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実物提示教育概論“Eureka!Eureka!”

今回は、まだ使い始めて調整中のデッキではあるが、他に書くような使用者もいないと思うのでUG Omnitell(Eurekatell)について書いてみようと思います。
デッキリストや概論等の前半はそのまま載せていますが、サイドプランとその他今後の検討事項については素での公開を躊躇う部分でもあったので(隠す価値もないといわれるかもしれないが)試しに有料にしてみたので興味があれば購入していただければと思います。

1 Omnitellとはどんなデッキ

一言でいえば、≪実物提示教育/Show and Tell≫で≪全知/Omniscience≫を場に出し、≪引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn≫や≪蟻の解き放ち/Release the Ants≫等の無限コンボで勝つデッキです。
Omnitellが最も活躍したのは2015年頃。当時は≪時を超えた探索/Dig Through Time≫という、コンボパーツへのアクセス能力の高さとアドバンテージを兼ね備えた“壊れた”スペルが存在していました。あまりの強さに収録されたタルキール覇王譚の発売から約1年で禁止になり、同時に、Omnitellというデッキは環境のトップメタから姿を消しました。
何故、主たるコンボパーツではない≪時を超えた探索/Dig Through Time≫を失って環境から姿を消したのか。それはSneak&Showとの違いを考えることで見えてきます。

(1)コンボ成立までの過程
Sneak&Showというデッキは、≪実物提示教育/Show and Tell≫と≪騙し討ち/Sneak Attack≫の2種7~8枚の“発射台”から、≪グリセルブランド/Griselbrand≫と≪引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn≫の2種6~8枚の“怪物”を戦場に送り出すという、2種類のパーツを揃える比較的シンプルなコンボデッキです。
それに対してOmnitellは前述のとおり、≪実物提示教育/Show and Tell≫+≪全知/Omniscience≫+≪狡猾な願い/Cunning Wish≫又は≪引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn≫と、3枚のカードを必要とするコンボです。
コンボに必要なパーツの枚数が多いため、平均的な始動ターンが遅く、ハンデス等の妨害が間に合ってしまいあす。≪ヴェールのリリアナ/Liliana, of the Veil≫の様なハンドの枚数を継続的に絞るカードにも弱いという欠点もあります。また、1回目のコンボが打ち消された際の再始動はさらに時間がかかり、相手のカウンターに対して“発射台”を連打するようなゴリ押しプランを採ることがほとんどできません。それらの弱さを補ってOmnitellをトップメタデッキに押し上げていたのが≪時を超えた探索/Dig Through Time≫だったのです。

2 何故Omnitellなのか

では、どうして今Omnitellを使うのか、またSneak&Showと比較しながら考えていきます。

(1)コンボの価値
  前述の2種類のコンボデッキですが、コンボが通った場合にそのコンボの持つ価値が大きく違います。
Sneak&Showというデッキは、コンボが成立しても2種の“怪物”が場に出る“だけ”であり、即ち勝利というわけではありません、マナ加速と手札を1枚使って場に出した≪引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn≫を≪カラカス/Karakas≫で手札に戻されてしまうこともあります。ほとんどのデッキはこれらの生物を場に出すだけで抗うことができずに勝利することができるのですが、前述の≪カラカス/Karakas≫や≪造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Servant≫、≪リリアナの勝利/Liliana’s Triumph≫、≪罠の橋/Ensnaring Bridge≫等、メインからこれらの生物に対処する方法を採用するデッキも少なくありません。
一方、Omnitellは基本的に≪全知/Omniscience≫を経由したコンボとなるため、これらの対処手段に対して柔軟に対応することができます。≪引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn≫を唱えて場に出すため≪カラカス/Karakas≫はまず問題になりませんし、≪造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Servant≫や≪罠の橋/Ensnaring Bridge≫に対しても≪狡猾な願い/Cunning Wish≫から≪残響する真実/Echoing Truth≫や≪計略縛り/Trickbind≫をサーチする等、コンボ成立後の勝率はSneak&Showよりもはるかに高くなります。
モダンホライゾンのリリースにより≪レンと6番/Wrenn and Six≫が環境を定義し、レガシー環境最強のデッキとしてRUG Delverが君臨するようになりました。そのRUG Delverへの対抗馬としてトップメタの一角にのし上がったのがBG Depthで、このBG Depthへの対策として≪カラカス/Karakas≫等のバウンスカードが採用される枚数が多くなったことから、現在はSneak&Showのコンボの価値が低下し、≪全知/Omniscience≫の必要性が増しているといえます。

