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武道と格闘技、その過去と未来

日頃、合気道とブラジリアン柔術の稽古に励んでいる。一般的に合気道は”武道”、ブラジリアン柔術は”格闘技”に分類される。

武道と格闘技で大きく異なる点は、試合の有無だ。それによって練習形式や方法が変わってくる。合気道の主な稽古方法が型稽古であるのに対して、ブラジリアン柔術は主にスパーリングだ。

両者の歴史を辿ってみると、武道と格闘技の発展と普及のプロセスが異なることがわかる。結論から言うと、合気道は技を型として体系化することで後世に伝えていったが、ブラジリアン柔術は試合を導入することで、その技術を広げていった。型武道化と競技化だ。

これに対しては一部批判的要素がある。技術の一部が、体系化および競技化される過程で失われてしまうことだ。しかし、全体的な技術を多くの人々に広め、後世に伝えていくことを目的とするならば、体系化はやむを得ない。指導をする上でどうしても技術を分解する必要がある。

日本古来の技術や文化の伝承が、言葉を用いて行われるのではなく、習得者自身が「見て学ぶ」ものであった理由はそこにある。言語化できない感覚的要素は、教わる者が自力で身につけなければならない。

型武道化に対して、格闘技の競技化はさらに厳密に技術が絞られる。まず前提として、一対一の状況が想定され、さらに規則に基づいて試合は行われる。ブラジリアン柔術においては、競技化される以前はグレイシー柔術と呼ばれるものであったが、その技術はより多岐に渡っていたのだろう。

しかし、ひとたび競技として成立すると、技術はその規則に沿って、勝負に徹した、最適化されたものとなる。その結果、競技化される前とは全く異なる形で発展する。ルール内において、技はますます洗練される。

もちろん、技が変化するたびに、ルールが変更されることもしばしばある。例えば、回復しないほどの身体的な傷害を与える可能性のある技術は禁止される。

型武道化と競技化の先には、どのような技術形態が確立するのだろうか。格闘技では、明確な勝敗が下される競技として、技術の発展は続いていくだろう。より広まっていき、競技人口が増えれば増えるほど、進化は加速する。また、興行として成立させることで、エンターテイメントの要素も拡大していく。

一方、武道はどうだろうか。合気道に関しては、多くの人々に技を伝えていくといった、技術の体系化を促進させた本来の目的は達成されている。型として成立する技術は継承されてきた。しかし、その欠点も多くの習得者は認識しつつある。

合気道そのものは、これからも伝承されていくことだろう。明確な手順さえ分かっていれば、伝えることは容易だ。しかし、技術が形骸化し、その魅力が薄まってしまっては、やがて収縮の一途をたどる。

格闘技はエンターテイメントとしての魅力を確立した。武道はどこかの時点で技術の再編、そして制度の改革が行われるだろう。魅力を象徴するものとして技術は見直される。普及させる上では、伝統的要素を排した、より合理的な制度設計がなされるだろう。これは格闘技における競技化とは異なったプロセスを辿ると予想している。

2022年2月9日

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