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リユース業界の動向についての考察。


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いまリユース業界の成長性が注目されています。

本日はリユース業界の分析をし、そのなかでも株式会社マーケットエンタープライズのネットリユース事業について分析していきたいと思います。

マクロ環境分析

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第2次循環型社会形成推進基本計画の開始や、3R政策(税制優遇制度や低利融資政策など)をはじめとして、政府によるリユースビジネスの支援制度が充実しています。

SDGsの目標12に「つくる責任使う責任」が定められていることもあり、日本だけでなく世界からもリユースビジネスは求められているのです。

社会から必要とされているビジネスは当然ですが需要も大きいため、事業としても成長しやすいです。


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リユースビジネスの市場規模は2兆1800億円で、9年連続で成長しています。

日本は経済が成熟した先進国ですが、所得格差の拡大(相対的貧困率上昇)など抱える社会問題も大きいです。

成熟した一次流通での商材を活用し、2次流通させることで「安価×高品質」な商材の循環を起こし、上述のような格差拡大問題の解決にも貢献することができます。

すなわち、リユースビジネスは社会が抱える根深い課題を解決することができるためサービスの需要が高く、実際に市場成長をしているということです!

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環境省によるとリユース利用者(売却経験者)は4割程度といわれており、残り6割が潜在顧客層となります。一時流通は全国民が利用したことがあるので、今後残り6割が利用をしていく可能性があると考えると、市場の拡大余地は大きいといえます。

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実際、1年間で放棄される価値ある不用品の総額は7.6兆円と言われており、そのうち実際にリユース市場で流通する額が2.2兆円のため、潜在市場の大きさが分かると思います。


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また、上記潜在市場に加えて、家庭には約37兆円のかくれ資産があると言われています。

かくれ資産とは、家の中で1年以上利用していない物のこと
(引用:みんなの隠れ資産調査委員会

日本全国にはまだ需要があるにも関わらず、使用されずに家庭に保管されているものが37兆円分もあるのです。このかくれ資産の開拓を行い2次流通させることができたら、さらに市場拡大することができます。

実際に、かくれ資産は金融、不動産に次ぐ第3の資産としても注目されています。


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今までのリユースビジネスはリアル店舗での売買が主であり、非効率かつ収益性としても高くないような状況でした。

近年では、ITインフラの活用し、従来は非効率だった事業も効率性を追求できるようになり、産業が変革されようとしています。

次に市場分析を通じて、産業にどのような変化が起きているのかを考えていきたいと思います。


市場環境分析

リユース業界では、商材の性質から大きく2つの市場に区分されます。

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引用)創業来13期連続増収のネット型リユース企業が描く成長戦略

一つ目が「C to C」領域、二つ目が「C to B to C」領域です。

①「C to C」領域
「C to C」領域は、フリマサイト(プラットホームビジネス)による競争が激化しており、近年急成長している領域です。

この領域では、いかに出品情報(供給)とユーザ需要をプラットホーム上でマッチングするかが重要になるため、IT技術が主体として求められるビジネスになる傾向が強いです。

②「C to B to C」領域
「C to B to C」領域では、大型で高額な商品などを扱うため、梱包や出品などの観点から、出張買取や輸送など物流機能を整備する必要があります。

また高額な商品では、正規品確認や動作確認などの「信頼性」も必要となり、多様な商材に対しての知見を蓄積する必要があるため、事業上のオペレーションの重要性がとても高いです。

今回事業研究をするマーケットエンタープライズは、「C to B to C」領域で強みを保有しています。


「C to B to C」市場の分析

それでは次に「C to B to C」市場の分析をしたいと思います。

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今までリユース市場では、このような市場セグメントだったと考えています。

リアル領域~オフライン領域、高単価~低単価と幅広い領域で事業が展開されていたことが分かります。しかし、フリマアプリの誕生で「C to C」領域が拡大したことやそれに伴う「C to B to C」市場の拡大により、今後は以下のように変化していくと予測しています。

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①オンライン×低単価領域
この領域は「C to C」領域の成長により、「C to B to C」事業は成長が難しくなります。企業を媒介しない「C to C」では、ユーザにとっても手元に残る利益が高く、かつ企業の収益構造にも優れているからです。そのため、この領域の競争環境は厳しくなっていくものと考えています。

②リアル×低単価領域
この領域も「C to C」領域によって厳しい競争環境になっていくと思いますす。企業を媒介する「C to B to C」では在庫を保有したり、中間利益が生じることでコスト構造に優れず、また低単価商材が「C to C」で扱われることによって、同一の商材を取り合う状況になり、競争が生まれるためです。

しかし、私は両者は共存する可能性もあると考えています。オンラインだけでではリーチできない層を、リアル店舗では集客することができるため、相互に排他的になるのではなく、共存戦略を取った方が相互に便益がある場合もあると考えているからです。

