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退去費用を14万→2.5万円に減額した話

最近アパートを退去したのですが、退去費用として14万円請求されました。
(ちなみに某SNSでこのことに触れたら、テレ朝から取材されました。)
法的にまったく根拠が乏しかったので、交渉して2.5万に減額することに成功しました。
(1枚目:当初見積、2枚目:最終見積)
※敷金が14万円だったため全く返金されない予定だったところ、11.5万円の返金となったということです。
同じ問題に直面する人も多いと思うので、学んだことを共有します。


1.クリーニング費用や補修費用を貸主・借主のどちらが負担するかは、概ね国交省の作成する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で定められています。
なお、ガイドラインは法律ではないのでそれ自体に強制力がないのですが、そもそもガイドラインは過去の判例を中心に作られているため、実質的に法律の及ぶ範囲として捉えて問題ないと考えられます。
(判例とは、司法機関である裁判所が法律の解釈を示したものであり、法律に準ずるものとして捉えて問題ないと考えられます。)

2.先述のとおり、ガイドラインは法律ではないため、賃貸契約が優先します。
 ただし、そもそもその契約書のすべてが有効とは限りません。5で例示します。

3.概要を学ぶために、YouTubeチャンネルリベラルアーツ大学のこの動画を参考にしました。
 https://www.youtube.com/watch?v=eFAggPtAV1A&t=714s
 リベ大は生活の基盤となるお金の勉强等を発信してくれる非常に有用なチャンネルですが、発信している情報のすべてが正しいかはわかりません。
 具体例は後述しますが、動画中で断言していても根拠がはっきりしない点もあるので、最後は自分自身で調べて理論武装するのがよいです。

4.借主は、退去時に原状回復する義務を負います。
 注意すべきは、原状回復とは入居時の状態に戻すことではなく、通常の使用によって生じる損耗については回復義務を負わないということです。(図2のイメージ)
 6で例示します。



5.クリーニング費用はガイドラインによると貸主の負担によるものです。
 ただし、契約書の特約に借主の負担とする旨を記載してあるものが多く、僕の場合もそれでした。
 このため、借主負担となることを甘受したくなりますが、ガイドライン7頁に最高裁の判例に基づく特約の要件がいくつか記載されています。
 僕の場合、具体的な金額が明記されていないためこの要件を満たさず、特約が無効であることを主張し、貸主も反論しませんでした。

6.壁紙については、借主の故意・過失に基づく損耗を伴う場合、借主の負担が生じます。
 しかし、その負担範囲は4.で述べたとおりであり、全額を負担する必要は必ずしもないということです。
 具体例を言うと、壁紙は新品時から6年経過で無価値になります。
 例えば、3年住んだ住居で壁紙を破いてしまった場合、その復旧費用の半分の負担でよいことになります。
 ※このことについて、ガイドライン12頁に修理の場合は借主の負担が生じるとも書いてあり、正直この項の解釈は微妙です。
  過去の判例では貸主:借主=5:5となっており、公益社団法人不動産流通推進センターによると7:3となっています。
  僕の場合は判例には触れずに、故意・過失に基づく損耗に基づく箇所の修繕は全箇所3割負担で交渉しました。
 また、費用負担義務のある最大単位は面単位です。
 例えば柄が合わないから一部屋の四面丸々張り替えるとしても、借主の費用負担義務は一面のみに生じ、残りの三面は貸主が負担すべきものです。
 実際に僕の場合も、施工上の理由から隣の壁面の張り替え費用についても請求がありましたが、反論し却下しました。

7.そもそも壁紙の張替え費用は火災保険が適用できるらしいです。(これについては自分で調べていないので、伝聞系で書きます)
 アパートに入居している人なら必ず火災保険に入っているはずです。
 この火災保険で故意・過失による損傷を伴う壁紙張り替えでもまかなえるとのことです。
 注意点は、入居中しか使えないため、退去が近づいたら早めに保険会社に連絡して修繕する必要があります。
 僕はこのことを退去してから知ったため、火災保険を使うことはできませんでした。

8.リベ大の動画では、「借主が故意・過失によって生じさせた損耗であることの立証責任は貸主が負う」と言っています。
 つまり、入居前の写真は貸主が用意する必要があるということです。
 しかしながら、これについては誤った情報であると思います。
 正しくは、「敷金を返してもらう場合は借主に、敷金以上の追加請求をする場合には貸主に立証責任がある」だと思います。
 これは民事裁判において原告に立証責任があることを根拠としています。
 僕の場合は結果的に敷金が返ってきたので、借主である僕に立証責任があったのですが、途中まで法的根拠を調べずに動画を信じていたため、「貸主に立証責任がある」と言い切っていました。
 法律に精通している業者であればアホが付け焼き刃で戦っていると思われたかもしれませんが、僕の相手はおそらくそこまでは精通していなかったので結果としてはったりをかますいい材料になったかもしれません。
 いずれにせよ、入居時に写真を撮っておくに越したことはありません。

9.連絡はすべてメールで取るべきです。
 経験的に不動産業者はみんな口が上手いです。
 僕の場合も、法定根拠に基づいて負担金額を交渉しているにも関わらず、業者は情に訴えるような議論をしてきて、ともすれば業者のペースに飲まれるところでした。
 メールで、しっかりと論理的な交渉をすることが肝要です。証拠保全の意味もあります。


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