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ゲームの解像度

しばしばYouTubeで最近のゲームの映像を目にするが、驚くほど解像度が上がっている。人間の表情や動きはもちろんのこと、自然の細かい描写に至るまで正確に表現されている。以前と比べて、違和感をあまり感じさせない。

10年ほど前の映画やアニメーションに利用される映像技術は、現実とは程遠いものであったように思う。まだ人間の手によって描かれる描写や実際の人やモノの動きを利用した表現の方が違和感なく受け入れられた。既存の人やモノによる描写と技術による表現とを混ぜて映像を作り出していたため、より一層技術の粗さが目立っていた。当時は一部のアニメーターが描く人間や自然の描写には大きな価値があった。

映像の技術に関しては全くの素人であるため、具体的な進歩の過程については何も分からない。しかし、人間や自然の非常に微細な構造を正確に分析し、データ化することで再現を可能にしたように思う。例えば人間においては、骨格の細かい動きや筋肉の弛緩までをも人物の動きに落とし込んでいる。

映画やゲームは現実に生きる人々にとって、娯楽の一つに過ぎない単なる鑑賞の対象であった。しかし、解像度が上がるにつれて、より現実世界に近しい描写が再現されるとやはり鑑賞者の没入感は増す。特にゲームにおいて没入感は、ルールによって規定された所謂「ゲーム」を解くこととは別の重要な要素である。10年前のゲームやアニメーションにはなかったものだ。

現実世界では五感が働く。においを嗅ぐことができ、味わうことができ、触れることができる。映像に対しては、視覚と聴覚のほかに五感を扱うことはできない。しかし、それだけでもかなりの没入感を現在の映像と音声技術では味わうことができる。ただ見るだけのものから、自らが入っていくものへと変化させたデジタル技術の解像度の高さは、これからどのような世界を再現していくのだろうか。

2023年9月21日

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