実際に、「C to C」プレイヤーのメルカリと、「C to B to C」プレイヤーのブックオフが連携した事例があります。引っ越し時に生じた不用品を、メルカリもしくはブックオフで買取をするという内容ですが、この連携が成立するのは全国に店舗網があるブックオフと、オンラインでの集客に優れるメルカリ、両プレイヤーに便益があるからだと思います。

(事例:メルカリ・ブックオフ・カジタクの3サービスが連携し 「捨てない大掃除プラン」を提供開始)
https://about.mercari.com/press/news/articles/20201207_sutenai_osouji/


③リアル×オンライン×高単価領域
この領域ではリアルとオンラインの区分があいまいになっていくと予測しています。オンライン領域では、SEOや広告運用など、ネット集客力の強い企業に顧客が集中していくと予測できますが、リーチ可能な顧客層が限定されるため持続的な成長を実現するためには、リアル領域への展開が必要です。

またリアル領域でも、従来通りの運営方法では店舗周辺での集客効果しかないため、店舗維持費など固定費がかさむコスト構造から、価格競争では優位に立つことが難しくなります。そのため、コスト構造に優れるオンライン領域への進出を行うことで、収益体制を改善し、事業拡大をしていくことが必要となります。

「C to B to C」領域では、物流などの事業オペレーションは規模の経済が働くため、集客力が強い企業が施設投資を拡大し、さらに集客をするという流れになると予測しており、専門商材特化型などのニッチな事業を除くと、長期的には寡占市場になっていくと予測しています。

事例① バイセルテクノロジーズ
バイセルテクノロジーズでは、KPIを出張買取数と設定し、リアル領域での買取を強化することで、事業成長を実現しましたが、今後は出張買取や出店強化以外にも、オンラインチャネルを強化する方向性で、「CASH」というアプリ買取事業を事業譲受しています。
(参考)
株式会社BuySell Technologies 2021年12月期第一四半期 決算説明会資料
事例② コメ兵
リアル店舗のイメージが強いコメ兵も、ECサイト運営に注力しています。コメ兵としては、リアル店舗とECサイト運営を顧客視点でより利便性の高いものにする「OMOプロジェクト」に注力しています。OMOとは、Online Merges with Offlineのことで「オンラインをオフラインの融合」を意味するため、実際にオンラインとリアルの領域の区分がなくなってきているのだと思います。
(参考)
OMOでリアルとネットを融合するコメ兵グループのデジタル戦略とは
事例③ マーケットエンタープライズ
全国に12拠点を有しておりリアル領域に注力しながら、WEBメディアでの集客に強みを持っており、リアル×オンラインに注力することで事業拡大してきました。特徴的なビジネスを展開している会社なので、より詳しく調べていきます。


マーケットエンタープライズの事業分析

マーケットエンタープライズのリユース事業の特徴として、
① 「IT×リアル」のビジネスモデル
② 多様な商材を扱える事業構造
③ ニッチ市場を攻略する新規事業
の3つが挙げられます。

①「IT×リアル」のビジネスモデル
「IT×リアル」のビジネスモデルとは、国内12拠点の物流機能と自社開発のITシステムを組み合わせたビジネスモデルのことです。

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引用)個人投資家さま向け 会社説明会資料

このビジネスモデルの利点を顧客視点と自社視点から考えます。

顧客視点では、ITシステムを活用し効率的なオペレーションを行うことで、スピード感あるサービス提供が可能となります。また、出張買取などリアルサービスを組み合わせてサービス提供することで、顧客満足度が高いサービスになります。ITとリアルの組み合わせがサービス選択時の優位性になるのです。

自社視点では、事業の効率性を高めることができます。具体的には、地域特性や想定単価などをもとに、コストを削減した物流ができ、買取データや購買データを多様な商材で収集することで新規事業などに生かすことができます。また、物流機能は参入障壁が高いため、競合優位性となるのです。


②多様な商材を扱える事業構造
多様な商材を扱える事業構造を構築することで、顧客から選ばれやすいサービスとなっています。具体的なポイントとしては以下の2つです。

- 総合ジャンルサイトによる集客 -
高く売れるドットコムなど30カテゴリーを越える自社サイトを運営し、SEOやリスティング広告の効果的な運用を行い、集客をしています。

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引用)マーケットエンタープライズHP

さまざまなWEBメディアで集客を行うことで、楽器買取などのニッチなニーズも満たすことができます。専門ジャンルごとのメディアを複数持つことで、さまざまなニーズを満たせる強固な集客体制になっているわけです。

- プラットホームによる送客 -
2019年にM&Aで買収した事業で、地域や商材などの理由で買取が難しい案件を、このプラットホームを通じて全国の加盟店(リサイクルショップ)に送客をすることで収益を得ています。

