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Lost&Foundは僕とエルレの空白の10年間に対する答え合わせだった

先日、Amazonプライム限定で公開されたELLEGARDENドキュメンタリー映画、「Lost&Found」を見終わった。
かなり思うところがあったので、久しぶりに記事を書いています。
まだ見ていない人もいるかと思うので出来る限りネタバレはしないように心がけますが、表現上どうしてもネタバレ的要素は避けられない部分もありご容赦ください。

まず結成前夜の話について。
細美さんが海外で仕事してた話とか知ってた部分はあったけど、かなり知らない情報がたくさんで面白かった。メンバーのパーソナルな部分など感じられ全体的には非常に微笑ましいエピソードが多かった感覚。
エルレやる前に細美さんがやってたバンドでは細美さんはバッキングギター担当だったと聞いてたんだけど、ボーカルだったんだな。

結成初期の葛藤や苦労話、そして徐々に大きくなっていくバンド像の演出が非常に良かった。バンドって夢があるなと思った。
やっぱBRING〜からRIOTまでの期間はバンドと世間の需要が上手くマッチしてたんだな。どんどん勢いを増していく力強さを感じた。

不穏な空気が漂い始めたのはやはりELEVENの制作期間。
Space Sonicリリース後に行ったアメリカツアーで苦い経験をした反動だと当初は聞いてたけど、事実とは違うのか、その部分には触れられていなかった。まぁそれはどっちでもいいこと。
とにかく、それまでの西海岸イズムを強く投影していた曲作りとは大きく舵を切った楽曲制作には相当な苦労があったらしい。

恐らく制作途中に収録された、the back horn山田さんとの対談映像を当時見たけど、その時は「曲作ってて楽しくてしょうがない」と言っていたがアレはただの強がりなのか、それともその時はたまたま上手くいってた時だったのか。
制作後に収録されたスペシャのロングインタビューでは、それまでの和気あいあいとしたインタビューとは打って変わって、少しシリアス目な空気だったのを覚えてる。(スタジオの雰囲気がそうさせてたのかも)
今となっては、あの空気感にELEVENで生じたバンド内の変化が見てとれる気がする。

そして、今回の映画の根幹とも思われる活動休止に至る話。
正直、休止決定後のJAPANのインタビューでは消化不良だった。
制作におけるモチベーションの違い、ってのはまぁ分かったんだけど、具体的に何がどう作用したのか、そういうのを知りたかったと当時は思ってた。
また戻ってくると誓ってくれるのはありがたいけど、そこの部分をもっとクリアにしてほしかった。
今回の映画で、JAPANのインタビューでは読み取れなかったバンド内の実情がようやく分かった。

ここからは作品のネタバレ色がかなり強めになってしまうので、嫌な人はここで読むのをやめてください。

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まずELEVENの制作期間からバンド内での歪みは生じていたとのこと。前述したようにRIOTまでとは大きく作風を方向転換し、今までに無いアプローチなども増えた印象。
本作のインタビューではかなりマイルドな表現はしてたけど、たぶんかなり衝突があったんだと思われる。(特に細美と高橋)
本当に死にものぐるいで完成させたELEVENはセールス的にも評価的にも申し分ない出来になった。文句なしに素晴らしいアルバムです。
ただ何となく歌詞が難解になった印象は当時からあった。その時はこんなバックグラウンドがあったなんて知る由もなかったから特に気には留めていなかったけれど。この映画を見た後だと、Fire Crackerの歌詞なんかは何となく、当時の過酷な環境、複雑な心情を投影しているように感じた。

オリコン一位になった。幕張メッセでワンマンもやった。間違いなく当時のインディーズバンドの頂点に登り詰めていたんだけど、バンドはすでに崩壊の一途を辿っていた。
そうした環境で制作が始まった幻の6枚目のアルバム。思えばここできっと、やり方を見つめ直す機会があれば良かったんだと思う。前回のようなやり方ではダメだと。
前回よりさらにクオリティの高いものを、と思ううちにある種独りよがりになってしまっていた細美とそのスピード感についていけない他のメンバー。
壊れかけたまま走行を続けた列車はついに限界を迎えた。
要するにバンド内の雰囲気が一向に良くならず、ついに限界を感じ、生形が脱退を言い渡した、と。
これも、完成間近だったのを細美が白紙に戻したのに高橋がついにブチギレて啖呵切ったという噂が当時あったんだけど、あくまで噂止まりなのかな。

ようやく、高校生の自分が感じていたモヤモヤした気持ちに折り合いをつけられた気分。
休止という結末はまぁ、結果として良くはなかったと思うけど、誰がどう感じていて、バンドの雰囲気はどうだったのかという具体的な部分がクリアになったのは良かったかな。

そこからはそれぞれ始めたり加入したバンドの話、それから震災の話、そしてワンオクTakaの助力による再結成の話。物語はクライマックスになっていく。
再結成のバックグラウンドについては、再結成時のJAPANのインタビューである程度把握はしていたけど、Takaにそそのかされて「じゃあやるか」って何でなったのかまでは分かってなかった。そんな簡単じゃないだろと。
正直、この映画でも100%は理解し切れてないんだけど、やっぱメンバーそれぞれ休止中の10年間、どこか心の片隅にエルレの存在が消えて無くならなかったことや、時が経って休止時の感情にある程度折り合いがついたのもあるんだと思う。

そして新アルバム制作のパートが最後で、本作品はエンディングとなる。

この映画を観て感じたのは、エルレが歴史の一つになっているという驚きと実感、そして一つのバンドの栄光と苦悩、そして再生。あまりに生々しいその生き様の数々。
バンドを始めた高校生の時、エルレは間違いなく自分にとってのヒーローだった。
活動休止を発表した時、本人たちと同じように自分自身もこの世の終わりのような気分になっていた。
もういないんだから、と思いながら過ごしたそれからの10年間。いつまでも思い出にしがみついてちゃダメだよなと思いつつも、毎年9月9日になると否が応でも思い出されてしまう。
2018年に再結成をした。夢かと思うくらい歓喜した。ただ、今だに一度もライブに行けていない。
昔のようなドキュメンタリーやインタビューもないから(JAPANのはあったけど)、本人たちの「生」の声をまだ聞けていなかった。
この映画でようやく、再結成に喜びつつも自分の中に残っていたしこりのようなものが無くなった。
あの日心の真ん中にぽっかり空いたままの穴を埋める答え合わせとなった。

正直、大人になって、エルレ界隈のバンドとかはもう聞かなくなってしまった。音楽の好みも変わった。
ただ唯一、今も昔も変わらないのは、エルレを見てると「バンドっていいな」って思うことが出来ること。「バンドってこうありたいよな」ってのをいつも変わらず証明してくれるのだと、この映画を観て感じた。

あの日みたELLEGARDENはキラキラ輝いていた。
今また、当時とは違う色の光で輝き始めている。
彼らも僕も続いていく。年齢も時代も変わってしまったけれど、もう一度同じ熱量で夢見たっていいじゃないか。

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