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令和のレガシーでもデイズはケアしろや

自分がレガシーというフォーマットを始めてもう15年近くなる。この間にレガシーは、カードパワーのインフレに巻き込まれ、禁止によって強制的に環境を変えられ、15年前とは全く違う世界に送られてしまった。
そんな中でも、変わらないものがある。いくつかある変わらないモノの一つ、「デイズケア」が今回の主役だ。

コレを読んでいる人の大半は説明しなくてもわかるとは思うが、デイズケアとは、≪目くらまし/Daze≫というカウンターが環境にあるのでそれを想定してプレイをすべきだという教訓である。
≪目くらまし/Daze≫は、≪島/Island≫1枚を手札に戻すだけでマナを払うことなく対戦相手に1マナ要求させるカウンターが唱えられる。

カード自体は15年前どころか24年も前の西暦2000年から存在する重鎮であるが、2024年現在においてもレガシーでの使用率トップ10からほとんど抜けることがない現役バリバリの良カードだ。デイズケアとは何か。そんなこと今更考えることではないかもしれないが、あえて2024年現在のおけるデイズケアについて考えてみたい。

ところで、「手札破壊が弱くなっている」という話題は聞いたことがあるだろうか。もちろん手札破壊呪文の効果が弱体化しているという話ではない。
クリーチャーなどパーマネントのカードパワーが上がり続ける中で、除去等の対応手段の効果は据え置かれており、相対的に価値が下がっているが、これにより、手札破壊で強力なアドバンテージカードを弾いて、残りを除去等で対応するという戦術が機能し難くなっている。つまり、どのカードを抜いても強すぎて対処しきれないというのだ。
この点で言えば、クリーチャーなどの“攻め札”が強すぎるため、手札破壊だけでなく除去も相対的に弱体化していると言える。

しかし、打ち消しだけはこれにあてはまらない。
なぜなら、手札破壊はすべてのカードを落としきれないし、残ったカードは一度場に出で効果を使われてしまう。除去に至っては、一度場に出てから対応することになるので、場に出た時の能力を持つクリーチャーやすぐに効果を起動できるプレインズウォーカーへの対処としては下策である。
それが、打ち消しであれば、盤面に出すことがなく対処することができる。手札破壊と違ってトップデッキで強いカードを引かれても、マナによって相手の行動回数は限られるので、打ち消しであればそのターン対戦相手は何もしなかったのと同様の状態にすることができるということになる。

スタンダードやパイオニアに関して言えば、打ち消し呪文自体の効果が弱体化させられているが、モダンの≪対抗呪文/Counterspell≫やレガシーの≪意志の力/Force of Will≫と≪目くらまし/Daze≫などは第一線で活躍している。その一方で、歴代最強の手札破壊である≪思考囲い/Thoughtseize≫がパイオニア等で使用可能であり、明確に取り扱いが違うことも手札破壊の相対的な弱さを示しているともいえる。

つまり、2019年以降の約5年間続いてきたこの急速なインフレが進めば進むほど、対処手段としての手札破壊は弱くなっていくことになる。

さて、打ち消しの話に戻そう。
打ち消しは、有利な盤面を維持するという目的で相手の強力なアクションに対処するのであれば手札破壊や除去よりも効果的である。
そのため、インフレが進めば進むほど強力になるかと思いがちであるが、必ずしもそうではない。打ち消す側も当然マナがかかるため、2マナの打ち消しで1マナの強力なクリーチャーを対処することはできない。インフレが進みすぎて打ち消しのマナ域を打ち消すべき呪文が下回ると弱くなってしまう。現在のレガシーで≪対抗呪文/Counterspell≫が全く使われない理由である。
それが、マナを使わない≪意志の力/Force of Will≫と≪目くらまし/Daze≫なら、多少のインフレはものともしない。どちらもマナを要することなく相手のアクションを打ち消すことができる。
ただし、≪魂の洞窟/Cavern of Souls≫や唱えた時に誘発して効果を発揮するエルドラージなどのクソカ・・・もとい強力な対抗策もあるので、一概に打ち消しが最良の対処手段であるというわけではない。

≪意志の力/Force of Will≫は、そもそも手札のカード1枚を含めた2対1の交換であるため、相手の1アドバンテージ程度のカードなら打ち消さない方が強い。しばしば、レガシーで使われる頻度が高いカードの中で最も弱いカードであると言われるのはこれが要因である。

≪目くらまし/Daze≫は、自身のマナを減らすことになるが、カードアドバンテージを失わずに打ち消しができる。自身が1~2マナでクリーチャーを展開し、相手が3~4マナで対応してくるような場合、その効果は絶大なものとなる。
土地を手札に戻すという自身のマナが減るデメリットの影響を最小限にすることができれば、最強のカウンターであると言っても過言ではない。