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引用)おいくら

地域や商材などの理由で買取が難しい案件を、このプラットホームを通じて全国の加盟店(リサイクルショップ)に送客をすることで収益を得るモデルのため、顧客側から見れば、マーケットエンタープライズに依頼すれば、どんな商材でも基本的には買取してもらえるという体制ができました。

30カテゴリに及ぶWEBメディアを通じた集客体制によって、多様なニーズを実現し、また「おいくら」を買収したことで、集客後に離反する顧客をできる限り防ぐことができるのが、多種多様な商材を扱える事業構造によるメリットですね。


③ニッチ市場を攻略する新規事業
マーケットエンタープライズでは、ニッチ市場を開拓することでさらなる市場創造に取り組んでいます。

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先ほどの図に、1.3兆円+αの市場が加わっているのに気付いたでしょうか。

この市場は、「C to B to C」領域よりも、さらに高単価で専門性を必要する「B to B」領域の市場です。マーケットエンタープライズでは新規事業として、農業機械などの2次流通ビジネスを注力して行っています。今回は2つの事業を紹介します!

①越境ECによる中古農機具販売事業
国内で不要となった農機具を買い取り、発展途上国や欧州圏など80か国以上の国に輸出しています。

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引用元)FARM MART

国産農業機械は性能が高くかつ中古では安価のため、海外でも需要が高いです。この事業を通じて開発途上国の生活インフラ整備にも貢献しています。

②中古農機具売買プラットホーム事業
中古農機具が売買できるプラットホームを運営し、不要となった農業機械を売りたい人と買いたい人を繋いでいます。

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引用元)UMM

この事業のすごいところは、手数料0円で運営することで運営していることです。ユーザファーストを徹底的に追求し、広告収入によって事業を成立させています。

上記2つの事業をM&Aによって事業買収し、さらなるリユース事業の拡大と循環型社会の構築を目指しています。

このように、中古農機具というニッチな市場に対して新規事業を構築していけるのは、先ほどお話ししたように主力のネットリユース事業の参入障壁が高く、収益の見込みが立てやすいからだと思います。

実際に中古建設機械や中古医療機器の新規事業も立ち上がっており、主力事業の収益をもとに、事業の多角化を推進しているようです。

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引用)医療機器 高く売れるドットコム ,  建機 高く売れるドットコム


戦略提言

今後のマーケットエンタープライズの方向性として2つの戦略を提案したいと思います。

①「C to B to C」領域で規模の経済を活かし更なる拡大
C to B to C領域では参入障壁が高いものの、現在は事業単体で売上高60億円程度であり、規模の経済を活用するためにも、さらなる拡大が必要であると考えています。

そのために注力すべきは買取商材数の増加です。リアル拠点を増やすことや、メディアを含むオンラインコンテンツを強化することが考えられます。

そのなかで特に注力するべきだと考えるのが、オフラインからの集客です。現状はWEBメディアやSEOによって集客をしているため、オフライン(店舗やチラシ広告など)からの集客効果はオンラインと比較して高くありません。

先にお話ししたような、かくれ資産を開拓し事業を拡大していくには、現在リーチできていない層の開拓が必要なので、家庭にかくれ資産を多く抱えている高齢者層など、更なる事業規模拡大にはオンラインではリーチが難しい層へのアプローチが必要になると思っています。

そのためには、リアル店舗展開を主としているメーカーやメーカー販売代理店などと連携したり、眠り資産発掘機会である家の大掃除のタイミングをサービスとした終活サービスとの連携などが考えられます。

オンラインでの集客力や二次流通での購買情報など、自社が有する強みをもとに、相互に利益を享受できる事業体と連携することで、効率的に事業拡大ができると考えています。


②新規事業の拡大
現在は、既存事業の仕組み(範囲の経済)を活かした新規事業に投資していく動きがとても積極的です。新規事業を収益柱へと成長させるためには、優秀な人材確保が必要であり、そこが課題となると考えています。

実際に新規事業として、中古農機具事業や中古医療機器事業など、新しい新規事業には積極的に投資ができ立ち上がっている状態であり、これからはこれらの新規事業を育てていくフェーズであります。そのため、事業立ち上げや事業部化の経験がある人材の確保が必要だと考えています。

また潜在的な脅威として、リアル店舗のオンライン進出やメーカーの2次流通展開などが考えられます。そうした、リスクを回避するには、マスジャンル~ニッチジャンルまでを総合的に扱えることで、顧客から選ばれる会社になる必要があります。そうした側面からも新規事業の拡大は必要だと考えています。

人材投資を行うと、採用コスト等の影響で収益構造は一時的に悪化するので、そのあいだに事業投資が滞らないように、①で述べたように「C to B to C」の既存領域の拡大が必要であると思います。

今後に期待です。

以上、

最後までお読みいただきありがとうございました。


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