クズになりきれなかった休日〜嵐は来ない〜




4.11 天気は晴れ。例年よりも暖かいらしい
月曜日。僕は休み。だがしかし
休みの日こそ早起きしてしまう性分で
その理屈は大人になっても一つもわからないのである。
大人になったからといってなんでも知ってると思ったら大間違いだ。
本日の起床は午前8時。スッキリを合図にシャキシャキと起き上がった。

なんとなくではあるが最近は休日のルーティンが決まっている。

起床 → テーブルの片付け → たまった洗い物の処理 → 
シンクの掃除 → 掃除機をかける → ゴミ出し → 
シャワーを浴びる


である。
これが大まかなスタメンで
代打、代走、守備固めで時々風呂掃除、トイレ掃除が食い込んでくる。
今日は珍しくどちらもスタメンで送り込んだ。


これらのラインナップを1時間強で終え
時間は10時半を少し回ったあたり


2シーズンに1度しかスタメンに名を連ねることのない
レア選手、"衣替え" が今回はスタメン入りしたのである


他のレギュラーメンバーが怪我で欠場したわけではないのにも関わらずスタメン入りしたのだがら翔太監督も思い切った采配をしたものだ。


(野球例えが多くて申し訳ない、昨日の佐々木ろうき投手の28年ぶりの完全試合の影響である。あんな大快挙が"悪"影響へと傾きをみせたのはおそらくここだけであろう。)


衣替えといえばほぼ家の中を
幼稚園児がおもちゃの部品を探すごとく
まるまるひっくり返すようなものだ
まあそれはそれはいろんな"要るもの"、"要らないもの"
が発掘された。

探してたペンや
探してもいなかった綿棒
探していた貰い物のバケットハット
失くしたことさえ忘れていた爪切り
裸のCD
潰れた空の箱ティッシュ
朝読書のために惰性で買った小説
昔々にお付き合いしていた方からいただいた直筆の手紙

などなどいろんなものが発掘される中
昔々仲良くしていた友達に借りていたひとつのゲームソフトが出てきた。ゲームボーイアドバンスのコロッケ3というゲームソフトだった。

俗に言う借りパクである
受動的な借りパクであることは
先に言わせていただきたい。


その友達とはもうかれこれ10年以上連絡をとっていない、というか連絡をする能力を持つ前の友達であるため連絡先をそもそも知らない。
なんなら今どこで何をしてるのか
もっと言うと生きてるのかさえも知らない。
いやいやいや、しょうたくんと、
いまはSNSがあるじゃない、という意見を持たれた方も少なくないだろう。その可能性も僕は把握済みである。
その友達はSNSにもいない。見つけたこともそれっぽいアカウントもみつけたことがない。

どうしたものか、と
このゲームソフトに限らずいろんな"要らないもの"や"忘れていたもの"は近所のリサイクルショップで買取に出すことにした。

そう、僕は他人のものを売ろうとしている。
これまたおいおいしょうたくん、と
君の中の天使と悪魔はそんなにも悪魔が最強なのか、と
そういった意見をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
その通りである。悪魔が最強なのである。戦車vs水鉄砲
といったら過言だが自動車と自転車くらいの差はありそうだ。

きっとひとはこういうひとのことを"クズ"と呼ぶ。


しかし言い訳の余地はいただきたい。
決して欲しいものがあって、とかではなく
どちらかといえば精算がしたかった
めちゃくちゃ良いように言うとそういうことである
ミニマリスト的思想である。

何より捨てるよりは誰かの手に届いて欲しいという
100%の偽善と責任転嫁とも言う。

どうか僕をクズにしてくれ

と願った


さあいよいよ家を出てリサイクルショップへと着いた。
買取に必要な個人情報を書き記し
店内を歩きながら買取査定を待った。



その例の友達は小1のとき通っていた(以後A君とする)
スイミングスクールで出会った。
同い年ではあったが自分よりも水泳としての能力は高く
2、3個上の人たちと肩を並べながら
練習に励んでいた。小1といえば7歳だ。
7歳当時の2、3個なんていえば結構の体格差になる。
それでも負けない速さで泳いでいた。
当時僕はそこまでの気持ちを持って取り組んでいたわけでもなく惰性とまでは言わないが"やりたい"でも"やらなきゃ"でもなくだからといって"やらされてる"でもなく
正直プラス方向にもマイナス方向にも感情を振ることなくこなしていた印象であった。
しかしA君はすごく意識高く取り組んでいた。

お互いに人見知りな僕らはどことなく"空気"は感じ取っていた気がした。なんとなく。
それからほどなくして仲良くなるのだがきっかけは
周りの友達が今流行りの(当時の)音楽やお笑い、漫画、テレビ番組の話に花を咲かせる中
僕らの話題はGBAやPS2のゲームの話だった。秘密基地にいるみたいだった、周りと違うことをしていると言う事実やみんながわからない話を2人だけでしてるということが秘密基地みたいだった。


そんな彼とも高校卒業後一切の連絡も取っていない。
時間と成長によって離れていった。
どこで何してるかさえ知らない。風の知らせも吹いてこない。




" お待たせしました! "


どうやら買取査定が終わったらしい


裸のCD………… ¥100円
惰性で買った小説………… ¥50円


借りパクGBAソフト……………¥10円





10円でよかった
なんだか少し安心した



そんな気がする





その足でコンビニへ寄った。
甘い飲み物は苦手なので
いつも決まってノンスイートラテを買う。
甘いものは苦手なくせに甘いものに憧れてるみたいで卑しい飲み物である。

レジにて財布を開く
先ほどの250円が目に入った
少し迷ったのち1000冊を店員さんへ渡した


なかなか本当のクズにはなれないものである

卑しいノンスイートラテは
いつもよりも甘くなかった、気がした。

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