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"挑戦の物語"を持つ人間の魅力

先日、RIZIN.30がさいたまスーパーアリーナにて行われた。YouTubeという媒体がある現代では、試合前の煽りや選手のインタビューに加え、各選手のチャンネルで選手の大会直前の様子を知ることができる。選手との距離がより一層近く感じられる上、試合の宣伝にもなり、大会主催者と選手の両者がともに格闘技を盛り上げている印象がある。

ちょうど今から1年前に総合格闘技の試合を見るようになった。高校生の頃から合気道の稽古に励んでいたが、格闘技にはあまり関心がなかった。ときどきボクシングを見る程度だった。

きっかけは朝倉未来選手のYouTubeチャンネルを見たことだ。街の喧嘩自慢とのスパーリングなど数多くの面白い動画がアップされていた。弟の海選手もオタクの格好をして、たばこのポイ捨てを注意する興味深い動画をアップしている。非常にユニークで、格闘家にしかできない企画をコンテンツにしている。

両選手ともに10代後半から格闘技を始めた。兄の未来選手は喧嘩に明け暮れ、少年院に入っていた時代があり、真っ当な生き方とは言えない人生を歩んできた。一方、弟の海選手は高校を卒業して一般企業に勤めていたが、退職して格闘家としての道を選んだ。彼らがアウトサイダーのチャンピオンになり、韓国の格闘技団体ROAD FCでの敗戦から、RIZINでの活躍までの道のりは決して平坦ではなかった。

しかし、RIZINに出場し始めた当初は、総合格闘技そのものの認知度があまり高くなかった。どれほど良い試合をしようとも見てくれる人がいなければ、自分の存在を社会に示すことはできない上、そもそも興業が成り立たない。それではエンターテインメントとしての格闘技の素晴らしさも伝わらない。そこで彼らはYouTubeを利用し、YouTuberとして自分を表現することで、総合格闘技の舞台を多くの人に知ってもらおうと努力した。

そして朝倉未来、海両選手はRIZINでの格闘家としての活躍を認められるばかりでなく、総合格闘技というジャンルを世に知らしめるという2つの成功を果たした。両選手の物語はこれからも続き、そしてこれまで以上に多くの人に勇気と希望を与えるだろう。

僕が思う格闘技の最大の魅力は、全ての選手に「挑戦の物語」があるということだ。格闘家は日々練習に励み、挑戦をすることが当たり前の仕事である。試合に勝って認められることもあれば、試合に負けて非難されることもある。特に格闘家がYouTubeを始めるという行為は、最初は批判と中傷の対象だったのではないだろうか。

現代の日本には挑戦者を白い目で見る人が多い。まだ「挑戦」とは言えないような小さなことですら、周囲と同じ行動をしていないがために批判されることもある。周囲と同じ行動とは、すなわち社会システムに則った生き方である。

しかし、人生は死んだように生きることが目的ではない。自分自身の選択に納得し、情熱を持って行動していくことが人生を充実させる。人生という壮大な暇つぶしの時間を楽しく過ごすのか、心にわだかまりを持ったまま悶々と過ごすのかは個人の選択の自由だ。

小さなことでも好きなことに励むその行動は、後にポジティブなエネルギーに満ち溢れた人生にその人を導く。それぞれの100%の情熱にあふれる行動は、人を魅了し、巻き込み、社会に必ず良い影響を与える。これは社会がどのようなシステムであるかに関わらず機能する原理であり、個人の分業による社会貢献とはまさにこのことだ。

「挑戦」というと何か大きなことを決意して、一歩踏み出さなければならないという印象がある。しかし、それは社会システム上、結果を出す(白黒はっきりつく)「舞台」が存在している場合のみだ。実際に、その舞台に挑戦をする人は少ない。しかし、我々の人生と現実の豊かさのメカニズムは、その舞台の有無に左右されない。その人らしい環境を生むよう設計されている。原理に関する詳細な内容は長くなるのでまたの機会に話そうと思う。

2021年9月20日

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