(2)マナベース
  Sneak&Showは3マナの≪実物提示教育/Show and Tell≫だけでなく、4マナの≪騙し討ち/Sneak Attack≫を唱える赤マナからさらに起動の赤マナと複数の赤マナを要するため、≪Volcanic Island≫を3枚と、4~5枚の≪古えの墳墓/Ancient Tomb≫又は≪裏切り者の都/City of Traitors≫の2マナランドを採用しています。コンボ始動ターンに勝つわけではないため、早い始動が求められ、2色デッキでありながら少し不安定なマナベースを抱えています。
  それに対しOmnitellのコンボパーツは基本的にすべて青いカードで構成されています。≪渦まく知識/Brainstorm≫、≪思案/Ponder≫等の青いドロースペルから≪実物提示教育/Show and Tell≫と、すべて青マナだけで完結するため、ほとんど基本の≪島/Island≫だけで完走することができます。
  前述の≪レンと6番/Wrenn and Six≫が暴れまわる環境において、≪不毛の大地/Wasteland≫が効き難いマナベースというのは重要で、相手がどんな土地を回収しても(≪渦まく知識/Brainstorm≫がない限りにおいては)涼しい顔で見ていられます。現在の環境において基本土地を中心としたマナベースは大きな力となります。

Sneak&Showとの比較以外でもOmnitellを使う理由があります。

(3)環境の速度
前述のとおり、今の環境は≪レンと6番/Wrenn and Six≫が速度を定義しています。≪王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns≫も加わり、RUG Delverが採用するクリーチャーの枚数は10枚前後まで落ち込み、RUG Delverの一番強い序盤のアクションがプレインズウォーカーを連続で叩きつけるものになり、まるで≪目くらまし/Daze≫と≪意志の力/Force of Will≫を有したジャンクデッキです。前述プレインズウォーカー達による≪不毛の大地/Wasteland≫の連打や、“鹿”化能力によりデッキとしての対応力が大きく上昇しています。
しかし、逆に見ればRUG Delver側に序盤に通す生物が少なくなっています。プレインズウォーカーでは実際にゲームに勝つのに非常に時間がかかるので、RUG Delverの勝つまでの速度が低下しているといえるのです。
早いターンにコンボを決めて≪実物提示教育/Show and Tell≫を通して出した生物が“鹿”になるのであれば、コンボ始動を遅くしても確実に勝てる手段を選択したほうが勝てる蓋然性が高いというのが現在の自分の考えです。

(4)新戦力
  とはいっても、こちらがコンボデッキであることがバレた状態でターン数を経過すると、多少クロックが遅くともたくさんのカウンター等の対策カードを探し、引き込まれてコンボを妨害されてしまいます。ただコンボとしての安定感が高いだけではOmnitellを肯定する理由にはなりません。≪時を超えた探索/Dig Through Time≫の様に、妨害を乗り越えてコンボを完遂する手段が必要です。
  参考に、昨年末Legacy Challengeで優勝した自分のデッキリストを見てください。

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これは、黒をタッチしたOmnitellです。
コンボへのアクセス能力を高めるために≪リム=ドゥールの櫃/Lim-Dul’s Vault≫を、リソースを得る手段として≪パズルの欠片/Piece of the Puzzle≫を採用し、≪悪意の大梟/Baleful Strix≫で相手を減速させて得た時間でコンボを決めるという≪時を超えた探索/Dig Through Time≫の穴を複数のカードで強引に埋めた意欲作wです。
なお、このデッキ自体は灯争大戦の発売で≪覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils≫が登場したことにより、天敵である≪紅蓮破/Pyroblast≫と≪赤霊破/Red Elemental Blast≫の採用枚数が増加し、崩壊するのですが。
その後、モダンホライゾンと基本セット2020の発売により、Omnitellは新たな戦力を手に入れました。

ア)≪氷牙のコアトル/Ice-Fang Coatl≫
Omnitellの新戦力として、というよりは、青黒でなく青緑でも梟のような延命プランを選択肢として有効なものとしてくれた1枚。
≪レンと6番/Wrenn and Six≫が闊歩する現環境では、≪悪意の大梟/Baleful Strix≫よりもブロッカーとしての信頼度が高く、ほとんど除去として機能します。ただ、2ターン目に出てもほとんどの場合は接死を得ていないため、1ターン目の≪秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets≫に対する壁としては機能し難いというのは難点です。

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イ)≪抽象からの抽出/Drawn from Dreams≫
帰ってきた≪時を超えた探索/Dig Through Time≫です。その重さとソーサリーであることに目を瞑れば≪時を超えた探索/Dig Through Time≫に見えるはずです。
強いのですが、重すぎるし、これを4枚採用してゲーム終了までに必要な回数を唱えきる時間は流石にありません。1~3枚でコンボ補助としては使えるでしょう。

