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引退して半年経った頃に改めて思うこと

なんて幸福な幕引きだったのだろう。
 
日本中を駆け巡った衝撃の発表。そして実際にその日が来てから既に半年が過ぎた。
あの1日は我々世代にとってだけでなく、日本の音楽史においても重大な1日。
日本の音楽シーンにおいて誰より愛されたと言ってもいい歌姫が宣言通りにその芸能生活に幕を引いた。
一時代を築いたアーティストによくある拍子抜けするほどあっけない幕引きという言葉とは真逆の、日本中を巻き込んだ華やかな幕引きだった。
 
安室奈美恵。
彼女のファッションや生き様から影響を受けた人は多い。日本中至る所にいる。
もちろん私は男性ということもあって、彼女のファッションから影響を受けたところは無い。
例えば夜中にこっそりミニスカートを履き、わざわざ原宿まで出て代々木体育館や代々木公園辺りを闊歩するような、つまりBaby Don't Cryごっこをするような趣味があったなら格別、そういう趣味も無かったからファッションの参考になることは無かった。
(ちなみに断っておくと、Baby Don't CryのMVで安室ちゃんはミニスカートを履いていないから、もしそれをやったとしても”ごっこ”としても不正解だ)


そんな私でさえあまりに衝撃的な発表だったあの引退の報道。
例えばライブ会場のあちらこちらにいた
「青春から今まで全て奈美恵ちゃんに捧げて来ました!」
というのが風貌からその熱意がビシビシと伝わってくる熱狂的なファン。
彼女たちにとって、あの日目の前から最大のカリスマが消えてしまうというショックと恐怖はどれほどだったのだろう。
私にとってそれは想像し難いことというより、容易に想像ができて同時に想像したくないことだった。

想像しないようにしていたけれども引退の発表は芸能界でもたくさんの反響を呼んだから、想像するまでもなくファンのショックは伝わってくることになった。
木下優樹菜さんがインスタライブで泣いた。
イモトさんが番組内で何度も泣いた。
TOKYO FMでスカイロケットカンパニーに出演している秘書の浜崎美保さんが、まだラジオでは発表ができない状況でその一報を耳にしてしまい、気丈に番組を続けようとしたが堪えられず泣いた。
次の日には熱い想いを語りながら堂々と泣いた。
ファンたちにとってのあの引退発表からしばらくは大げさではなく辛い日々だったはずだ。

まだ続けて欲しいというたくさんの気持ちとは裏腹に、結果として安室奈美恵さんはいなくなってしまった。
もちろんそれは私たちの前からという意味。
そしていなくなったあの日から既に半年が経った。
あれからの半年を過ごしてみて今思うこと。
それはあの引退がなんて幸せな幕引き劇だったのだろうということだ。
 
確かに今、目の前にはいないかもしれないけれども、ある日”突然”消えてしまったわけではない。
私たちは安室ちゃんから
「残りわずかな時間だけれどこれからもよろしくね」
そういうメッセージをもらい、ちゃんと最後となるその日を教えてもらっていたわけだから。


引退を発表してから1年間の安室ちゃんの活動は、ファンへの恩返しの気持ちがそこかしこに溢れていて、寂しい気持ち以上に嬉しい気持ちにさせられた。
引退直前1~2か月のメディア露出は確認が追い付かないほどの数で、毎日嬉しい悲鳴をあげていた。
 
何より発表から引退まで1年という猶予期間があったことは大きくて、その1年間という期間のおかげで、ファンたちは安室ちゃんが引退に向けて敷いたレッドカーペットを一緒に歩き、思い出を共有することが出来た。
そうした結果としてファンたちは、安室ちゃんがいなくなった後に気持ちの拠り所になるもの、例えはおかしいかもしれないけれど墓標のようなものを、それぞれが胸の内に作ることが出来たのではないかと思う。
そこまで含めて完璧だった。
最後の最後までやっぱり安室ちゃんは最高の歌姫だった。 

もしまだ引退していなかったら今年はどんなツアーを回っていたんだろう。
元号が変わるタイミングで新曲を出したりしたんだろうか。
あっという間に半年が経ってみたものの、それでも思う最高の歌姫のこと。
ミニスカートは履かない私。
けれども安室ちゃんの存在が儚いものでは無かったことに気付く日々だ。

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