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アフリカの発展を妨げる「直線の国境」

 私は高校生に社会科を教えているが、残念ながらアフリカの国を知らない生徒が多い。地図帳を見せながら、「アフリカの国のカタチって何か変じゃない? 違和感を感じない?」という質問を投げかけると、生徒たちはアフリカの地図とにらめっこ。そして、ある生徒が「国と国との境界がまっすぐな国がいくつかある」と嬉しい解答をしてくれた。「素晴らしい! 正解!」と褒めると嬉しそうな顔! 「じゃあ、なんで直線の国境なんだろうね?」と授業を進めていった。<字数:3,822文字>

 アフリカの人口が急増している。1900年に約1億だったのが、2000年には約8億になった。2100年には約43億に達すると推計されており、これは世界全体の推計109億のおよそ4割に及ぶ。これほどの人口急増がなぜ起こるのだろうか。

 アフリカの人口分布には著しい偏りがある。サハラ砂漠や南部の乾燥地帯では人口密度がきわめて低い一方で、地中海沿岸、ギニア湾岸、アフリカ東部の高原地帯では人口密度が高い。

 特に「サヘル」とよばれるサハラ砂漠南縁の国々で人口が急増している。女性1人が産む子どもの数である合計特殊出生率は、ニジェールで7.0に近く、マリやチャドも6.0に近い値を示す。世界で類をみない人口爆発が、アフリカで起こっている。

 サヘル諸国を中心に人口爆発といえる状態になっているのは、出生率が高いままで死亡率が低下したためである。一部地域では砂漠化の進行による生活環境の悪化も見られるが、そうした地域でも人口は増えている。

 アフリカ最大の人口を擁するナイジェリアでは、2019年に100人当たりの出生数が3.7人なのに対し、死亡数が1.2人であり、年間で500万人あまりが自然増加した。

 死亡率が低下した背景には、医療の進歩や衛生環境の改善がある。ワクチンが普及したり栄養状態が良くなったりしたことで、マラリアやデング熱などの風土病による死者が大きく減った。それにともない人々の生活水準も、全体としてみれば向上している。

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