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ウ)≪変容するケラトプス/Shifting Ceratops≫
新たなサイドボードの変形フィニッシャー枠です。コンボデッキの常として、サイドボード後に対策カードを多く採用された際に、少しでも軸をずらしたカードがあるだけで勝率を底上げすることができます。
打ち消されず、速攻で殴れる可能性を持ち、高い打点を出すことができる優秀なフィニッシャーとしてサイドボード後の一つの選択肢になり得ます。

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エ)≪夏の帳/Veil of Summer≫

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言ってしまえば、前の3枚は前座です。基本セット2020の超強力カードにしてパイオニアの禁止カード、≪夏の帳/Veil of Summer≫です。このカードが刷られたからこそ自分は青緑の2色でOmnitellを組もうと思い至りました。効果は、1マナになった≪謎めいた命令/Cryptic Command≫で、≪秋の帳/Autumn’s Veil≫とは何だったのかというレベルのパワーです。何故ドローをつけてしまったのか・・・こちらの理解を超えてくるスーパー色対策カードです。
青の打ち消しとバウンス、黒の除去とハンデスに対する色対策カードとしてのテキストが書かれていますが、冷静に環境を見渡した時、青くも黒くもないデッキは、Death&Taxesが≪レンと6番/Wrenn and Six≫により壊滅させられた現状では、ほぼ≪虚空の杯/Chalice of the Void≫デッキだけです。(※もちろんバーン等もありますが圧倒的に数が少ないので)
≪虚空の杯/Chalice of the Void≫デッキの筆頭であるエルドラージも≪レンと6番/Wrenn and Six≫と≪不毛の大地/Wasteland≫の組み合わせにより、Mr Prisonも≪王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns≫により大きく数を減らしていることを考えると、このカードが腐る相手が環境に非常に少なく、本当に、ほとんど≪謎めいた命令/Cryptic Command≫として機能するのです。
このカードをあえてメインから採用することで、自分のコンボを守る手段が非常に強くなりました。相手のハンデスに合わせたり、コンボ始動の前に先置きで唱えたり、始動したコンボを守るように構えたり、≪王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns≫や≪造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Servant≫から≪引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn≫を守ったり。八面六臂の大活躍です。どうせ枠を争うであろう≪呪文貫き/Spell Pierce≫もEldraziやDeath&Taxes相手には腐ることが多かったので多少の無駄は承知の上です。
このカードの採用で大きく相性が改善したデッキもあります。ANTとReanimatorです。特にANTは、相手がコンボを必死に通そうとしても最後の≪苦悶の触手/Tendrils of Agony≫に対して唱えるだけでコンボが止まってしまいます。序盤の≪思考囲い/Thoughtseize≫等のハンデスに対して唱えても十分な効果を持ち、これまで不利(3:7程度)だった相性を有利(体感6:4程度)にまで上昇させています。前述の、自分より早いコンボに弱いという構造的な問題を、大きく改善しました。
≪夏の帳/Veil of Summer≫は、あまりに強力で、このデッキだけでなく中速以下のコンボデッキを使う上では定番のカードになり始めています。

オ)≪虹色の眺望/Prismatic Vista≫
2色のデッキを組む際、これまでは5枚目以降のフェッチランドの選択について常に悩まされてきました。その問題を解決したのがこのカードです。この土地の登場により、ほとんどデュアルランドを使用することなく2色を基本土地から自在に供給できるようになりました。このマナベースは同時に登場した、≪氷牙のコアトル/Ice-Fang Coatl≫の接死条件達成にも大きく寄与します。このマナベースで2色Omnitellを組むことができるのであれば1~2枚であればダブルシンボルのカードを入れることができる程に安定しました。特に、≪不毛の大地/Wasteland≫を有する各種Delverデッキ相手にストレスなくマナを伸ばすことができるというのはコンボを守るうえで非常に重要で、マナベースの革命を起こした1枚です。

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3 完成した青緑Omnitell

これらのカードを採用し、調整したデッキがこちらです。

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こちらは、2019.11.02のMOの5-0リストに掲載された自分のデッキリストです。あくまで、今の環境だからこそ強いといえるデッキになっています。メタゲームの中心が、RUG DelverとANTとBG Depthとであり、それらにしっかりと有利であると言えるデッキにはなっているでしょう。

基本的なデッキの紹介は以上です。
ここからは、今後のアップデートに関する考察と、現状のサイドイン・アウトとゲームプランについて書いていきたいと思います。

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