そんな≪目くらまし/Daze≫が蔓延るレガシーにおいて、デイズケアという言葉は特別・・・でもないが、それなりの価値を持つ。
端的に捉えると、要は1マナ余分に用意して、1マナ要求されても打ち消されないようにしなさいという教訓を伝えるための言葉である。
2マナ、3マナとクリーチャーを展開した相手に、先手側が4ターン目に4マナの全体除去を唱えて≪目くらまし/Daze≫で打ち消されることがないように、もう1回はライフで受けて、5マナ用意してから4マナの全体除去を唱えることで、少なくとも相手に2枚の≪目くらまし/Daze≫か≪意志の力/Forcr of Will≫で手札を2枚使わせうることができるだろう。

≪呪文貫き/Spell Pierce≫があるって?あらゆる可能性を考慮するとキリがないので、とりあえず忘れよう。

そして、一時代前のMTGにおいて、デイズケアとは概ねこの意味で使われていた。

少し時代をさかのぼって約10年前、ミラクル全盛期の青白奇跡vsデルバーで例えてみる。
先手1ターン目の≪秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets≫に対して後手1ターン目に≪剣を鍬に/Swords to Plowshares≫を唱えて≪目くらまし/Daze≫でハジかれると、奇跡側は次の除去が残り3枚の≪剣を鍬に/Swords to Plowshares≫、準備が必要な≪終末/Terminus≫、合計3マナ必要になり隙の大きい≪瞬唱の魔導士/Snapcaster Mage≫になってしまう。
すぐに変身したとしても1ターン3点分の攻撃を受けてでも≪目くらまし/Daze≫にかからずに対処しなければこのターン受ける3点よりもずっと大きいダメージを受ける可能性が高い。
同時に、デルバー側もこの当時は除去を兼ねるような汎用クリーチャーがおらず、総数で12~14枚程度しか採用されていなかったし、高い打点を出せるのは≪タルモゴイフ/Tarmogoyf≫程度で基本は2~3点のクロックしかなかった。
特に、1マナで展開できるクリーチャーの選択肢は少なく、≪秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets≫と≪死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman≫くらいしか見なかった。≪死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman≫はライフを削ろうとしたときは起動にマナが必要であり、序盤からダメージを稼ぐクリーチャーではなかったことから、≪秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets≫からどれだけ序盤にダメージを受けないかというのはゲーム上、非常に重要であった。

では、話をぐっと現代に戻そう。

現代のコントロールデッキといえば、豆コンだろう。次は豆コンvsデルバーで考えてみる。
現代の豆コンは、除去に≪剣を鍬に/Swords to Plowshares≫だけでなく≪虹色の終焉/Prismatic Ending≫や≪力線の束縛/Leyline Vinding≫が採用されているので打ち消されても次の除去が手に入りやすい。これに加えて、≪豆の木をのぼれ/Up the Beanstalk≫という2ターン目の強力なプレッシャーがあり、2ターン目に除去するよりも自分のプレッシャーを押し付けた方が強いだろう。そして、ライフが少し多く削られても取り返せるだけの力を持つ≪自然の怒りのタイタン、ウーロ≫も後ろに構えている。

グリデル側も、≪秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets≫に≪ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon’s Rage Channeler≫、そして≪超能力蛙/Psychic Frog≫や≪濁浪の執政/Murktide Regent≫といったハイプレッシャーがあり、≪秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets≫を≪目くらまし/Daze≫で守る必要性が薄くなっている。

つまり、デイズケアしてアクションを遅らせるよりも、さっさと強いカードを連打した方が良いという結論に至る。
1ターン目の≪剣を鍬に/Swords to Plowshares≫よりも2ターン目の≪豆の木をのぼれ/Up the Beanstalk≫をデイズされる方がツラいし、デイズするなら2ターン目に≪超能力蛙/Psychic Frog≫が着地しないことが確定するので、盤面への対応を急ぐ必要性が薄くなる。
※あくまで例示なのでこのプレイングが正しいかどうかの話は置いておこう。現環境で相手がグリデルなら蛙やオークを除去するためにそもそもStP温存するとか言わない。

同様の状態はこのマッチアップだけで発生するものではない。インフレによって10年前とは完全に別世界となった2024年のレガシーにおいて、デイズケアという言葉は大きく変質している。
「1マナ浮かせて行動する」のではなく、「デイズをあえて使わせて有利にする」のが現代のデイズケアだ。

もちろん、この使わせるという考え方は10年前にもあった。だが、あくまでボクシングでいうジャブのように本命を通すための戦略としてであって、デンプシーロールよろしく雑多に1-2-3と強力な一撃を叩きつけ続けるためではなかった。こういった点から、現代においては後者の要素が強くなっているのは間違いないだろう。

攻めるカードのパワーがどんどん上昇していくのが令和のMTGだとすると、今後もカード1枚の価値は上昇していくことになる。そして、≪目くらまし/Daze≫の使い方、デイズケアのあり方はそれに合わせて変えていく必要があるだろう。

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