議」が開催された。グテーレス国連事務総長が「地球はいま沸騰している」という言葉を
使い、それほどいま地球温暖化、気候変動は深刻になっているということを表現した。このままでは2030年には世界人口の約半分、実に約四十億人もの人々が、日常生活に不便を感じる「水ストレス」の状態に見舞われると予測されている。

 オランダとタジキスタンの共催によるこの会議には、世界の指導者、市民社会やビジネス界のリーダー、若者、科学者、研究者、国連システム、そして農業・エネルギー・環境・水などさまざまな部門からの参加者が、共通の目標のもと一堂に会した。すなわち、水危機に緊急に対処し、世界を持続可能な開発目標(SDGs)の目標6「安全な水とトイレを世界中に」の達成に向けた軌道に戻すという目標だ。

 「この会議で示されたコミットメントによって、人類は、地球上のすべての人々が必要とする水が確保された未来に向け、前進するだろう」とグテーレス国連事務総長は述べた。

 水が確保された未来を実現するため、グテーレス事務総長は、鍵となる打開策について強調した。すなわち、基本的人権としての水の位置付けを強化し、水循環系への負荷を軽減すること、食料生産と農業における持続不可能な水の使用量を削減する代替的な食料システムを新たに構築し、2030年までの計画と優先事項の指針となるグローバル水情報システムを新たに設計・導入することだ。

 グテーレス事務総長はまた、温室効果ガス排出量を削減し、コミュニティーを強化するため、水、生態系、気候に関するアプローチを統合するよう訴えた。これには、レジリエント(強靱)なインフラ、水道管と排水処理の計画や、2027年までに世界のすべての人々が早期警報システムによって自然災害から守られるようにすることが含まれる。さらに、気候正義と、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるためのグローバルな行動を引き続き強く求め、最後にSDGs目標6を実現するため、すべての国々の能力構築に向けた資源の投入と投資を劇的に加速させるよう呼びかけた。

 安全な飲料水と衛生へのアクセスは、人の健康と福祉のための最も基本的なニーズであり、人権として宣言されている。しかしながら、世界では約20億の人々が未だに安全な飲料水へのアクセスを欠いており、世界人口の40%が水不足の影響を受けている。農業における需要だけで、水使用の約70%を占め、こうした負荷に加え、災害の90%以上が水に関連しており、気候変動は水を通じて最も大きな被害を生んでいる。さらに、人類の水需要は拡大する一方で、淡水への負荷は2050年までに40%以上増加すると予測されている。

 こうした背景の下、2023国連水会議では、強制移住、気候変動、紛争に及ぼす影響を含めた水危機の緊急性から、健康、貧困削減、食料安全保障との重要な関連性を強調することに至るまで、幅広い議論が行われ、SDGsにとっての重要な分岐点となった。

 自国に水源があり、それを安心・安全に利用できる国は、国連加盟国193か国のうち日本を含めて僅か21か国しかない。いま世界の大半の国は、多国間を流れる国際河川の水源を巡って激しい水の争奪戦を余儀なくされている。

 もちろん、豊かな水資源に恵まれている日本も例外ではない。日本の水資源の約三割は、梅雨と台風、積雪によって賄われてきたが、地球温暖化の影響で梅雨前線は日本列島に長く留まらなくなり、台風の進路も無軌道になり、積雪にいたってはここ100年で約3割も減っている。何も手を打たなければ、いずれ日本も豊かな水資源に恵まれた国ではなくなってしまう可能性がある。

 2023年3月の国連水会議からまもなく1年となる。日本における2023年の1年間をみても、夏は過去最高の記録的な暑さとなり、最高気温が20度を下回ったのは11月に入ってからではなかったか。梅雨入りの6月から台風の影響を受けた記録的な大雨は激甚災害に指定された。日本の気候もグテーレス事務総長が奇しくも使用した「地球の沸騰」に直面している。

 地球の46億年もの長い歴史の中で、1%にもみたない存在の人類が「温暖化」を引き起こし、自然環境破壊や動植物の絶滅をもたらし、悪い意味で地球を「汚染」し、「沸騰」させ、さらには「破壊」しようとしている。

 私には答えが出せない。この美しい「地球」の未来のために、人類がもたらした良い影響ってはたして何なのだろうか。

 

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